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BCPとは-事業継続計画の基礎と7つのポイント

BCPとは何か?

BCPとは英語の「Business continuity plan」の頭文字を取った略語のことで、日本語では「事業継続計画」と呼称されています。BCPという言葉には様々な意味が込められているため、まずは三つの視点でBCPについて解説をします。

BCPとは、非常事態に強い経営管理手法のひとつです

 概念としてのBCPとは、「非常事態に強い企業の経営手法」としての意味を指します。BCPを策定する目的は、自社にとって望ましくない事態(自然災害・大事故・不祥事など)が生じた際に、被害を最小限におさえつつ、最も重要なビジネスを素早く再開させることで、損害の発生を最小限に留めることです。何があっても事業を止めないための事前計画と本番い向けた準備が、概念としてのBCPであると言えます。

BCPとは、緊急時に用いる非常時対応マニュアルです

 物理的な成果物としてのBCPとは、災害や大事故など実際に緊急事態が生じた際に用いる、「非常時対応マニュアル」のことを指します。災害直後の人命救助や安否確認、停止した事業を代替設備で仮復旧させるための手順、これらを実施するために必要な、連絡先一覧リストや業務マニュアルなどの関連資料を、非常時用のドキュメントとしてまとめておきます。なおこのマニュアルは停電に備えて紙のファイルとしても用意します。

BCPとは、非常時対応マニュアルの保守・運営業務全般です

 行動あるいは業務としてのBCPとは、「非常時対応マニュアルの保守・運営業務全般」のことを指します。マニュアルとして準備している情報は、時間がたつと内容が古くなりイザという際に役立たなくなる恐れがあります。また平時から訓練や演習を繰り返して、従業員にスキルを付与したり、事前準備として抜け落ちている項目がないかを確認したりする必要があり、BCPを活用するための重要な業務として継続することになります。

BCP策定は義務か?事業継続計画を取り巻く法律と条令

BCP策定を”直接”義務づける法律や条令はない

 一般の企業に対して、BCP策定を直接義務づける法律や条令は現在の所存在しません。もちろん国や各業界団体はBCPの策定を推奨していますので、ガイドラインを策定したり支援事業を展開したりと、BCP普及のための支援策を様々に講じています。しかしこうしたサポートを受けるかどうかは企業次第で、BCPは企業が独自に導入をする経営手法のひとつとして位置づけられています。

被災後に安全配慮義務違反や債務不履行で訴えられる場合も

 その一方、例えば実際に大きな災害が生じた際、防災対策や避難計画が不足していたため従業員の死傷者を出てしまった場合。あるいは事業再開の計画が不十分で商品を納品できなかった場合。こうした状況が発生した場合、遺族から安全配慮義務違反で訴えられたり、取引先から契約違反を問われて違約金を請求されたりする可能性があります。BCP策定の義務はありませんが、存在しなければ困るという存在でもあるのです。

なぜBCPが必要か?事業継続計画を策定すべき理由とは

 前述の通りBCPの策定は法律で義務づけられたものではありませんが、BCPを導入する企業数は増加しています。これは、企業を取り巻くリスクが増加傾向にある一方、企業構造は弱体化しており、さらに外部圧力が高まって来ているという背景によるものです。

外的なリスクの増加

 1995年(平成7年)の阪神・淡路大震災以降、日本では大地震や噴火の発生頻度が増加しており、当面はこの状況が続くと考えられています。さらに強毒性の新型インフルエンザや国内でのテロ発生など、新たな脅威の発生も指摘されています。また食中毒やリコールを初めとする不祥事を起こしてしまった場合、インターネットやソーシャルネットワークを用いて従来よりも速い速度で情報が拡散するようにもなっており、この対応も必要になります。

事業構造の弱体化

 サプライチェーンマネジメントやジャストインタイム生産方式による供給連鎖の最適化、あるいは自社のコア業務以外を外部に委託するアウトソーシングの拡大やクラウドソーシングの活用による事業の効率化が広がっています。平時には効果がある手法ですが、どこか一カ所の連鎖が断ち切れると関連する企業全体の操業が停止するという虚弱性を波乱でいるため、自社だけでなく広い範囲でBCPを導入し全体を守る必要があるのです。

BCP導入に関する外部圧量の上昇

またBCPの導入は規模の大きな企業ほど積極的に行う傾向がありますが、2013年(平成25年)時点で大企業の七割以上が策定済み・策定中となっており、系列会社や子会社・孫会社に対するBCP導入の圧力が今後高まって行くことが考えられます。さらに2012年(平成24年)に事業継続マネジメントの国際規格であるISO23001が発行したことも、今後BCP策定の圧力が高まる要素となっています。

BCPはいつ使うか?事業継続計画の想定リスク

 BCPを用いるのはむろん非常時ですが、防災対策と異なりその対象は自然災害だけにとどまらず、テロなどの外部リスクや、自社の不祥事などの内部リスクにまで及びます。

自然災害にBCPで対応する

 BCPを用いる状況として最も分かりやすいのが自然災害です。近い将来の発生が想定されている首都直下地震や南海トラフ巨大地震、火山の噴火、台風や集中豪雨による水害、あるいは土砂災害、温暖な地域における大雪、直接備えることは難しいですが落雷や竜巻などが該当します。また新型インフルエンザによるパンデミックなど、感染症についても自然災害の一種としてBCPの対象として扱います。

外的なリスクにBCPで対応する

BCPが防災対策と異なるのが自然災害以外のリスクを対象とする点です。まず無差別の外的リスクとして、電力会社の不具合による突然の停電、原子力事故、テロの発生などが考えられます。さらに自社を狙った外的リスクとして、恐喝や営業妨害、自社に対するサイバー攻撃などが考えられます。また重要な取引先や無くてはならない部品を製造している仕入れ先の倒産、災害による操業停止などもBCPの対象となります。

内的なリスクにBCPで対応する

 またBCPの特長として、自社を原因とする内的なリスクにも対応することが上げられます。典型的な例としては、食中毒、製品のリコール、異物混入などの問題が発生した場合。また従業員による個人情報の持ち出しや流出、コンプライアンス違反、粉飾決算、またいわゆるバイトテロ問題など、サービスではなく組織に問題があるケースもあり得ます。また不祥事ではありませんが、ワンマン中小企業における経営者の入院、重要なキーマンの退職や引き抜きなど、人的な問題もBCPの対象として考える問題です。

BCPと防災対策の違いは?事業継続計画の特長

 防災対策はBCPにおける取り組みのひとつであり、BCPを策定する前提に防災対策の実施があるとも言えます。細かな違いは多々ありますが、大きくは次の三点となります。

防災対策は自社が対象、BCPは他社も対象

 「BCPは無いが防災対策はしている」という企業は多いですが、防災対策はBCPの一要素であり代替手段ではありません。防災対策では自社の設備や建物を主に自然災害から守るために、災害の種類ごとに一対一で対策を講じます。一方BCPはモノではなく事業を守ることが目的となるため、守る対象は自社だけではなく取引先やライフラインなど社外に渡り、またテロや自社の不祥事など自然災害以外への対応も求められます。

防災対策は自然災害が対象、BCPは想定外のリスクも対象

 防災対策を実施する際には、原則として対象とする災害毎に異なる内容の対策を講じます。地震対策であれば建物の補強や機械の固定をしたり、洪水対策であれば土のうの準備をしたりといった具合です。一方BCPでは、前述の通り守るべき事業にとって望ましくない事象は全て対象となりますので、テロによる人為的な事故、重要な取引先の倒産、自社を原因とする不祥事など、「ありとあらゆるリスク」に備える必要があります。

防災は原因事象形、BCPは結果事象形

 そこでBCPでは、防災対策が失敗したり、想定外のリスクが発生したりしてそもそも防災対策を講じていないような状況を前提として、「再調達」を重視した対策を講じます。設備を災害からまもるのではなく、その設備が何かしらの原因で失われた場合に備えて、予備機材を準備したり、レンタルの計画を立てたり、手動対応の検討をしておくといった具合です。防災対策と再調達を組み合わせてBCPは計画を進めます。

BCPの種類は?事業継続計画を策定する各種方法

 BCPには大きく分けると「自由に作る」か「ISO23001」を取得するという、二つの作り方があります。「非常時の事業継続」という目的は同じですが、現状は自社独自に策定をするケースが大半を占めています。

自社独自のBCPを策定する

 現在策定されているBCPの大多数は独自作成によるものです。「非常時に事業を守る」という目的はいずれも同じですが、書籍やガイドラインを参考に自社のBCP担当者ががんばって作成する場合、行政や各種団体が用意しているテンプレートを用いて作成する方法、専門家やコンサルタントに依頼をしたり一緒に策定したりする方法などがあります。特別な理由がない場合は、この「自社独自のBCPを策定する」方法をとります。

国際規格の認証を受ける

 一方、今後増加をすると考えられているのが国際規格の認証を受ける方法です。従来、策定したBCPの確からしさを対外的に証明するためには、英国規格協会(BSI)から発行されている事業継続マネジメントに関する英国国家規格「BS25999」か、情報システムに特化した国際規格である「ISO27001」を取得することが必要でしたが、2012年(平成24年)にBCPの国際規格である「ISO23001」が発行され、今後の普及が考えられています。

BCPの内容-事業継続計画の構成要素

 BCPを導入する際に実際に「作るもの」は様々ですが、最も重要なものは実際に災害などが発生した際に用いる「非常時対応マニュアル」です。さらにこのマニュアルを維持するために、「事前分析」と「保守運用」の資料をまとめて更新していきます。

初動対応計画(非常時対応マニュアル)

 「初動対応計画」は、自然災害や事故などの発生が確認された直後に行う活動で、被害を最小にとどめるための防災対策と、その後の仮復旧へつなげていくための準備作業に大別します。前者としては、発災直後の応急救護、救助活動、消火活動など、主に業務時間中に自然災害が発生した場合の対応をまとめます。後者としては、安否確認、緊急連絡、情報収集、被害状況の確認、対策本部設置判断などを行うための手順をまとめておきます。

仮復旧計画(業務継続マニュアル)

 初動対応が落ち着いた次の段階で必要になるものが、「仮復旧計画」です。具体的には、代替設備や非常用電源の準備、バックアップシステムの立上げ、業務委託先や仕入れ先の一時的な切り替え対応、主担当者以外による業務継続のための引き継ぎなどになります。本格的に復旧に先立ち、業務を仮に再開させるために必要な資材・設備・手順書などを事前計画としてまとめておくものです。

本復旧計画

 本格復旧計画は、仮復旧により暫定的な対応を行っていた各種の業務、また代替品を用いていた設備などを平常時の状態に戻していくための準備です。この段階というのは、初動対応や仮復旧対応のように一分一秒を争う状況ではありませんので、読むだけで対応できる精度のマニュアルを作成する必要はありません。設備を購入した際の納品書、サービス導入時の契約書などをまとめておき、参照できるようにしておきます。

保守運用-BCPを維持するための活動(BCM/BCMS)

 また非常時にBCPを活用するためには日々のメンテナンスが欠かせないため、例えば緊急連絡先や安否確認用リストの更新、防災備蓄用品の入れ替え、避難訓練の実施や非常時対応マニュアルを用いた事前演習などを継続実施する必要があります。これら平時から行うBCPの保守・運用活動の全般は、BCPの上位概念であるBCM(Business Continuity Management)と呼ばれることもあり、BCPを構成する重要な要素として実施されます。

  • BCP・事業継続計画の特長

    BCPの特長 BCPは自社だけでなく社外の経営資源も守る  BCPの目的は非常時における事業継続ですので、BCPが何を守るのか?と問われればそれは「自社の事業」であると言えます。そこで、この「事業」を守るために非常時対応マニュアルや事前計画...

  • BCP・事業継続計画の内容と具体的な構成要素

    BCPを構成する要素は様々ですが、大きくは非常時に使うための対応マニュアルと、BCPを保守運用するための資料に分けられます。各ドキュメントの具体的な内容、使用するタイミング、策定にあたってのポイントについて解説をします。

  • BCP・事業継続計画と防災対策の違い

    目的の違い 防災対策は被害の軽減を目的にする  防災対策は、防災の対象とした「モノ」が想定する災害に襲われた際に、被害を出さないか被害を減らすことを目的としています。そのため、防災対策の対象外となっている建物や設備が被災した場合は当然被害が...

  • BCP・事業継続計画を使用するタイミングと想定リスク

    BCPを用いるのは大地震や水害などの自然災害に限られず、人為的な事故やサイバー攻撃、また自社の不祥事なども対象になります。BCPが対象とする自然災害リスク、偶発的な事故、自社を狙った攻撃、内部の不祥事など、想定するリスクについて解説をします。

  • BCP・事業継続計画の必要性、作成したほうがよい理由

    BCPの策定には一定の手間やコストがかかりますが、企業を取り巻くリスク要因は増加をしており、導入の価値は高まっています。自然災害やテロなどのリスクの増加、サプライチェーン経営などの事業構造の変化、そして外部圧力の増加について解説をします。

  • BCP・事業継続計画の種類と特徴

    BCPの目的は「非常時に事業を継続する」ことですが、自社独自で策定をするか、ISOなどの国際認証を取るかに大別されます。担当者ががんばって作成をするケース、テンプレートや様式を活用して策定をする方法、ISO22301を取得する場合など解説をします。

  • BCP策定は義務か-事業継続計画と法律・条例

    一般企業に対してBCP策定を直接義務づける法律や条例はありませんが、コンプライアンス的には策定が望ましい状態にあります。防災対策がおろそかな場合は安全配慮義務違反などに取られる可能性もありますが、BCPを取り巻く法律と条令について解説をします。

  • 「東京都帰宅困難者対策条例」の真の意味と企業の責務

    東日本大震災で生じた515万人の帰宅困難者による問題を解決するため、2013年に東京都が条例を策定し、普及活動に努めています。非常時に従業員を3日間職場に滞留させるための対策が内容で、違反罰則はありませんが、考えるべき本質と対策を解説します。

  • 企業の防災対策は従業員が死なない環境作りから

    事業継続計画(BCP)の発動は、災害で従業員が死傷していないことが前提となります。企業の防災対策の最優先事項は従業員の生命を守ること、その考え方をご案内します。

  • 災害で従業員が死傷しない、安全なオフィス作り

    従業員を死傷させない環境で重要なのは、地震で潰れないビルにオフィスを構えることと、什器や機器を固定すること。そして2次災害からの避難準備を整えておくことです。

  • 企業の防災備蓄は、従業員を死傷させないために

    企業が行う防災備蓄の目的は2つ。1つは災害直後の被災地に従業員を放り出す危険を冒さないため、もう1つは従業員を帰宅させることで災害救助の妨害をしないためです。

  • 企業の防災備蓄用品、事前準備リスト

    企業の防災備蓄用品で最も重要なのは非常用トイレの準備です。水や食料と同じ量のトイレを最初に用意し、従業員をオフィスに滞留させるための道具を準備していきます。

  • 企業の防災備蓄用品、管理と入れ替え方法

    防災備蓄を行う際は、備蓄専用品ばかりをそろえると調達や管理のコストがかさむため、自動販売機やオフィスグリコなど、日常で消費可能なものと併用することが有効です。

  • 企業の防災対策、災害発生時における初動対応

    大地震が生じた際、企業は支援される側ではなく支援を行う側として期待されます。CSRをかねて被災者ではなく救助者にまわるため、人命救助や応急救護の準備が必要です。

  • 企業や会社における従業員の安否確認

    企業が自社の従業員の安否確認体制を整えるには、どのようなことをすればよいのでしょうか?事業継続計画(BCP)の初期対応で重要な安否確認について、ご紹介します。

サイト管理者・執筆専門家

高荷智也(たかにともや)
  • ソナエルワークス代表
  • 高荷智也Tomoya Takani
  • 備え・防災アドバイザー
    BCP策定アドバイザー

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