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企業の防災対策、災害発生時における初動対応

最終更新日:

執筆者:高荷智也

大地震が生じた際、企業は支援される側ではなく支援を行う側として期待されます。CSRをかねて被災者ではなく救助者にまわるため、人命救助や応急救護の準備が必要です。

企業の防災対策、災害発生時における初動対応

従業員の救助のための準備

新耐震基準を満たす建物にオフィスを構える。オフィス内の什器や機器を固定し、ガラスには割れないようにフィルムを貼る。想定される2次災害から速やかに避難するための準備を整えておく。そして地震発生直後に徒歩帰宅をさせないために、家族との安否確認の準備をし、最低3日分の防災備蓄を行う。ここまでの防災対策を講じておけば、地震で多くの従業員が死傷するという自体を回避し、事業継続計画(BCP)に基づく事業再開を進めることができるはずです。

しかし、地震の大きさや揺れ方によっては死傷者をゼロにすることは難しいです。また災害が大規模になるにつれ、行政、消防や自衛隊などからの支援は期待できなくなります。そのため、事前の防災対策を講じた上で、不測の事態に自力対応するための準備が必要です。

まず必要なのは救助の準備です。従業員を押しつぶす棚をどかしたり、変形して空かなくなったドアを破るためには、最低限の工具が必要になるため、フロアに1つの割合で、災害救助用の道具一式を常備しておきます。バール、ハンマー、ツルハシ、ジャッキ、ロープ、革手袋など、重量物を移動させたり破壊するために必要な道具を用意します。

従業員の救命救急と応急手当のための準備

ケガをした従業員を手当てするために、救急セットを用意しておくことも重要です。大震災直後には、骨折や脳震とう「程度」では病院にかかることはできないため、切り傷や打撲などの軽傷に対する準備はもちろん、骨折やヤケドにも自力で対応できなくてはなりません。

また、応急手当の知識の用意も重要です。予備知識無しで、包帯や三角巾を正しく使ったり、ぶっつけ本番でAEDを作動させることができるでしょうか。救急箱を用意する際には、応急手当に関する簡易マニュアルを用意する必要があります。分厚い本やデジタルデータは取り回しができない可能性があるため、少ない枚数の紙で用意することが必須といえます。

心肺蘇生やAEDの使用は、覚えがなければなかなか実践することは難しいですが、日常から救命救急の心得がある従業員は少数でしょう。消防署や役場では、定期的に無料の救命救急講座を行っており、人数が多ければ出張講座も可能です。防災対策の一環として、こうした知識を従業員に習得させておくことも大変有効です。

初動対応でトイレの設営を行う

災害時の初動対応として重要な項目の1つが、トイレの準備です。大地震発生時には、救助や応急手当を行いながら、本部の設営や安否確認などを行いますが、もし断水していたり、配管が外れてトイレが利用できなくなっている場合は、初動対応の項目の1つとして非常用トイレの設営を行います。

水や食料の配布は、多少遅くなっても即座に問題が生じることはありません。しかし、トイレの需要は災害直後から発生する可能性があり、しかも時間と共に高まります。大地震によりインフラが利用できなくなった場合、準備を行っていない状態で無理矢理トイレの利用がされると、その後の運用や衛生管理が難しくなるため、早めの準備が必要となります。

屋外や体育館などの避難所では、仮設トイレやテントとセットになった非常用トイレが用いられますが、オフィスの場合はトイレの個室を利用するのが良いでしょう。洋式便器にかぶせるタイプの非常用トイレを用いることで、スペースやプライバシーの問題が解決できます。

個室の数が多い場合は、非常用として用いるブース以外は全て使用禁止にすると管理が行いやすいです。まちがってもトイレを設置する前に水や食料を配布することがないようにしてください。普段から各自のデスク周り、またはトイレ内に携帯用トイレを用意しておくと設営までの時間が稼げます。

従業員の家族との安否確認

地震の2次災害から従業員を守り、また地域の人命救助を間接的に支援するためには、大地震から数日間、従業員をオフィスに滞留させることが必要です。しかし、そのために防災備蓄を行ったとしても、従業員が自分の家族の安否を確認できない場合、交通機関が停止していても徒歩で帰宅をしようと試みます。

したがって、オフィス滞留用の防災備蓄を行う際には、従業員と家族との安否確認の手段を用意し、実際に安否の確認が取れるようにしておかなくては意味がありません。BCPの一環として従業員の安否確認の準備を行いますが、この際には従業員だけでなくその家族の安否確認までを行うことを前提に、計画を立てる必要があります。

安否確認には、携帯電話と携帯メールを用いることが多いです。しかし大地震直後、これらの手段はいずれも利用できなくなる可能性が高くなります。NTTが提供する災害伝言ダイヤル171や、携帯キャリアの災害用伝言版を用いることも検討してください。

災害に強い通信手段はインターネットです。東日本大震災でも、個人間の安否確認の手段としてインターネットは有効に働きました。具体的には、Twitter(ツイッター)やFacebook(Facebook)などのソーシャルメディアや、skype(スカイプ)やLINE(ライン)などのインターネット回線を用いた連絡ツールの利用が考えられます。

安否確認の手段を複数用意しても、実際に使えなければ意味がありません。従業員の安否確認訓練とは別に、従業員が家族の安否確認を行うための訓練も定期的に行うことが重要です。また、家族や親戚などの連絡先などは、紙に書かせて携帯させたり、個人情報として総務部門が管理をしておくなどし、家族の安否確認を手助けするための手段を、会社としてきちんと押さえておくことが重要です。

徒歩帰宅のための支援は、最小限とする

大地震の直後には従業員をオフィス内に滞留させることが基本ですが、幼児がいる家庭や、要支援者が1名で自宅にいるような従業員の場合、安否確認で死亡が確認されたケース以外は、無理を押してでも帰宅しなければならない状況があり得ます。原則はオフィス滞留とし、やむを得なく帰宅する場合は安全を支援する形となります。

このような従業員については、地震発生直後の帰宅をできるだけ安全なものにするための支援を行うことが必要です。ヘルメット、スニーカー、軍手やマスク、自宅までの詳細な地図、携帯トイレ・水・簡易食料、LEDライトなどをザックに詰めた、帰宅支援セットを用意しておき、配布することが考えられます。事前に帰宅が必須であるかどうか、従業員個別の状況を把握しておくとよいでしょう。

企業の防災、初動対応の流れと準備

図1:企業の防災、初動対応の流れと準備

被災者ではなく救助者になるための準備を

行政や地域の防災計画は、地域住民に対して向けられることが前提で、企業は支援の対象になっていないばかりか、逆に支援を行う側と見なされることが多くあります。大地震の被災地において、救助や救命の資機材がそろい、意思疎通の系統が整えられている企業という組織は、地域に対する共助の手段として大きな期待を寄せられます。

非常時に地域の企業が何をしたか、という評判は事業の再開後も長くついて回ります。防災対策が後手に回り、本来地域住民へ向かうはずであった救助の人員や物資が、もし企業の従業員へ回された場合、その後の評判がどの方向へ向かうか、想像に難くないでしょう。

防災対策はそれ自体が生産性のある活動ではないため、コスト要因と見なされることが多いです。しかし近年、災害リスクの向上と共に企業の防災対策の社会的評価が高まっています。防災対策を記魚のCSRとして捉え、万全な防災対策を行ったうえでそれを広く周知し、地域との災害協定を結んでおくなどすれば、単純なコストではなくポジティブな広報活動の一環として防災対策を行うことができるはずです。

サイト管理者・執筆専門家

高荷智也(たかにともや)
  • ソナエルワークス代表
  • 高荷智也Tomoya Takani
  • 備え・防災アドバイザー
    BCP策定アドバイザー

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