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北朝鮮の水爆実験による放射能の拡散予測と対処方

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最終更新日:

執筆者:高荷智也

北朝鮮の地下核実験に伴い、SPEEDIを用いた放射性物質の拡散予測結果が公表されています。今回の実験では放射能の放出はないと考えられていますので、あくまでも「万が一」のシミュレーション結果です、参考資料としてご覧ください。

(2016/1/8 13:00追記)現在の状況

 北朝鮮の地下核実験から2日が経過しましたが、政府発表(原子力規制委員会)、全国のモニタリングポストの値を見ての実測値、ともに放射能汚染の事実はありませんので、この追記で今回の記事追記は終了します。もう外出をしても、洗濯物を干しても大丈夫でしょう。

最新の政府発表(1/8)

 最新の政府発表は、原子力規制委員会のサイトで公開されている、『北朝鮮による核実験実施発表に対する放射能影響の観測結果等について(第6報)』となります。こちらの資料によれば、現在までに下記の測定を行い、いずれも放射性降下物による放射能汚染は見られなかったということです。

  1. 全国に設置されているモニタリングポストによる、地上の空間線量値の測定結果→変化はなし
  2. 航空自衛隊による、日本上空のチリの採取による直接の放射性物質の観測→検出されず
  3. 全国の都道府県における、地上のチリの採取による直接の放射性物質の観測→検出されず

 ※上記(3)の大気浮遊じん(チリ)の分析結果を見ると、福島市・茨城県ひたちなか市・神奈川県茅ヶ崎市・千葉市で、微量のセシウム(Cs-134・Cs-137)が検出されていますが、これは今回の調査結果ではなく、昨年2015年(平成27年)1月~3月に採取された結果だそうですので、誤解をされないようにご注意ください。(※福島第一原発由来と思われますが、そっちのほうが問題ではないでしょうか。)

 上記のオリジナル資料『北朝鮮による核実験実施発表に対する放射能影響の観測結果等について(第6報)』はこちらです。

新・全国の放射能情報一覧による値はどうなったか

北陸の空間モニタリングポスト値

 昨日もご紹介しておりました『新・全国の放射能情報一覧』の最新の値を見ると、昨日同様北陸のグラフが上昇していますが、これは引き続きの降雨のためと考えられます。また雨による上昇値も自然現象としての誤差範囲ですので問題はありません。水爆実験による放射能汚染についていは、こちらの値からも、もう気にしなくて大丈夫といえます。

全国の天気

 この通り、雨ですね。

(2016/1/7 08:30追記)現在の状況

 地下核実験から1日が経過しましたが、放射性降下物による放射能汚染に関する追加の政府発表などはなく、また各地のモニタリングポストを見ても異常値は出ていませんので、特に問題は発生していないと考えられます。

北陸の空間放射線値が上がっている件

北陸の空間モニタリングポスト値

 ところが、『新・全国の放射能情報一覧』で現在(2016/1/7/8:30)の空間放射線量値を見ると、北陸の値が深夜から上昇しています、これは水爆実験の影響でしょうか?(※いずれも0.1Sv以下であり、これは平時の誤差範囲なので事実だとしても問題はありません。)

恐らく雨のせいです(ヤフー天気)

石川県金沢市・2016/1/7の空間放射線量値

 原因を調べるためにお天気を見てみたら、なるほど、今日本海側は雨が降っているのですね。雨が降ると、核実験とは関わりなく、普通の日でも地上の放射線量値が上昇しますので、このためと考えられます。

 現在上昇している値も、通常の雨の日の上がり具合と大差ありませんので、気にしなくてよいでしょう。(※ただどうしても気になる方は、雨に濡れないようにすることと、雨が口の中に入らないようにしてください。)

石川県金沢市の環境放射線グラフ(2016/1/7)

石川県金沢市・2016/1/7の空間放射線量値

 これは、石川県の危機管理室が公開している、金沢市の空間放射線量をグラフ化して表示しているものです。明け方から線量が上昇していますが、これが雨のためと考えられます。 ※このグラフが上に突き抜けるような動きを見せれば要注意です。

過去の値→2015年12月26~27日(雨が降った日です)

石川県金沢市・2015/12/25の空間放射線量値

 こちらは、同じ金沢市の、過去の放射線量グラフです。昨年2015年末のクリスマの翌日の値ですが、この日は雨だったので、今日1/7と同じように線量が上昇しています。もともと自然界には微量の放射性物質が存在しており、雨が降ると空気中の放射能が地上に降ってくるため、一時的に放射線量が上昇するのです。

ヤフー天気

1/7/8:30の追記は以上です。ここから先は第一報記事です。

北朝鮮の地下核実験(水爆実験)による放射能飛散予測

 今回の水爆実験に関して、SPEEDI緊急時迅速放射能影響予測システム)を用いた放射性物質(放射能)の拡散予測結果が、原子力安全技術センターより公開されています。

 内容としては、仮に放射性物質(死の灰)が空気中に放出されていたとした場合、放射性降下物(フォールアウト)で、「いつ・どこが・どの程度」放射能汚染されるかというシミュレーションです。

※大前提として、地下核実験の場合は大気中への放射性物質の放出は想定されておらず、今回広域の放射能汚染はないとされていますので、今回のシミュレーションは「もし放出されていたとしたら」という仮の前提になっています。

放射能の飛散予測(地上の濃度)

 下記が、SPEEDIを用いた放射能拡散予測結果の抜粋です。オリジナルの資料はこちらです。今回、飛散元となる現地の情報が当然ながら得られないため、放出される放射性物質の種類・量を仮として設定し、シミュレーションが行われています。

 そのため、下記の地図を見ると放射能濃度が濃い場所は赤くなっており、なんだか恐ろしく見えますが、これは「相対的」な濃度ですので、この予測を持って安全・危険を論じることはできません。あくまでも、「いつ頃・どこに」を知るための資料です。

 またこの資料は、「仮に放出されていたら」という大前提に基づいていますので、現在の想定ではこの地図で飛散が予測される地域についても、特になにも生じないだろうと考えられています。最悪のケースに備えたいという方については、どの地域にいつ頃、放射性降下物が拡散されるのかを知る材料として使える、という程度です。

2016年1月7日(木) 9:00

SPEEDIを用いた北朝鮮水爆実験による放射能の日本への拡散予測_2016/1/7-09:00

 仮に放射性物質の放出があった場合は、1月7日の9時頃に能登半島辺りに到着します。(※なおこの地図は地上の放射能濃度であり、上空1000m~3000m地点の濃度についてはもう少し先まで汚染が広がっています。詳細はオリジナルの資料をご覧ください。)

2016年1月7日(木) 12:00

SPEEDIを用いた北朝鮮水爆実験による放射能の日本への拡散予測_2016/1/7-12:00

 1月7日の正午頃に、日本海側(福井・石川・富山・新潟辺り)の地上に放射性物質(放射能)が到達します。あくまでも放出されていれば、の話です。

2016年1月7日(木) 15:00

SPEEDIを用いた北朝鮮水爆実験による放射能の日本への拡散予測_2016/1/7-15:00

 1月7日の15時頃には、南東北・北関東・中部・関西辺りまで放射能汚染が広がります(シミュレーションでは)。

2016年1月7日(木) 18:00

SPEEDIを用いた北朝鮮水爆実験による放射能の日本への拡散予測_2016/1/7-18:00

 そして1月7日の18時頃には、本州中央部の全域に放射性降下物が舞い降ります。繰り返しになりますがあくまでも「放出されていれば」ですので、恐らく何も生じないと考えられます。

※シミュレーションでは、I-131(ヨウ素)、Xe-133(キセノン)、Cs-137(セシウム)の拡散について、それぞれ地上0m・上空1000m・2000m・3000mで予測結果が出されていますが、物質による飛散の仕方にあまり差がないことと、地上以外についてはあまり意味がありませんので、当ページでは「ヨウ素・地上の拡散状況」に絞って解説をしています。

実際の所、放射性物質(放射能)汚染は生じるのか?

 原子力規制委員会の第一報によれば、1月6日(水)の15時現在、全国のモニタリングポストによる空間放射線量に変化は見られないということです(前述のSPEEDI結果は第二報です)。

 また、うがった見方をすれば、SPEEDIによる放射能の飛散予測結果が公表されている時点で、おそらく放射能汚染などの影響は生じていないのではないかと推測します。2011年の東日本大震災による福島第一原子力発電所のメルトダウン事故の際には、大規模な放射能汚染が実際に発生してしまったため、パニックを押さえるためにSPEEDIのシミュレーション結果を公表しなかったと、後になって発表がありました。

 この結果が即時公開されているということは、パニックが生じる要素がない、つまり北朝鮮の地下核実験(水爆実験)による放射能の放出は生じていないのだ、と考えられます。もし深刻な事態になっている場合、日本の広い範囲が放射能汚染されることになりますので、福島第一原発事故とは比較にならない規模の避難が必要になります。

 この場合は大規模な避難パニックが生じてしまう可能性がありますので、シミュレーション結果の公表はされず、避難をする意味が無くなったころに、「実は…」という形で情報が公開されるのではないかと考えます(あくまで推測です)。

自力で今後の推移を確認するための方法

 全国(特に日本海側)のモニタリングポストをチェックして、空間放射線量が急な上昇を見せていないかを確認します。こちらのサイト『新・全国の放射能情報一覧』で全国の放射線量が確認できます。

 SPEEDIの予測で、最初に放射性物質が到達すると考えられている北陸地方の値をチェックして、特にグラフに変化がなければ放射能汚染はないと考えられます。逆に値が急激に上昇を始めたなどの変化が見られる場合は、すぐに放射能汚染対策を実施してください。

 なお、福島周辺の値が高いのは福島第一原発事故の影響で、今回の地下核実験とは関係がありませんから、気にしなくて大丈夫です。今回まずチェックすべきは日本海側です。

放射能汚染への対策について

 放射能汚染の対策で最も重要なことは、放射性物質が体内に入ることで生じる「体内被ばく」を避けることです。目・鼻・口・傷口などを直接外気に触れさせない対策が必要になります(あくまでも、放射性物質の放出があった場合の対応です)。

自宅を目張りして外出を避ける。

  • 雨戸やシャッターを全て閉じる。
  • 換気扇やエアコンを止めて外気の侵入を避ける。
  • 可能であれば窓にラップや布テープで目張りをする。
  • 洗濯物は屋外に干さない。
  • 食料品や水の備蓄を行い、1週間程度は自宅に閉じこもる必要があります。
  • どうしても外出が必要な場合は、ゴーグル・N95などの目の細かいマスクを装着し、レインコート・長靴・ゴム手袋を装着、隙間はテープで止めるなどして外気の侵入を防ぎます(要するに外出するなということです)。帰宅後、使った服や手袋などは全てゴミ袋に入れて廃棄してください。
  • また外出時、絶対に雨には濡れないようにする(放射性物質が溶け込んだ高濃度の放射能雨になっているためです)。
    ※雨については、何もなかったとしても向こう2~3日間は避けるのがベターと思います。

乳幼児と子供に気を配る

 放射線が人体にあたえる悪影響、すなわち細胞がガン化するという影響は、細胞分裂が盛んな乳幼児・子供の方が、大人よりも強く影響を受けますので、特に子供については注意をする必要があります。

 ※ひどい表現をすれば、老い先短いご高齢の方については、放射線の影響でガンになるよりも先に寿命を向かえる可能性がありますので、放射能汚染について子供ほど心配する必要はありません。)

ヨウ素剤を服用する

 放射性物質であるヨウ素(I-131)が放出されている場合、甲状腺への付着を防止するため、1~2週間程度ヨウ素剤を服用します。手に入らない場合は、乾燥昆布やとろろ昆布など、ヨウ素を多く含む食べ物をたくさん食べてください(乾燥昆布をバリバリ食べるのは厳しいので、とろろ昆布をとかしたスープを飲むのが早いです)。

その他の関連情報

「原爆」と「水爆」は何が違うのか?

 防災面で言えばまず威力が違います。水爆の方がはるかに高威力です。また生成される放射性物質(死の灰)の量も水爆の方が多いため、注意が必要です。

 また原爆と水爆は、爆発のメカニズムが異なります。原爆はウランやプルトニウムの「核分裂反応」が生じるのに対して、水爆は水素(厳密には重水素や三重水素・トリチウム)の「核融合反応」が生じて、エネルギーが作り出されます。

 広島に落ちたのはウランの原爆で、長崎に落ちたのがプルトニウムの原爆です。1954年に第五福竜丸が死の灰を浴びる原因となったアメリカのビキニ環礁の核実験は、水爆です。また余談ですが、太陽が光っているのは核融合反応の結果ですので、水爆と同じと言えます。

 水爆に必要な「核融合」では本来、多量の放射性物質(死の灰)は生成されません。しかし、核融合をおこすには大変な「高温・高圧」状態が必要になるため、なんと恐ろしいことに、「原爆」を起爆剤として用いて、水素の核融合をおこしているのです。

 そのため、本来クリーンな(というと語弊がありますが)はずの水爆でも、起爆剤として原爆が用いられるため、放射性物質(死の灰)が大量に生成されてしまうのです。

サイト管理者・執筆専門家

高荷智也(たかにともや)
  • ソナエルワークス代表
  • 高荷智也Tomoya Takani
  • 備え・防災アドバイザー
    BCP策定アドバイザー

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