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今見直される「伝統的な防災の知恵」で行う防災対策

最終更新日:

執筆者:高荷智也

今見直される「伝統的な防災の知恵」で行う防災対策

「伝統的な防災の知恵」とは?

伝統的な防災の知恵とは、私たちの日常の一部となった、命を守るための自然な行動のことをいいます。日本という国は、今も昔も世界有数の自然災害大国です。生活の知恵として、自然災害から身を守るための知識が、長い時間をかけて徹底的に磨かれてきました。

なにしろ命がかかっていますから、役に立たない知識はすぐに忘れられて、災害から身を守ることができる、役立つ知識だけが、先祖代々の伝統的な知恵として語り継がれています。この、私たちのライフスタイルの一部となって、あたりまえのコトとして行われる行動が、伝統的な防災の知恵として、生き残っています。

なぜ今、「伝統的な防災の知恵」が注目されているのか?

今、改めて伝統的な防災の知恵が注目されているのは、忘れかけていた防災の知恵を思い出す機会が非常に多くなっており、さらにそれを多くの方が、インターネットなどを用いて、知識として「共有」できるようになってきているからです。

日本は、1995年の阪神・淡路大震災以降、地震の活動期に入り、今後も大地震が続くだろうと考えられています。また、いわゆるゲリラ豪雨のような局地的大雨の数が増えたり、大型の台風が繰り返し水害をもたらしたりするなど、災害の数が増加しています。

その一方、都市部に人口が集中したり、少子高齢化の影響で、災害から地域を守る人手が減っていくなか、守るべきお年よりは確実に増加するなど、災害は増加し、逆に私たちの生活は、災害に対して弱くなっています。

では一体「昔はどうやって災害から身を守っていたんだっけ?」ということになり、「そういえばこんな方法があったよね」と、伝統的な防災の知恵が見直される動きにつながっています。さらにtwitter(ツイッター)やFacebook(フェイスブック)などのソーシャルメディアを用いて、役立つ情報が瞬時に広まるようになったことも要因の一つです。

「伝統的な防災の知恵」例えばどんなものがある?

防災の知恵はまず建物に現れる

伝統的な防災の知恵の事例として分かりやすいのは、まず建物です。日本全国、地域によって生じやすい災害から命と財産を守るために、様々な工夫がされています。

例えば沖縄の住宅といえば、へいに囲まれた赤い瓦の平屋をイメージしますが、これは強烈な台風に備えるための伝統的な対策の現れです。近年ではコンクリート造りの家が多いですが、これも台風に対する対策のためです。また水不足に備えて雨水のタンクが設置されることが多いのも沖縄の住宅の特徴と言えます。

逆に、合掌造りの大きな屋根にイメージされる雪国の住宅、豪雪地帯における家造りにおいては、屋根に降り積もる重たい雪に耐えるために、丈夫な柱で頑丈な家を作りますし、玄関が雪に埋まっても2階から出入りができるように工夫することもあります。

2月に、山梨県をはじめとして各地で大雪が降り、建物の倒壊をはじめとして大きな被害が出ましたが、これは大雪という災害に備えるための伝統的な知識、対策がなかったために生じた災害であったと言えます。

台風が全国で強烈になるのであれば沖縄の知恵を、大雪に備えておきたいのであれば雪国の知恵を、その地域では当たり前の行動を、災害に対する伝統的な防災の知恵として、他の地域でも取り入れることは有効といえます。

水田による稲作も防災の知恵

また日本全国で見られる、伝統的な防災対策の事例として分かりやすいのは、水田、田んぼです。日本全国に整備されている水田は、当然ながら水をためる能力があります。

意外と知られていませんが、全国の田んぼがためることができる水の量は、日本全国に作られているダムの貯水量を貼るかに上回ります。水田が多い地域は、大雨が降ってもかなりの量を田んぼがため込みますから、水害を防ぐ働きがあります。

ですから当然、宅地開発などで水田を大規模に潰して作られた街は、大雨に弱いわけです。当たり前のように存在する水田ですが、これも、生活に根付いている伝統的な防災の知恵の1つといえます。

これから私たちが活用できる「伝統的な防災の知恵」は?

地名に注目する

伝統的な防災の知恵を活用する例としては、街の地名に注目するという方法があります。例えばこれから引っ越しをしようとか、新しく家探しをしようとする際、住所の地名に注意してください。

地名というのは、土地の特徴が反映されやすいものですから、例えば繰り返し水害に襲われるような地域には、沢とか、谷とか、龍とか、そういった地名がつけられやすくなりますので、そうした地域を避けて家を探す、ということは考えられます。

新しく造成された街であれば、昔の地名とか、古い村の名前などに注目すると、その土地にどのような特徴があるのか、調べるための参考になります。全てが全てということではありませんが、これも防災の知恵の1つです。

言い伝えや伝承に注目する

また、古くからの伝承や言い伝えも、重要な防災の知恵です。例えば地域に古い「ほこら」や「石碑」がないでしょうか。古くから残されている目印、ランドマークは、例えば大昔に津波がここまでやってきた、とされる目印だったり、100年に1度の洪水で浸水する地域との境界だったり、ということがあります。

地域の小学校の教科書にしか載っていない言い伝え、「大地震の時にこの山に避難して助かった」という様な伝承も、意外にも正確な事実を伝えている可能性があります。有名な事例としては、大地震がきたら、津波から命を守るために、まず自分の安全を確保してから、周囲のみんなを助けよう、ということを伝えている、東日本大震災でも注目された、三陸地方に伝わ「津波てんでんこ」という言い伝えもありますね。これも防災の知恵の典型といえるでしょう。

伝統的な食事に注目する

また地域で発達してきた伝統食も、食糧不足という災害を乗り切るための知恵が多く含まれています。現代でこそ町おこしの一環としてB級グルメの開発などが積極的に行われていますが、一昔前まで、一冬を飢えずに過ごすと言うことは重要な生活のテーマでした。

塩分で食べ物を保護する漬け物、酢漬けや発酵食品などは、その土地で取れる食べ物を、その土地の気候にあわせて長期間保存するために発達した生活の知恵です。地域の食文化にも、防災の知恵が多分に含まれています。

時代に合わずに消えていく「防災の知恵」

最後に、ここまでの話とは逆になりますが、防災の知恵が伝統的なものになる前に、時代に合わなくなり消えていく事例を1つだけご紹介します。

よく地震が発生した際の行動として、「地震、グラッときたら、まず火の始末」というような標語があります。地震で火災を出さないようにするため、とにかく揺れたら火を消そうという知恵です。

ところが最近、この言葉は使わないようになっています。例えば台所のガスコンロ、都市ガスでもプロパンガスでもそうですが、最近のガス器具は、大きな揺れが発生すると、自動的にガスを止めるように作られています。地震が発生したら、ガスコンロは勝手に火が消えるためです。

大きな揺れの中、無理をして火を消そうとすると、大やけどの原因にもなりかねず、かえって危険なのです。そのため、最近では、「地震、グラッときたら、まず身の安全」と、むしろガスコンロから離れて安全を確保しましょう、という標語に変わっています。

昔からの知恵が、無条件で伝統的な知識になるわけではなく、時代や技術の変化により、内容が変わることもあることも、防災の知恵を考える際には重要なポイントです。

サイト管理者・執筆専門家

高荷智也(たかにともや)
  • ソナエルワークス代表
  • 高荷智也Tomoya Takani
  • 備え・防災アドバイザー
    BCP策定アドバイザー

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