備える.jp
サイトメニューサイト概要・お問合せ

育休宣言・宮崎代議士に学ぶ不祥事対応と危機管理

初回投稿日:

最終更新日:

執筆者:高荷智也

こんにちは、備え・防災アドバイザーの高荷です。

 さて、2016年に入ってからホームランを連発している週刊誌、週刊文春がまたまたスクープ報道を出しています。

自民党の宮崎謙介衆院議員(35)が地元・京都で女性タレント(34)と不倫・密会していたことが、週刊文春の取材により明らかとなった。1月30日、宮崎議員は伏見区の自宅に東京から来た女性タレントを招き入れた。女性タレントは一泊した後に帰京した。

 この6日後の2月5日朝方、宮崎氏の妻で同じく自民党の金子恵美衆院議員(37)が都内病院で無事男児を出産。宮崎氏も出産に立ち会っている。宮崎氏は昨年12月、自らの結婚式後の囲み取材で国会議員としては前代未聞の「育児休暇取得宣言」をぶち上げ、議論を巻き起こしていた。

出典:週刊文春

 この問題に対する最大の被害者は、いうまでもなく宮崎代議士の奥さんである金子代議士と生まれたばかりのお子さんですが、宮崎代議士は公人ですので説明責任を果たす立場にあります。ところが現在の所、氏の対応は後手に回っている印象が強いため、今回はこの「議員=個人事業主の不祥事」に関して、危機管理の視点で解説をさせていただきます。

議員という職業における危機管理について

企業の危機管理は被害(損害額)を最小限にとどめるために行う

 企業における危機管理の目的は、「自社にとって望ましくないことが生じた際、被害を最小限にとどめる」ことであり、そのためBCP(事業継続計画)などを策定して、事前の準備を行います。企業の存立目的は利益を上げることですから、「被害を最小限にとどめる」というのはつまり、損害を最小限にするということです。ですから、事業が停止する時間を最短にしたり、停止した事業の再開を素早く行ったりする対策を、BCPとして講じます。

議員の危機管理は次の選挙に与えるダメージを最小にするために行う

 では“議員”の危機管理はどんな目的で行うのでしょうか。まず大前提として、“政治家”の目標は「日本をよくする」ことであると願います。ただし今回は、あくまでも「議員」という立場を維持するということを目標に考察をして参りますが、この際に必要な危機管理の目的は、「選挙に影響を与えるリスクを減らす」ことです。

女性問題は最も避けるべきトラブルだった

 衆議院選挙と言えば、言うまでも無く“選挙”の最高峰ですから、それなりの政策なりアピールポイントがなければ勝利できません。宮崎代議士の場合は、「子育て」「育児休暇」というポイントを前面に出していましたので、この辺りのイメージに影響を与えるトラブル、「夫婦問題」「家庭問題」「女性問題」などは徹底的に管理することが、自分自身の危機管理において必要なことでした。

不祥事が生じることを前提に準備を行う

 一方で議員という職業は、どれほど注意をしていても「不祥事」が付きものです。自身が原因になる場合は釈明のしようもありませんが、秘書、後援会、所属団体、身内など、コントロール外のところで問題が起こる可能性は様々にあります。そのため、BCP(事業継続計画)においては、「不祥事をゼロにすることは難しいため、不祥事が起こることを前提に、どう対応すればダメージが最小限になるか」を考えておく必要があったのです。

自分自身が不祥事の原因である場合は、せめて事後対応をきちんとする

 今回の不祥事は「本人が原因の不倫」と考えられています。本人の口から語られたことではありませんのであくまでも推測ですが、否定もないという辺りで恐らくそうなのだろうと考えられています(推測だけで話が展開してしまうこと事態が、危機管理の失敗の現れでもあります)。原因が自身ですので釈明のしようがありませんが、せめて事後対応をきちんと行うことで、ダメージを最小限にする対応をとるべきでした。

不祥事発表の大原則とは

 不祥事対応の原則としては、次のようなポイントに注意する必要があります。

  • 1)迅速な対応・最短時間で公式発表をする
  • 2)真摯な対応・誠意を見せ無責任な発言をしない
  • 3)原因の追及・事実を明らかにする
  • 4)再発の防止・今後の対応を明確にする

 現在の状況は、週刊文春のスクープ報道により、まず(1)の迅速な対応に失敗し、さらにその後の振る舞いから(2)の真摯な対応にも失敗をした所です。報道によれば2/12に公式見解を出すということですので、(3)原因の追及とい(4)再発の防止についてどのようなコメントを出せるかがポイントになります。

「迅速な対応」についての問題点

不祥事対応の大原則は、「迅速な対応」です

 不祥事対応で最も重要なことは「迅速な対応」です。できるだけ早く謝罪会見の場を設定するか、公式見解を発表することが求められます。インターネット、とくにFacebookやTwitterなどのソーシャルネットワークがこれほど発達した昨今、「黙っていれば逃げられる」時代ではありません。まして今回の初回報道源が、最近絶好調の週刊文春となればなおさらです。

公式発表を出さないと、憶測だけのマイナス情報がひとり歩きする

 自らが原因である不祥事について、公式見解や記者会見を行いづらいことは理解できます。しかし公式発表を出すのが遅くなると、マスコミや個人の憶測のみで話が展開してしまい、「あることないこと、特に自分にとってマイナスの情報ばかり」が様々なメディアでひとり歩きする結果となります。しかも悪いことに、一度インターネット上に拡散してしまった情報について、後から否定をすることは物理的に不可能です。

初回報道が公式発表でなくスクープ報道というのは、致命的な問題

 さらに今回、初回の報道が本人からの公式見解ではなくスクープ情報であったことが問題でした。隠し通すつもりだったのか、あるいは事実でないのかは本人の会見を待たなければ分かりませんが、こうなってしまうと謝罪会見ではなく釈明会見にならざるを得ませんので、受け手の印象はより悪いものになってしまいます。すぐに記者会見を行えないのであれば、「○月○日に見解をだすのでお待ちください」という発表でもよかったのです。

宮崎代議士が先に公式見解を出していたら、スクープを潰せた

 週刊文春の報道によれば、2月9日に紙面上でスクープ報道を出す前に、都合3回の接触を試み、また初回のコンタクトから1週間以上のタイムラグがあったそうです。もし宮崎代議士が初回の接触時に観念して(というと言葉が悪いですが)、すぐに公式見解をオフィシャルサイトなどで発表していれば、あるいは週刊文春のスクープを潰すことができていましたので、危機管理の視点においては遅きに失する結果と言わざるを得ません。

または初回報道にあわせた事前の準備が必要であった

 とはいえ、不倫に関する謝罪を自身のオフィシャルサイトに突然掲載するというのも現実的には抵抗があります。この場合は、週刊文春が初回の接触を取ってきた直後より、近いうちにスクープ報道が出されるという覚悟を持ち、週刊文春の初回報道の直後に公式見解を発表できるような手配が必要でした。むろん真っ先に奥さまへの事実説明と、地元有権者に対する謝罪行幸をしなくてはならないことは言うまでもありません。

「真摯な対応」の問題点

 対応スピードという点で後手に回ってしまった場合、これ以上の信頼失墜を避けるために、せめて事後内容は誠心誠意、きちんとすることが望まれます。しかし報道前・報道後の宮崎代議士の対応はこの「誠意」という点においても後手に回ってしまっています。

週刊文春の路上取材に対する対応

 週刊文春デジタルが有料会員向けに、宮崎代議士に対する突撃路上取材の映像を公開しています(失敗した不祥事対応の見本のような映像ですので、参考にしたい方はぜひデジタル版に会員登録をしてご覧ください)。この路上取材は通算3回目の接触だったとのことですので、宮崎代議士には準備の時間が十分にあったはずです。

 また議員には常に公人として活動することが求められますので、このような突撃取材、あるいはぶら下がり取材をいつ受けるかもしれないという覚悟と、そうした場合の真摯な対応が必要になりますが、映像を見る限りそうしたそぶりは一切無く、その場を取り繕って立ち去ろうとする対応が目立ってしまったことが、やはり危機管理の失敗と言えます。

本会議後のぶら下がり取材に対する対応

 また週刊文春からのスクープ報道があった2月9日、衆議院本会議が終了した後、記者団を相手にせず立ち去ったという報道もされていますが、これも「誠意」ある不祥事対応としては問題のある行動でした。不祥事対応の基本として、本人から「事実を明らかにする」ことと「今後の対応を明確にする」ことが求められますが、そのいずれも行わなかったことが、不信感を増大させる行動としてマイナスに作用してしまっています。

 もしその場での取材が難しい、話がしづらいということであれば、最低現事実を認めた上で、「○月○日に記者会見(あるいは公式発表)をするので、その場で質問にお答えする」という対応をとるべきでした。「国をよくする」という政治家の目標と不倫は関係ないかもしれませんが、「次の選挙に勝つ」という議員の目的を重視するのであれば、公人として誠意ある対応をとることが危機管理上必要な対応なのです。

宮崎議員の今後の対応について

公式の記者会見で挽回ができるかどうか

 今回のトラブルを危機管理的な視点で見た場合、“災害”の初動対応には完全に失敗していますので、その後の“復旧”対応については万全な対応をとって欲しいと考えます。具体的には、2月12日に予定されているという記者会見における誠意ある対応、つまり「事実を明らかにする」ことと「今後の対応を明確にする」ことです。またこの際には、ウソをつかず、隠し事をせず、誠心誠意の対応を行うことが必須となります。

頭を下げてごめんなさいをする

 議員に限らず、男女トラブル・不倫問題というのはどこにでもある話です。この際、配偶者や家族との関係を維持し、仕事を継続していきたいのであれば、まずは関係者に対して「頭を下げてごめんなさい」ができるかどうかが問われます。小学生でも分かる話ですが、イメージが重要な議員という職業においては危機管理上の問題として扱わなければならないことであり、故にきちんとした対応が必要になるのです。

個人事業主・議員の危機管理とBCP(事業継続計画)

事故や不祥事が起こることを前提に、被害を最小限にする準備がBCP

 企業においてどれほど防災対策や事故防止対策、あるいは従業員に対するコンプライアンス教育をおこなっても、事故や不祥事を完全になくすことは難しく、また悪意のある第三者からの攻撃を防ぐこともできません。そのため危機管理の一貫として、BCP(事業継続計画)を策定し、事故や不祥事が起こることを前提に、そうしたリスクが発生した場合にどう対応するのかという事前の準備を行うことになります。

基礎体力に劣る零細企業や個人事業主にこそBCPが必要

 BCPは大企業ほど導入が盛んですが、事故や不祥事を起こす可能性があるのはなにも大企業だけではなく、中小零細企業、また個人事業主であっても同様です。むしろ基礎体力に乏しい小規模事業者ほど、BCPのような非常時対応を計画しておかなくてはなりません。この際には「自社にとって最も重要な事業」に対して「生じると最もまずい災害」に対する準備から着手をすることになります。

議員に必要なBCP・事前の準備は?

 議員にとって最も重要な事業である「選挙」に対して(繰り返しですが本当は違いますよ)、生じると最もまずい災害は「本人のスキャンダル」です。そしてこの不祥事は、本人がどれほど努力しても生じてしまう可能性があります。そのため、普段からの誠実な対応、問題が起こった場合の初動対応の準備(すぐに記者会見なり公式発表を出せる準備)が、議員のBCP(事業継続計画)として必要になります。

サイト管理者・執筆専門家

高荷智也(たかにともや)
  • ソナエルワークス代表
  • 高荷智也Tomoya Takani
  • 備え・防災アドバイザー
    BCP策定アドバイザー

新着のニュース解説記事

備える.jp 新着記事