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震災や大規模水害時における空き巣・盗難被害対策

最終更新日:

執筆者:高荷智也

被災地における防犯の考え方

悪い情報は「もし本当なら」と考えて対策する

地震や水害を始め、大規模な災害が発生するたびに報道される「被災地の火事場泥棒・避難所の盗難」問題。「事実だ、目撃した、私が被害者です」「デマだ、噂にすぎない、ウソを流すな」など、両面の情報が飛び交いますが、このような場合は「最悪に備えて準備」すればいいのです。

もちろん、地震で津波が発生している場合や、大雨で堤防が決壊しかかっている中、命の危険をかけて自宅の戸締まりをしに行く、ということを推奨するものではありません。あくまでも目の前で行える「防犯対策」「盗難対策」があるならば、実施するに越したことはない、という考えになります。

被災住宅の空き巣対策

大規模な災害が発生すると、被災地において空き巣被害が報告されます。「窃盗団が入り込んでいる」「○○人が大挙してやってくる」という、本当かデマかわからない情報もある中、実際に窃盗犯が逮捕されている報道もあるため、事実無根で片付ける訳にもいきません。では具体的にどのような対策を講じればよいのでしょうか。

なぜ被災地の住宅が狙われるのか

被災地で空き巣被害が増加する理由は次の2点です。

・地域の警察力・防犯能力が低下しており、捕まるリスクが低下している

・住宅の損壊や無施錠での避難により、容易に侵入できる建物が増加している

平時の犯罪抑止力として有効な、セコムやALSOKといったホームセキュリティも、停電が生じていたりそもそも被災地のインフラが破壊されていたりする場合は役に立ちません。そのため災害時には、この2点に備えることが必要となりますが、ですが、前者の「地域の防犯力強化」には地域全体の復旧が必要となるため個人対策は難しく、後者の「侵入対策」が個々人の対応の基本となります。

災害時の防犯も、基本は戸締まり

防犯の基本は戸締まりです。空き巣と言えば、ピッキング被害やガラスをぶち破っての侵入というイメージが湧きますが、平時の空き巣被害において最も多い侵入ルートは「窓やドアのかけ忘れ」なのです。非常時においても、戸締まりが完璧な家と、ドアや窓が開けっ放しの家が並んでいれば、当然後者の家が狙われます。そのため、被災地の防犯対策も下記の行動がまず基本となります。

・避難時に、窓やドアなどの戸締まりを確実に行う

・外から見える所に、貴重品を出しっ放しにしておかない

もちろん、戸締まりなどに時間がかかり避難が遅れ、津波や火災に巻き込まれるというのは本末転倒ですから、余裕がない場合には何よりも避難行動を優先します。また水害に備えた事前避難など、避難のタイミングを自分で決められるような場合は、早めに行動を開始して戸締まりも厳重にすることが重要です。

なお、平時の防犯対策である「二重ロック化」「外回りの整理」「窓ガラスに防犯フィルムを貼る」といった準備は非常時にも有効です。特に防犯フィルムの施工は、地震によるガラスの飛散防止にもなるため大変有効な対策と言えます。

在宅装いは被災地でも有効

平時の防犯対策として、「外出時、照明やテレビを点けっぱなしにして在宅を装う」という方法がありますが、これは非常時にも有効な可能性があります。地域全体が停電をしている場合は、LEDライトとポケットラジオを用いてこれを行うことができますが、予備の乾電池などに余裕がなければ使えない方法ですので、ケースバイケースということにはなります。

平時の場合、「電力メーターの回転をみて在宅を判断する」というような話もありますが、停電している場合この方法は使えません。よってランプやラジオによる偽装効果が高まる可能性があります。が、大地震などで被害を受けた自宅に、はたしてそこまでの対策を講じるかどうかは正直疑問でしょう。こうした方法もある、という程度に認識して置くのが良さそうです。

雨戸やシャッターを閉じる

また窓に雨戸やシャッターが付いている場合、不在時にこれを閉めるかどうかは評価が分かれます。閉めておくと不在をアピールすることになるのでやめるべきという意見と、侵入に時間がかかるようになるので閉めるべきという意見です。その一方、プロの泥棒(というのがいるんですかね)の場合、在宅かどうかは他の要素で把握しているため、雨戸の開け閉めは関係なく、むしろ侵入に時間をかけさせるため閉めておくべきだ、というような評価もあります。

被災地の場合、基本的に地域住民が一斉に避難をしているような場所がいわゆる「窃盗団」に狙われるため、雨戸を開け放って在宅を装うよりは、侵入しづらくするために雨戸を閉めた方がよいでしょう。ただし雨戸やシャッターのロックをし忘れると、泥棒に絶好の目隠しを提供するだけですので注意が必要です。またドアや窓が地震などで破壊され、外から一目で損傷が分かる場合も、雨戸を閉めておくことは意味がないためやめましょう。

結局は「貴重品を持って避難」するのが効果的

平時の場合も非常時の場合も、「時間さえかければ空き巣が侵入できない家はない」のが現実です。警察や民間の警備会社が機能していない被災地の場合、時間がかかっても人目に付く可能性は低いため、空き巣が本気で住宅を狙いに来る場合、在宅をしていなければこれを完全に防ぐことは不可能です。

そこでやはり原則としては、「盗まれてはならない貴重品は持って逃げる」ことが重要となります。避難時に余裕があればゆっくり準備してもよいですが、時間が限られる場合に素早く貴重品を持ち出すために、次のような準備をしておくと良いでしょう。

・非常持ち出し袋はパンパンにせず、「貴重品を入れるスペース」を用意しておく

・非常持ち出し袋に、貴重品を放り込むポーチや袋を入れておく

・避難時に持ち出す貴重品・荷物を事前に定めておく

ただし貴重品を避難所へ持っていく場合、今度は避難所の盗難対策が必要となりますので、次にこの点を解説します。

避難所の盗難対策

 ようやくたどり着いた避難所においても、残念ながら盗難などが発生しているという報道がなされています。空き巣被害同様、こうした情報が本当かデマかに関わりなく、まずは対策を講じて、何事もなければ「ああよかった」で済ませるのがよいでしょう。

目に付くところに貴重品を置かない

ただでさえストレスがたまる避難所生活、目に付くところに現金や財布、貴金属が置いてある場合、その気がなくとも良からぬことを考えてしまいがちです。避難所における盗難は、外部だけではなく内部で生じる可能性も完全には否定できません。そのため、まず大原則として「人目に付く場所に貴重品を置かない」「貴重品が入っていそうなバックやポーチを放り出さない」という対策が必要です。大型のバッグや風呂敷などで荷物を整理しておくようにしましょう。

貴重品は肌身離さず身につける

海外旅行時の盗難対策と同様、貴重品を24時間身につけておくことも重要です。ウエストポーチやポケット付のベストに貴重品を入れて常時身につけるなど、自衛策が必要になります。また家族の誰かがすべての貴重品を管理するのではなく、ある程度分散させておくと、万が一の盗難時に全てを失うことが避けられます。非常持ち出し袋の中に、こうした貴重品を持ち歩くためのポーチを入れておいてもよいでしょう。

身の回りの品の取り違いにも注意しておく

避難所においては、悪意のない取り違いにも注意をしておくと安心です。懐中電灯やラジオ、スマートフォンの充電器、配給された食品や生活用品など、見た目が同じものをうっかり取り違えて持っていってしまう可能性があります。このため、非常持ち出し袋にいれる防災グッズには普段から名前を書いておいたり、配られたものに目印を書き込めるようにマジックペンを用意しておいたりするのが有効です。

帰宅不能を前提とする避難時の持ち物について

 大地震によって発生する津波や火災、大雨による大規模な洪水、また原子力発電所のメルトダウンによる放射能漏れ事故などが生じた場合、自宅そのものが消滅してしまい、二度と家に帰れなくなる、一方通行の避難を余儀なくされる場合があります。このような場合に備えて、非常持ち出し袋にはぜひ「デジタル化」対策を講じることをお進めします。

優先的に持ち出すもの

当面自宅に戻れないことが想定される際の避難行動時には、次のようなものをぜひ持ち出してください。

・メガネ、補聴器、入れ歯、杖、ストーマなど、体の一部として欠かせない道具

・吸入薬、降圧剤、インスリン注射、抗アレルギー薬などの持病の薬とお薬手帳

・赤ちゃん用の粉ミルクとオムツ、アレルギー対応の非常食、生理用品など、避難所ですぐに配れないが欠かせないもの

・現金、通帳と印鑑、免許証や保険証、パスポート、契約書、貴金属などの貴重品

・再生産ができない思い出の品

こうした道具を用意していても、奥まった部屋で保管していたり押入の奥深くにしまい込んでいると、大急ぎで避難をする際に間に合わなくなる恐れがありますので、必ずすぐに持ち出せるように非常持ち出し袋に入れて玄関先などで保管する必要があります。

また、外出時に自宅が火災で全焼してしまった、津波や火災が迫っており何も持ち出せなかった、原発事故が発生して自宅に戻ることができなくなった、このような場合に備えるには、次にご紹介する「デジタル化」という手段も有効です。

情報をデジタル化して管理しておく

体に身につけたり摂取しないものについては、デジタル化をして分散保存をしておくと、非常時に失うことがないため役に立ちます。対象物としては次の様な項目が考えられます。

・家族や親戚などの連絡先や住所などの情報

・通帳口座番号、クレジットカード番号、オンラインバンキングIDなどの金融情報

・基礎年金番号、マイナンバーID、印鑑登録IDなどの社会保障・行政情報

・免許証、保険証、パスポートなどのコピー(スキャンや写真情報)

・各種権利書や契約書のスキャン情報

こうした情報は、日頃からデジタル化をしておき、パスワード管理ソフトなどを用いて盗難リスクにも備えておくとよいでしょう。非常時に持ち出すことができなくとも、番号やコピー画像があれば対応できる項目が多いため役に立ちます。

思い出の品をデジタル化しておく

さらに、いわゆる思い出の品についてもデジタル化しておくと、簡単に持ち出すことができるようになり、思い出の品を非常持ち出し袋に詰め込もうとしていて避難が遅れるという事態が避けられます。

・フィルム写真や卒業アルバムのような紙の写真をデジタル化する

・婚約指輪や記念品、位牌や遺影などをあらかじめデジタル写真にしておく

このようなデータを、SDカードやUSBメモリに保存して非常持ち出し袋に入れておくとい、避難時にすぐ持って移動することができます。また同じデータをコピーしておき、普段から財布の中に入れておいたり、スマートフォンなどに保存をしておけば、外出時に自宅が消滅するような災害が発生した場合でも、必要な情報を残すことができます。さらにクラウドサービスを用いて保管をしておけば、文字通り身ひとつで避難をした際にも有効です。

データ全般であれば、OneDrive、GoogleDrive、Dropboxなどが便利です。写真の保存であれば、Amazonプライム・フォトが容量無制限で便利でしょうか。命は助かったがそれ以外の全てを失った、という事態はあまりにも悲しく悲惨なものです。せめて残すことができる思い出は事前の準備で保護するようにできるとよいでしょう。

その他災害被災地における防犯対策のポイント

地域全体の取り組みが必要

被災地の空き巣対策などを効果的に行うためには、地域全体での取り組みが不可欠です。避難所単位で自警団を組織して、地域の巡回や不審者に対する声かけを行い、いわゆる窃盗団に対して「ここは面倒な地域だ」と思わせることが重要になります。活動が行き過ぎるとまた別のトラブルを生じることになるため、組織の管理は不可欠になりますが、避難所運営の事前計画や訓練をする際には、こうした自警組織についても検討しておくとよいでしょう。

サイト管理者・執筆専門家

高荷智也(たかにともや)
  • ソナエルワークス代表
  • 高荷智也Tomoya Takani
  • 備え・防災アドバイザー
    BCP策定アドバイザー

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