備える.jp
サイトメニュー仕事依頼・お問合せ

スーパーで買い物中に突如営業中止?店舗改装とBCPを考える

最終更新日:

執筆者:高荷智也

こんにちは、危機管理アドバイザーの高荷です。

 普段SOHOで仕事をしておりますと、夕飯の買い物を頼まれることがよくあります。メニューに悩むのは我が家も同様なのですが、本日は「魚がいい」というありがたいリクエストをいただくことができたため、当店EC(そなえるすとあ)の出荷のついでに、鮮魚が充実している近所のスーパーへ買い物へ立ち寄りました。

 いつもと同じように駐車場へ入ると、なにやら工事車両や工事関係者の方が目立っていたのですが、店内へ入ると耳をつんざく爆音が鳴り響いております。どうやら営業をしながら店舗の改装工事を行っているようで、店内の一部が天幕で覆われその中で「ドドドドド!ガガガガガ!」と工事が進行しているようでした。

 時間はちょうど夕方16時の直前、まだ買い物客はまばらでしたので、スイスイと夕飯のおかずをカゴに入れてレジへ向かおうとしたところ、店内放送がかかりました。ところが「お客様に…ドドドド!…現在レジ…ガガガガ!」と、工事の音がうるさすぎて何も聞こえません。営業しながらの改装工事にもやり方があるよなぁと思いながらレジへ到着したのですが、なんだが様子が普段と異なります。

 店員さんの説明によると、「レジが全て停止してしまい、復旧の目処が立っておりません、申し訳ありませんが商品のお会計が全くできないため、お買い物を中断して本日はお帰り願えますでしょうか」とのこと。どう考えても目の前で轟音を立てている工事の影響だよなぁと思いながら、しかしその店員さんが悪いわけではないため、おとなしく買い物を中断して別のお店へ移動することになりました。

 と、ここでBCP・事業継続計画話です。

レジトラブルに見舞われた店舗におけるBCP・事業継続計画とは?

POSシステムの店舗ではアナログ対応が難しい

 さて、この店舗は「レジ全てが停止・復旧の見込立たず」という事態に対して、なにか事前に策を講じておくことができたのでしょうか。レジ1台が不調で他のレジが大混雑、という状況を見かけることはありますが、全てのレジが突然動かなくなり本日の営業終了、という機会に遭遇するケースはあまりありません。

 今回のスーパーマーケットは、某大規模チェーン店でしたので、当然ながらPOSシステムが導入されています。この場合、レジは単に会計をするだけの道具ではなく、在庫管理からマーケティングデータの収集まで、店舗と本部とをつなぐ端末として機能することになりますので、レジが動かないからといっておいそれと手書きの帳面と電卓を使ったお会計をするわけにはいかないのでしょう。

災害時に備えた小売業の一般的なBCP

 全てのレジを停止させる災害としては、停電がまず考えられます。大地震に伴う停電、洪水に伴う停電、台風などによる強風に伴う停電などです。また今回はレジだけが機能停止に陥りましたが、通常の場合は店舗全体の停電(つまり照明が落ちる)とセットで生じる事態です。このような状況においては、まずお客様の安全確保が重要になりますので、BCPにおいても避難誘導や安全確保の準備が必要になります。

 大地震や水害などが発生した場合、地域のインフラや流通が破壊されますので、孤立する住民に対して生活用品を供給するスーパーは重要な社会インフラとなります。しかしこのような災害時には、店内の安全確保が難しくなるため、例えば店舗の前に臨時のカウンターを並べ、必需品のみ均一価格で販売をする。駐車場に臨時の販売スペースを設けて、日用品や食品を詰めたセットを一律価格で販売をする。このような計画をBCPとして立てているケースが現実的です。

 災害時においては、いずれにしても正常な営業を再開させる前に棚卸しや在庫確認が必要になりますので、あるていど誤差のある販売の方法、帳面を用いた一時的な方法を用いても最終的に帳尻をあわせることができます。しかし今回のスーパーのように、(レジが復旧すれば)翌日も通常通り営業するような場合、通常の販売ルールを逸脱した対応をとることは、特にチェーン店の場合難しいと言わざるを得ません。

 スーパーにおいて「お会計」というプロセスは欠かすことができない要素ですから、大地震や大きな災害に対するBCPを構築する場合には、その根幹を担うレジが故障しないように対策を講じておくことは重要です。またレジが動かせないという事態に備えて、レジを用いない「お会計」の仕組みを準備しておくこともBCPとしては考えられる対策になります。ただ生じたリスクの規模やPOSシステムへの依存度によっては、レジが使えない場合即店舗を閉鎖する、という判断もあり得るのかということを体験しました。

ベテラン店員による対応力に救われた事例

 近くに高校や大学がない田舎のスーパーの場合、店員の入替が少ないためベテランが多く、今回も突然の事態ではありましたが実に丁寧な接客をされていました。ある意味では想定外の事態に現場力という力業で対応した事例といえるでしょう。そういった意味でこの店舗はレジリエンス(災害復旧力)が高い店舗であったといえます。個人的にも貴重な経験ができました。

 ただ、後はレジを通ればお買い物終了、という段階まで買い物が終わっていましたので、次回5%割引きチケットとか、そういった物を買い物を中断させたお客様に配付するとか、そういった準備までできていれば完璧だったなぁと思います。

 またさらに言えば、このスーパーには最寄りの店舗が3店あるのですが、そのうち2店は同じ系列のスーパーです。恐らく今日買い物を中断したお客さん達(私もそのひとりですが)の多くは、系列店へ移動したのだと思います。系列店で商圏をあるていどカバーしている地域なのですから、会話不能なほどの轟音を出しながら営業中改装工事をするのではなく、数日間リニューアル閉店をするという選択肢も考えるべきでしょう。これは店舗単体と言うよりも本部の意向の方が強いのでしょうが。

 

 …というわけで今晩のおかずが、サンマの蒲焼きから謎の白身魚のお魚ステーキに変わった我が家の夕飯でありました。

以上

サイト管理者・執筆専門家

高荷智也(たかにともや)
  • ソナエルワークス代表
  • 高荷智也TAKANI Tomoya
  • 備え・防災アドバイザー
    BCP策定アドバイザー

新着のブログ記事

ブログカテゴリ

ブログアーカイブ

備える.jp 新着記事