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Voicyそなえるらじお #222 不運と偶然で発生した第一次オイルショックのトイレットペーパー騒動

最終更新日:

執筆者:高荷智也

Voicyそなえるらじお #222 不運と偶然で発生した第一次オイルショックのトイレットペーパー騒動

おはようございます!備え・防災アドバイザー高荷智也がお送りする「死なない防災・そなえるらじお」、10月25日(月)、本日も備えて参りましょう!

雑誌は功罪あると思います…

本日のテーマは「オイルショックとトイレットペーパー騒動」です。

  • 48年前の本日、1973年(昭和48年)10月25日、大阪のABCラジオでとある放送がされ、大きな影響を与えました
  • このラジオ放送は、いわゆる第一次オイルショックと呼ばれている混乱の一コマとなります。
  • 第一次オイルショック、私達の生活に対する影響としては、トイレットペーパーや洗剤などが店舗からなくなったり、節電要請により店舗の営業時間が短縮されたり、街中の照明が落とされたりしました。
  • また中長期的には、いわゆる日本の高度経済成長を終わらせたり、原子力発電所の整備が促進されたり、新幹線や道路などの建設が延期されたりといった影響がもたらされました。
  • オイルショックがもたらした影響、特に今の私達が参考とすべき影響は、突発的な物不足です。教科書などで学ぶオイルショックの描写も、トイレットペーパーなどを購入する人々の写真などがよく掲載されています。
  • この時の様子を、2021年3月に放送されたNHKの番組、「アナザーストーリーズ 運命の分岐点」が詳しく描写しておりましたので、ここから紹介したいと思います。

紙不足の噂が千里ニュータウンを動かした

  • まず、紙不足はいきなり始まった訳ではなく、オイルショックの前年から、紙の原料となる輸入パルプ価格の上昇や、水不足による製紙工場の操業短縮などの影響を受けて、ジリジリと紙製品の価格が上昇していました。
  • そして1973年10月6日に第四次中東戦争が勃発し、
  • 10日後の10月16日には原油価格の70%引上が発表されました。
  • こうした状況を受け、さらに3日後の10月19日に、当時の通産大臣から「紙節約の呼びかけ」が出されました。
  • すると、街中の井戸端会議で、この冬は灯油が不足しそう、そういえばトイレットペーパーもなくなるかも、という、この時点では根拠の無い噂が広がりはじめました。
  • さて、ここで少し当時の日本の状況について触れますが、
  • 1973年(昭和48年)当時、日本のトイレの水洗化率は30%程度で、7割ほどの世帯ではくみ取り式のトイレ、いわゆるボットン便所でした。
  • トイレの紙、現代においてはロールタイプのトイレットペーパーが当たり前の様に使われますが、くみ取り式トイレの場合、水に溶ける水溶性である必要がないため、1973年当時のトイレ紙生産量は、ちり紙タイプが6割、ロールタイプが4割と、ロールタイプのトイレットペーパーよりも、くみ取り式トイレ用のちり紙を使っている世帯の方が多い状況でした。
  • この状況で、いくつかの不運がかさなります。舞台となったのは、大阪の千里ニュータウンでした。

不運が続いた

  • 千里ニュータウンは、当時の最新設備を備えた団地で、全てのトイレが水洗化されていました。
  • この千里ニュータウンにも、そういえばトイレットペーパーがなくなるかもしれないね、という噂話が流れたのですが、全てのトイレが水洗である千里ニュータウンでは、当時主力だったちり紙が使えませんので、トイレットペーパーが手に入らなくなるのは、お尻における危機的な状況と言えました。
  • そのため、住民達は今のうちにトイレットペーパーを買っておこうと、お店でトイレットペーパーをたくさん購入しはじめました。当時はスマホもSNSもない時代ですので、この状況だけであれば、千里ニュータウンだけの問題で済んだのですが、ここで悪いことが重なります。
  • たまたま、ある新聞社のデスクが千里ニュータウン近辺に住んでおり、千里周辺の店舗でトイレットペーパーが品薄になっていることを知り、それを取材してきなさいと部下の新聞記者に命令し、その記者が新聞の地方版の小さな記事に、トイレットペーパーが品薄になっていると記載したのです。これが10月24日のことでした。
  • さらに悪いことに、本来であればほとんどの目の人に触れない小さな記事が、翌日10月25日に、当時千里に在住していたラジオの人気パーソナリティ、中村鋭一さんにに読み上げられてしまい、一気にこの話題が広まってしまったのです。
  • さらに、この段階ではまだ大阪周辺での話で済んでいたのですが、不運は続き、10月31日、この日は千里ニュータウンの最寄り駅、千里中央駅前にあるスーパーマーケットの、月に2回の特売日だったのですが、たまたまこの時の目玉商品がトイレットペーパーだったのです。
  • 特売用の商品は、1ヶ月前から発注して確保していましたので、この状況においてもたくさんの在庫を、確保できていたのです。

そして紙がなくなった

  • 千里ニュータウン周辺での紙の品薄、新聞やラジオでの報道、そしてたまたま重なったスーパーでのトイレットペーパーの安売り、そして大量の在庫、この状況を受け、地元の方々が開店前の店舗に行列を作り、そして一瞬でトイレットペーパー700パックが完売したそうです。
  • しかし、それでも購入できなかった方々から、特売品じゃなくていいので、トイレットペーパーはないかと訪ねられ、通常価格でよければということで、残りの在庫をスーパーは普通に販売しました。
  • そして、この状況を再び新聞記者が見ており、セールで138円だったトイレットペーパーが一瞬で売り切れ、品切れを理由に1こ200円で再販売されたが、それも一瞬で売り切れた、というような新聞記事となりました。
  • この記事を受け、トイレットペーパーが不足している、しかも値段がみるみる上がっているという印象を読者に与えてしまいました。
  • さらに、この千里ニュータウンでの行列の様子がテレビで報道されたことで、一気に騒動が全国に波及し、東京を含める全国で、トイレットペーパーの買いだめが広がったそうです。
  • また、なぜか、トイレットペーパーだけでなく、洗剤、塩、砂糖などの生活必需品も、なんとなく品不足になるのではと思われ、買いだめが進行したということです。これが、オイルショック発生から1ヶ月ほどで生じた、トイレットペーパー騒動の流れと言うことです。
  • なお、当時実際にトイレットペーパーの供給が不足していたのかと言えば、まったくそのようなことはなく、買いだめ騒動が起きなければ、特に生活に影響が生じることはなかったということです。

本日も、ご安全に!

ということで、本日は「オイルショックとトイレットペーパー騒動」のお話でした。

オイルショックによるトイレットペーパーの買い占め、後から振り返れば、噂話と憶測から広がったデマ騒動だったわけですが、ほぼ同じような流れによる買いだめを、

2011年の東日本大震災の後と、2020年の新型コロナウイルス感染症の流行初期に、私達は発生させています。「ある日突然、何かの原因で、生活必需品がなくなる」、これは理屈ではなく、突発的に生じる災害と言えます。

ぜひ、日持ちする消耗品については、日頃からご自宅の中に、1~2ヶ月分程度の在庫を持つようにし、突発的な物不足で慌てないように、準備したいものです。

それでは皆さま、本日も引き続き、ご安全に!

サイト管理者・執筆専門家

高荷智也(たかにともや)
  • ソナエルワークス代表
  • 高荷智也TAKANI Tomoya
  • 備え・防災アドバイザー
    BCP策定アドバイザー

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