Voicyそなえるらじお #227 原爆と水爆、原発と核融合炉は何が違うのか?
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執筆者:高荷智也
おはようございます!備え・防災アドバイザー高荷智也がお送りする「死なない防災・そなえるらじお」、11月1日(月)、本日も備えて参りましょう!
月初の自己紹介とちょっとしたお話の日
本日のテーマは「原子力と核兵器」です。
- 本日11月1日は、69年前に、アメリカが世界初の水爆実験を実施した日です。
- ところで水爆は核兵器ですが、同じ核兵器である原爆とは何が違うのでしょうか。また同じ核エネルギーを使用している原子力発電所や、現在研究が進められている核融合発電などとは何が異なるのでしょうか。
- 本日は、核エネルギーや核兵器について簡単なお話をしたいと思いますが…
月の初めの自己紹介
その前に、本日は11月初回の放送となりますので、月初の自己紹介をさせていただきます。
- 当チャンネル、『Voicy・死なない防災!そなえるらじお』、今回が227回目の放送となりますが、今月11月は放送開始1周年となります。
- 昨年、2020年11月24日にスタートいたしましたが、予定では第242回目の放送で1年目を迎えます。ここまで継続をすることができましたのも、毎日多くの皆様にお聞き頂き、コメントやいいねボタンなどのご評価を頂いた結果となります。本当にありがとうございます!
- 当チャンネルは、個人と家庭の備えと防災をテーマに、大地震や水害などの自然災害を対象とした防災、感染症パンデミック対策、あるいは銃火器を使わないゾンビへの備え方まで、「防災をライフスタイルにする」ための様々な情報・ノウハウを紹介する番組として運営を行っております。
- 少しずつチャンネル登録をいただく方が増えておりますので、毎月初回放送では、そもそも私が何者なのか、という簡単な自己紹介からスタートさせていただきたいと思います。
自己紹介
- 私は、「備え・防災アドバイザー」という肩書きで活動をしております、高荷智也と申します。
- どこかの大学や研究機関、あるいは防災関連の企業に所属しない、フリーの専門家という立場で活動をしております。
- 家庭の防災対策や企業の危機管理などを大テーマに、
- 講師業…講演会やセミナーなどでお話をしたり、
- 執筆業…雑誌やwebメディアなどでコラムを連載したり、様々な防災記事の監修を行ったり、
- コンサル業…企業と契約をして防災グッズの企画開発や、BCPと呼ばれる危機管理のマニュアル作成のお手伝いをしたり、
- メディア出演業…テレビやラジオなどで災害の解説や、防災に関するアドバイスを行ったり、
- メディア運営業…私自身が運営するwebメディア「備えるJP」、YouTube「そなえるTV」、voicy「そなえるらじお」などの運営を行ったりと、
- 「備え・防災」の何でも屋さんという立場で、お仕事をしております。
水爆と原爆
- と言うわけで本日のテーマ、原子力と核兵器のお話です。
- まず、原子爆弾と水素爆弾の違いですが、原爆も水爆も、核反応と呼ばれる現象で膨大なエネルギーを取り出す爆弾ですが、使用する燃料と核反応の種類が異なります。
- 原子爆弾は、ウランやプルトニウムを核分裂させてエネルギーを取り出しますが、水素爆弾は、水素の仲間である重水素や三重水素を核融合させてエネルギーを取り出しています。
- 核分裂よりも、核融合の方が、より大きなエネルギーを取り出すことができますので、基本的には原爆よりも水爆の方が、より破壊力の大きな爆弾となります。
- また、原爆に使われる核分裂反応は、純度の高いウランやプルトニウムを一カ所にあつめれば、比較的簡単に反応する性質を持っていますが、水爆に使われる核融合反応は、重水素や三重水素を集めただけでは何も起きず、超高温・超高圧の状態にしなければ反応しません。
- これを日常的に行っているのが太陽です。太陽は水素の核融合反応が連続的に発生することで、膨大なエネルギーを生み出しています。しかし地球上で同じような核融合反応を起こそうとすると、温度を数千万度から1億度程度まで高めなくてはならず、非常に大変です。
- そのため、水素爆弾には、起爆装置として原子爆弾が使われています。
- 簡単に言えば、水素の周りに原爆を並べて、原爆を爆発させることで水素を超高温・超高圧状態にして、これで核融合を引き起こしています。
原爆と水爆と死の灰
- また、核兵器が爆発しますと、放射性降下物、いわゆる死の灰がまき散らされて、直接破壊された地域の周辺も、放射能汚染を引き起こすという大きな問題があります。
- この放射性降下物、死の灰は、原子爆弾が爆発する際の、核分裂反応によって生み出されますが、水素の核融合反応では生成されません。
- 水素爆弾が爆発した際に、放射性降下物、死の灰が生まれるのは、核融合反応ではなく、起爆剤につかった原爆による核分裂反応が起きるためなのです。
- そのため、原子爆弾を起爆剤につかわない、核融合爆弾が発明されれば、放射性降下物を生まない、いわゆる綺麗な水爆になるのですが、核融合反応を引き起こすための超高温・超高圧を気軽に生み出せるのが、現在の所は、原子爆弾を使うしか方法がなく、実用化のめどは立っていません。
原爆と原発と、水爆と核融合炉
- 一方、原爆を平和利用したものが、原子力発電所であり、水爆を平和利用しようとがんばっているのが、核融合炉ということになります。
- 原子力発電所では、核分裂反応をゆっくり起こすことで、エネルギーを取り出していますが、燃料として用いるウランやプルトニウムの純度が低いため、原子爆弾のように核爆発を起こすことは原理的にあり得ません。
- また、核融合炉でも、核融合反応をゆっくり起こすことで、エネルギーを取り出そうとがんばっていますが、原爆を使わずに、超高温・超高圧を作り出し、かつそれを持続させなければならないという点が、技術的に大変難しいため、まだ実用化には至っていません。未来のエネルギーとして大きく期待されている段階です。
3.11の爆発は?
- ところで、3.11福島第一原子力発電所事故では、メルトダウン事故が起こり、原発の建物が爆発して吹き飛ぶ様子がテレビでも中継されましたが、あれは核分裂による核爆発ではなく、水素爆発です。
- メルトダウンによって溶けた燃料が、周りの金属や水と反応して大量の水素ガスを生み出してしまい、それが爆発したため建物が吹き飛びました。原子炉が原爆のように爆発した、ということではないのですね。
- ただ、原子炉を動かすと、高レベル放射性核廃棄物、いわゆる死の灰がゆっくり生成されます。これを処分する方法が確立されておらず、これはこれで課題なのですが、
- 福島第一原子力発電所事故では、水素爆発を起こした際に、原子炉の中に蓄積されていた高レベル放射性核廃棄物が大量にばらまかれてしまい、これが周辺を放射能汚染させることになりました。
- 原爆の場合は、これを一瞬で行うことになりますが、原子力発電所の場合は、事故が起きて原子炉が吹き飛ばない限りは、死の灰がばらまかれることはないというのも違いとなります。
- ちなみに、核融合による発電が実用化された場合、核融合反応では死の灰は生成されませんので、核分裂による原子力発電と比較すると、クリーンなエネルギー源になると言われています。問題はそれが大変難しいということですね。
本日も、ご安全に!
ということで、本日は「原子力と核兵器」のお話でございました。
原発とか原爆とか水爆とか核兵器などの言葉を聞くと、なんだかまとめて恐ろしく、避けたいものに聞こえますが、ひとつひとつは違うものですし、正しく利用することで大きな恩恵を受けることも可能ですので、丁寧に理解することが大切だと言えます。
それでは皆さま、本日も引き続き、ご安全に!