備える.jp
サイトメニュー仕事依頼・お問合せ

Voicyそなえるらじお #260 悪意のある放火殺人から逃げるには?大阪ビル火災事件

最終更新日:

執筆者:高荷智也

Voicyそなえるらじお #260 悪意のある放火殺人から逃げるには?大阪ビル火災事件

おはようございます!備え・防災アドバイザー高荷智也がお送りする「死なない防災・そなえるらじお」、12月20日(月)、本日も備えて参りましょう!

悪意のあるテロは防ぐことができない

本日のテーマは「大阪ビル火災」です。

  • 先週末金曜日、2021年12月17日の午前10時過ぎ、大阪府北区の繁華街、北新地の一角にある雑居ビルで、放火による大量殺人事件が発生、24名もの犠牲者が出る最悪の事態となりました。
  • まずは犠牲となられた方々のご冥福を、お祈りいたします。

大阪ビル火災

  • この放火殺人事件は、八階建ての雑居ビルの四階に入居していた、心療内科クリニックが標的にあったものですが、
  • 犯人とみられる61歳の男性が、クリニックの入口付近に可燃性の液体が入った紙袋を持ち込み、放火、犯人自身も火災で負傷して病院へ搬送、重体に陥っているということです。
  • この放火に関する動機や、ターゲットとなったクリニックとの因果関係などは判明しておりませんので、この辺りについては言及しませんが、火災の状況そのものについてはある程度報道がなされています。
  • 今回の放火による火災で、これほど大量の犠牲者が生じた理由としていくつかの要因があげられてますが、
  • まずは煙の周りが早く、とくに一酸化炭素があっという間に室内へ充満してしまたこと。今回の放火では、可燃性の液体が用いられたということが分かっていますが、こうした燃料は爆発的に燃焼し、周囲の酸素をあっという間に消費してしまうため、不完全燃焼による一酸化炭素が大量に発生します。この一酸化炭素が室内に充満し、火災の炎で焼かれるより先に、一酸化炭素中毒または窒息死で命を落としてしまいます。
  • もうひとつの要因は、避難経路がなかったこと。今回被害にあったビルは、避難経路としてエレベーターと階段が一カ所ずつしかありませんでしたが、そのエレベーターと階段に繋がるホールで火が付けられたため、避難場所を失い、逃げることができなかったという点があげられます。

法律上の問題はなかった様子

  • なお、現在までの報道では、消防法で定められている設備などは設置済、また避難経路が一箇所しかないという点も、法律上は違反ではない対象のビルだったとうことです。
  • ちなみに避難階段については、消防法ではなく建築基準法の範疇となりますが、現在の法律では5階建て以上のビルには避難階段の設置が義務づけられていますが、面積が狭い場合は免除されることになっています。
  • またこの設置義務が定められるより前に立てられていた建物は、法律は過去にさかのぼって適用はされませんので、いわゆる既存不適格という状態で、合法となります。
  • 今回の雑居ビルは、面積による避難階段免除ではなく、建築された時期が1970年と古く、既存不適格ということで合法だった可能性があります。
  • この既存不適格による被害の拡大は、過去の火災や事故でもよくおきていますが、法律上問題ないから対策しなくて良い、のではなく、命を守るためにその対策が必要なのかどうかを、ぜひ考えていただきたいと思います。

対策と過去の類似事件

  • 雑居ビルによる大規模被害といえば、2001年(平成13年)9月1日に発生した、新宿歌舞伎町のビル火災がよく引き合いにだされます。死者44名という惨事を招いた火災でしたが、避難階段をふさぐように置かれていた荷物などが被害拡大の原因として考えられており、その後の消防法改定のきっかけとなりました。
  • また、新宿歌舞伎町のビル火災は放火ではなく、事故による火災でした。一方、今回の大阪ビル火災の原因は放火です。それも大量殺人を目的とした、自爆テロに近い形の、そうとうな悪意に溢れる放火です。そして現場となったビルそのものに、法律上の欠陥はありませんでした。
  • このような状況から、今回のビル火災は、2019年7月18日に発生し、死者36名を出した、ガソリンによる、京都アニメーション無差別放火殺人事件や、つい先日のハロウィンに、東京・京王線で発生した無差別殺人事件に近い扱いだろうと考えられます。
  • 今回のビルも、京都アニメーションの社屋も、京王線の車両も、法律上の欠陥はなく、基本的に悪意のない火災などについては、対処できる可能性が高くあります。しかし、法律を超えた人の悪意による放火事件は、どれほど厳重な対策を講じても、あるいは法律で設備などの設置を義務づけても、防ぐことができず、
  • こうすれば再発を防止できるという解決策を提示できないことから、極めて恐ろしい災害のような物であるといえます。

率先避難者になる

  • 一般的に、建物火災から身を守るための手段は、とにかく素早くにげることです。非常ベルの音を聞いた、爆発音を聞いた、煙のニオイを感じた、そうした異常を感じた瞬間に、正常性バイアスを振り切って、第一の避難者、率先避難者になり屋外へ飛び出せるか、これが勝負です。
  • しかし、今回の大阪ビル火災事件や、京都アニメーション事件のように、人を殺すつもりで行われる無差別放火殺人では、火の周りが異常に早かったり、通常は火元になりづらい、避難経路そのものを塞がれるという可能性があるため、率先避難そのものができなくなる可能性があります
  • これを完全に防ぐ対策は、現在のところ、あるいは未来永劫ありません。自分や家族が今日死んでしまうかもしれない、そう考えて毎日を精一杯生きる、そうしたことしかできないのもまた事実と言えます。

本日も、ご安全に!

ということで、本日は「大阪ビル火災」のお話でございました。

事件の詳細は今後の報道で改めて確認したく思いますが、まずは皆様、自宅や職場、学校などの建物、突然爆発音が鳴り響き、5秒後に目の前に煙が立ちこめて視界を失ったら、はたして逃げ出すことができるのか、地面を這って移動して、屋外へでることができるのか、ぜひイメージをしてみていただきたいと思います。

それでは皆さま、本日も引き続き、ご安全に!

サイト管理者・執筆専門家

高荷智也(たかにともや)
  • ソナエルワークス代表
  • 高荷智也TAKANI Tomoya
  • 備え・防災アドバイザー
    BCP策定アドバイザー

新着のブログ記事

ブログカテゴリ

ブログアーカイブ

備える.jp 新着記事