備える.jp
サイトメニュー仕事依頼・お問合せ

#262 糸魚川大火から5年、2000万年を超えた宿命と恐ろしい飛び火

最終更新日:

執筆者:高荷智也

#262 糸魚川大火から5年、2000万年を超えた宿命と恐ろしい飛び火

おはようございます!備え・防災アドバイザー高荷智也がお送りする「死なない防災・そなえるらじお」、12月22日(水)、本日も備えて参りましょう!

糸魚川-静岡構造線って名前が格好いいですよね

本日のテーマは「糸魚川大火」です。

  • 本日12月22日は、新潟県糸魚川市で発生した、糸魚川大火からちょうど5年目を迎える日です。
  • 2016年(平成28年)12月22日、新潟県糸魚川市の市街地で、大規模な延焼火災が発生しました。
  • 火災の直接的な原因は、市街地にあった飲食店からの不注意による失火でしたが、元々糸魚川は大規模な火災を起こしやすい強風が吹く地形をしたエリアであり、昔から繰り返し大規模火災に見舞われてきた地域です。
  • この糸魚川大火のお話は、当チャンネルそなえるらじお、 #21『大地震による延焼火災から逃げる準備を』でもご紹介したことがありましたが、
  • 実はこの放送をした半年後、2021年の6月に糸魚川で仕事をする機会があり、復興施設へ訪問させていただいたり、糸魚川大火に関わった方や、糸魚川市の消防本部さんからお話を伺う機会を得ることができました。
  • 今回はこの糸魚川訪問で深掘りした、糸魚川大火のお話・2021年度版をお届けします。

糸魚川大火

  • まず火災が発生したのは、2016年12月22日、お昼前の午前10時20分頃と想定されています。
  • 火元となったのは、北陸新幹線も停車するJR糸魚川駅の北側、日本海側に広がる市街地にあったラーメン店でした。
  • 少し話はかわりますが、糸魚川といえばジオパークです。糸魚川ジオパークは、日本で初めて世界ジオパークに認定された地域ですが、その特徴のひとつに、フォッサマグナと糸魚川・静岡構造線が上げられます。
  • 糸魚川・静岡構造線は、かつて日本列島を東西に分割していた、フォッサマグナと呼ばれるエリアの西の端にある地形ですが、太平洋側の静岡県静岡市辺りと、日本海側の新潟県糸魚川市辺りまで、日本列島を東西に分ける巨大な断層が走っています。
  • 断層周辺は地形を浸食し、谷状の地形が生まれやすいのですが、これによって生まれた川が、長野県から糸魚川をとおって日本海へ注ぐ姫川(ひめかわ)です。
  • そして、日本海に発達した低気圧が生まれると、この低気圧に向かって姫川沿いの谷地形を通過する強い南風が生まれます。この風を地元では「蓮華おろし」と呼んでいますが、この強い南風が、昔からから糸魚川に大規模な延焼火災をもたらしてきました。
  • 具体的には、記録に残っているだけでも、1777年以来合計13回の大規模火災が発生しており、糸魚川は国内でも有数の延焼火災発生地域でもあるのです。
  • つまり、糸魚川で大規模な火災が発生するのは、日本列島が生まれた2000万年前頃から定められていた地形上の運命であり、なんともダイナミックな火災原因であるということが言えるのです。

すさまじい飛び火

  • 2016年の糸魚川大火は、近い将来の発生が心配されている首都直下地震などで生じると考えられている、大規模な地震火災の様子の一端を示したものであるとも言えます。
  • 糸魚川大火の後、焼け跡に復興施設として、大火の記録を展示したスペースや、大規模な防火水槽などが設けられている、街作り拠点施設、「キターレ」がオープンしていますが、この展示施設に、東京などからの見学が結構来ているそうなのです。
  • つまり、首都直下地震で大規模な延焼火災が発生した際に、どのような状況になるのかを、東京の偉い方々が、実際に延焼火災の生じた糸魚川に重ねて視察するということが行われているそうなのですが、
  • その時に声を失う展示物として、「飛び火」というものがあります。
  • 糸魚川大火では、強風に煽られて火災がどんどん延焼していったのですが、この時の火災の広がり方は、出火元からジワジワと広がるのではなく、少し離れた場所へ同時多発的に延焼するという恐ろしい燃え方をしていました。
  • 木造住宅などが燃えると、火の粉だけでなく、火のついた木片なども風に煽られて飛ばされますが、糸魚川大火では、最大100メートル離れた場所までこの木片、飛び火が飛んで行き、とんでもない距離を超えて火災を延焼させていたということが分かりました。
  • 強風で生じる大規模な延焼火災では、火災は徐々に広がるだけでなく、離れた場所で同時多発的に延焼が起こる可能性がある、これを地震火災などの対策を立てる際には知っておかなければなりません。
  • 大都市にお住まいで、大地震が発生した際、近くで火災が起きていなくても、遠くから火のついた木片などが飛んでくることで、いきなり自宅や近所が延焼することもあり得ます。
  • 大規模な地震火災に発展する恐れのある、木造住宅の密集地域などにお住まいの場合は、大地震の後、すぐに避難をするか、移動できる準備を整えておくことが必須であると言えます。

本日も、ご安全に!

ということで、本日は「糸魚川大火」のお話でございました。

糸魚川は、日本列島形成の歴史上、火災が避けられない地域として存在してしまっているのですが、現在は火災に強い街作りが進められて、大火を再現させない努力がなされています。

一方、日本各地に存在する木造住宅が密集する地域では、大地震を引き金に、どこでも大規模な延焼火災が発生する恐れがあります。生じることが分かっている災害であれば、防がなくてはなりません。ぜひ地域の防災・消火訓練への参加、近所にある消防設備の把握など、気にしてみてください。

ちなみに年明け、2022年の1月にも、また糸魚川を訪問する機会をいただいております。また新しいジオパーク情報などを学び、防災知識としてお話できればと思っています。

それでは皆さま、本日も引き続き、ご安全に!

サイト管理者・執筆専門家

高荷智也(たかにともや)
  • ソナエルワークス代表
  • 高荷智也TAKANI Tomoya
  • 備え・防災アドバイザー
    BCP策定アドバイザー

新着のブログ記事

ブログカテゴリ

ブログアーカイブ

備える.jp 新着記事