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Voicyそなえるらじお #70『群衆雪崩…東日本大震災の成功体験が、首都直下地震で死を招く』

最終更新日:

執筆者:高荷智也

Voicyそなえるらじお #70『群衆雪崩…東日本大震災の成功体験が、首都直下地震で死を招く』

おはようございます!備え・防災アドバイザー高荷智也がお送りする「死なない防災・そなえるらじお」、3月10日(水)、本日も備えて参りましょう!

兵庫県明石市に来ています

本日のテーマは「帰宅困難と群衆雪崩」です。

私は今、兵庫県明石市に来ております。最近リモートによるオンライン防災講演会が続いて降りましたが、今回は私の拠点静岡県、そして今回の講演会会場となる兵庫県、共に新型コロナウイルス感染症(COVID-19)緊急事態宣言の対象地域外ということで、会場での講演会実施となり、久しぶりに出張をしております。

  • 講演会自体は昨晩、3月8日の夜に実施されまして、
  • 本日3月9日は帰宅をするだけなのですが、
  • その途中で、JR神戸線の朝霧駅に立ち寄っています
  • 朝霧駅と言えば、ちょうど20年前、2001年7月21日に実施された花火大会で生じた痛ましい事故、子ども9名を含む11名が死亡、247名の重軽傷者が発生した「明石花火大会歩道橋事故」の会場です。
  • 現在もこの歩道橋は、駅と海岸を繋ぐ通路として活用されていますが、この事故の犠牲者を追悼するための慰霊碑が置かれております。

恐ろしい群衆雪崩

  • この事故の原因は「群衆雪崩」と呼ばれる現象によるものです。
  • 群衆雪崩は、一定の空間に人が集まりすぎることで、人間が人間を圧迫し、圧死者が発生するという最悪の事故のひとつです。
  • 「明石花火大会歩道橋事故」でも、花火大会の会場と、最寄り駅を繋ぐ通路であった歩道橋に、見物客が集中しすぎることで群衆慣れが発生してしまいました。
  • じつはこの群衆雪崩という現象は、近い将来の発生が想定されている大地震、首都直下地震でも発生する可能性があると、指摘されています。

東日本大震災の経験が群衆雪崩を生む?

  • 明日で10年目となる、3.11東日本大震災では、直接的な被災地とはならなかった東京でも強い揺れを観測し、JRなどが終日運転を取りやめたことから、首都圏全体で515万人にも登る、膨大な帰宅困難者が発生しました。
  • 皆さまの中にも、帰宅困難者となり会社などで夜を明かした方。あるいは長距離を徒歩で帰宅された方がいらっしゃるかもしれません。
  • ところでこの帰宅困難者は、近い将来の発生が想定されている、首都直下地震でも当然ながら発生することが想定されています。
  • 東京が震源となる地震が生じた場合は、3.11を上回る800万人程度の帰宅困難者が発生するとも予測されていますが、この時大きな問題が生じます。

東日本大震災の時、東京は「被災地」ではなかった

  • 東日本大震災によって発生した帰宅困難者、徒歩帰宅ができたという成功体験を持っている方、または家族や友人同僚にこの話を聞いた方が、首都直下地震でも同じように歩いて帰ることができる、という考えを持っているかもしれません。
  • しかし、東日本大震災の時、東京は被災地ではありませんでした。JRこそ停止し、道路は大渋滞で自動車は身動きできなくなっていましたが、それ以外は正常だったのです。
  • 道路やビルが破壊されたわけでないので、歩道は安全にあるくことができました。
  • 大規模な火災なども生じていませんでしたので、危険な箇所はあまりありませんでした。
  • 停電も生じていませんでしたので、街灯はつき、携帯電話などで情報収集を行うこともでき、コンビニや途中の公共施設でトイレを使うことなどもできました。
  • しかし、首都直下地震で東京そのものが大規模な被害を受けた場合、話は変わります。
  • 破壊された道路、余震のたびに頭上から降り注ぐビルの外壁や看板、周囲では大規模な火災が発生し、停電が生じていれば街灯もなく、コンビニ等のトイレも利用ができなくなり、避難所は地域の住民で溢れかえり、また荒川や多摩川にかかる橋が被害を受けた場合、郊外への徒歩移動そのものができなくなっている可能性もあります。
  • この状態で、東日本大震災を上回る、800万人にも登る帰宅困難者が、前回の成功経験を頼りに、一斉に徒歩帰宅を始めたらどうなるのか。身動きが取れなくなった危険な路上に、数百万人の帰宅困難者が溢れかえり、大規模な「群衆雪崩」が発生する可能性があると、想定されています。
  • 特に東京・新宿・渋谷といったターミナル駅の周辺では人が溢れかえり、場所に依っては満員電車並みの状況が、その辺の路上で同時多発的に発生するかもしれない。
  • この状況で強い余震が発生すると、頭上から降り注ぐ危険物などを避けようと、多くの人々がビルや地下街へ出入りしようとし、大量の圧死者が発生するかもしれないのです。

ではどうすればよいのか

  • 首都直下地震をはじめとする、大都市圏での大地震。
  • もし自分が帰宅困難者となった場合、どうすれば徒歩帰宅で死亡することを避けられるのか。
  • 最大の対策は、すぐに帰宅しないことです。
  • しばらく、具体的には最大3日程度、会社や学校などに留まり、周囲の状況が落ち着いてから帰宅を開始すれば、徒歩帰宅者に巻きこまれて死ぬ可能性を減らすことができます。
  • こうした対応のため、東京などは2012年に帰宅困難者対策条例を制定し、都内の企業や商業施設に対し、大地震発生から3日間程度、従業員を家に帰さないための準備。
  • オフィスや店舗内の地震対策、防災備蓄品の準備、家族との安否確認体制の構築などを行うように、努力義務を課すようになっています。

本日も、ご安全に!

大都市で大地震に巻きこまれた際、すぐに歩いて帰ると死ぬかも知れない。ということを理解し、オフィスなどにはマイ防災セットを設置する。また家族との安否確認ルールを事前に定めておく、などの対策を、ぜひおこなってみてください。

それでは皆さま、本日も引き続き、ご安全に!

サイト管理者・執筆専門家

高荷智也(たかにともや)
  • ソナエルワークス代表
  • 高荷智也TAKANI Tomoya
  • 備え・防災アドバイザー
    BCP策定アドバイザー

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