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Voicyそなえるらじお #112『日本史上最悪・千日デパート火災、法律違反で無いからOK…ではない』

最終更新日:

執筆者:高荷智也

Voicyそなえるらじお #112『日本史上最悪・千日デパート火災、法律違反で無いからOK…ではない』

おはようございます!備え・防災アドバイザー高荷智也がお送りする「死なない防災・そなえるらじお」、5月13日(木)、本日も備えて参りましょう!

日本史上最悪のビル火災

本日のテーマは、「ビル火災」のお話です。

  • 本日5月13日は、日本で最悪のビル火災、千日(せんにち)デパート火災が発生した日です。
  • 49年前の本日、1972年5月13日の夜22時半頃、大阪ミナミの繁華街にあった「千日デパート」で大規模な火災が発生しました。
  • この火災では、最終的に死者118名、負傷者81名を出す大惨事となり、2021年現在も戦後最悪のビル火災として記録されています。

既存不適格な建物

  • 千日デパートは、もともと1932年に建てられた、大阪歌舞伎座の建物を改修された施設であり、1958年に改築された新装開業した複合商業施設でした。火災が発生した1972年の時点で築40年目と、かなり古い建物でした。
  • 日本の建物は、建築基準法や消防法によって、火災対策が様々に義務づけられますが、法律の改正以前から存在している建物については、既存不適格という状態とされ、法律違反状態であってもおとがめがありません。
  • そのため千日デパートビルについても、建築から40年が経過し既存不適格状態となり、本来であれば設置が義務づけられる様々な消防設備がない状態であり、これが火災を大きくした原因のひとつとなっていました。

日本初のショッピングセンター

  • 千日デパートは、デパートという名前が付いていましたが、単体での百貨店ではなく、現在のショッピングセンターに近い施設でした。
  • 複数のテナントが商店街的に入居する形式となっており、例えば火災が発生した場合に、ビル管理者と入店しているテナントがどのように連携するのか、同連絡を取り合って消火活動や避難誘導をどう行うか、と言う点はあまり深く計画されていませんでした。
  • 千日デパート火災で生じた118名の死亡者は、全員がビルの最上階である7階に入居していたキャバレーの従業員およびお客であり、この災害発生時の連係の悪さも、被害を拡大した要因のひとつとなっていました。

出火から鎮火まで

  • 出火したのは、昭和47年5月13日、深夜22時半ごろのことでした。
  • 電気の配線工事が行われていた3階の現場から出火しました。
  • 出火から13分後に千日デパート側から119番通報がなされ、その3分後には消防の先着隊が到着し、繁華街にあったこともあり近隣の消防車両が続々と到着し、消火活動が行われました。
  • しかし、商品や内装に可燃物が多かったこと、そしてスプリンクラーや延焼を防ぐための各種消防設備が存在しなかったことから、炎は瞬く間に燃え広がり、出火から17分後あたりに、部屋全体が一気に燃え出すフラッシュオーバー現象が発止し、炎が一気に広がりました。
  • その後、煙はエレベーター、階段、空調のダクトをつたって上層階へ急速に広がり、7階にあったキャバレーには一切火災の連絡がないまま、気づいた時には煙に巻かれ、避難誘導もままならない状態となり、一酸化炭素中毒や、火災から逃げるための飛び降りによる転落などを死因に、118名の方が命を落とす結果となりました。

法律では命を守れない

  • 千日デパート火災の被害を多くした原因は様々ですが、建物が建った当時の法律に適合していれば、後の法改正で危険とみなされても、それを修正する義務がないという「既存不適格」という方針が、大きな要素となっています。
  • 既存不適格の建物は現在も多く存在しますし、またいわゆる大地震対策の基本である頑丈な家造り、震度6強の直撃をうけると即座に倒壊する可能性が高い、古い旧耐震基準の家も、この既存不適格という状態になっています。
  • 防災や命にかかわる法律というものは、守っていればよい、罰則を受けなければそれでよいというものではありません。命を守るための基準は、法律違反になるから守るのでは無く、死なないために守るべき基準なのです。
  • 耐震基準ギリギリの家を買う、法律違反ではないからといってハザードマップで浸水が想定されている場所の家を買う、それは自分の判断であり、とがめられることではありませんが、ぜひ今一度考えていただきたい項目でございます。

本日も、ご安全に!

ということで、本日は「千日デパート火災」のお話でした。

建物火災で命をまもるための最善の行動は、とにかく1秒でも早く逃げ出して外に避難することです。建物内で非常ベルの音を聞いた、煙の臭いを感じた、そうした異変を察知した際には、周りが行動を始めてから自分も動き出そうと考えず、ぜひ死なないために、第一行動者となるよう、日頃からイメージをしてみてください。

それでは皆さま、本日も引き続き、ご安全に!

サイト管理者・執筆専門家

高荷智也(たかにともや)
  • ソナエルワークス代表
  • 高荷智也TAKANI Tomoya
  • 備え・防災アドバイザー
    BCP策定アドバイザー

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