Voicyそなえるらじお #114『食品備蓄の基本は、水分・酸素・温度のいずれかを除くこと』
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執筆者:高荷智也
おはようございます!備え・防災アドバイザー高荷智也がお送りする「死なない防災・そなえるらじお」、5月17日(月)、本日も備えて参りましょう!
ドライマンゴー
本日のテーマは、「食料備蓄」のお話です。
私の趣味のひとつに「富士登山」があります。山に登る登山全般が好きなのではなく、富士山に登ることが趣味なのです。
- なぜ富士山なのか、最大の理由は、自宅から最も近い、高山だからです。
- 高い所が好きなので、山の展望台ですとか、ビルの展望室には好んで登りたがるタイプの人間なのですが、なんといっても富士山は日本で一番高い山。
- 自動車で気軽にアクセスできる5合目登山口ですら標高2,000m以上あり、大抵の場合はそこから雲海が広がって見えます。
- そこから頭を空っぽにして、ひたすら頂上を目指すという単純作業が好きで、毎年複数回の登山を続けています。
- 2013年頃から富士登山を始めて、すでに10回以上登っております。
- 一般人が富士山に登れるシーズンは、毎年7月10日頃の山開きから、9月10日ごろの閉山までの2ヶ月ほど、山小屋が開いているシーズンに限定されます。
- これ以外のシーズンについては難易度が跳ね上がるため、基本的に私を含めて一般人の富士登山は無理です。
- ただ、昨年2020年は新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響で、夏も富士山が閉鎖されてしまい、登ることができませんでした。
- 直近では第4派の波に襲われていたり、また先日、富士山富士宮口5合目のレストハウスが放火で全焼するなどの事件があったりと、はたして今年2021年のシーズンがどうなるか、ドキドキしております。
ドライフルーツ
- さて、そんな富士登山ですが、毎回いろいろな行動食をもっていきます。
- 山頂で食べるお弁当としては、どこでも温かい食事をとることができるセット、定番非常食であるレスキューフーズを持って行くのですが、
- 道中のカロリー補給として、チョコレート、羊羹、おせんべい、ドライフルーツなどをよく持って行きます。
- 昨日登山リュックを整理していた所、2019年に購入した、賞味期限が2020年までのドライマンゴーが出て来ましたので、食べて見ました。
- 賞味期限で言うと1年切れていましたが、香りもよく、味も良く、全く問題無く食べることができました。
- これは、ドライフルーツがもともと長期備蓄食として作られているためです。
水・酸素・温度
- 食品を腐敗させる微生物は、一定の水・酸素・温度がそろわなければ生きていくことができません。
- ということは、食品から、水・酸素・温度のいずれかを取り除くと、微生物が活動できなくなり、食品の腐敗を防ぐことができるようになります。
- ドライフルーツは、乾燥およびサトウ漬けにすることで、食品中の水分を減らして、長期保存ができるようにした食べ物です。
- 水分をなくす保存方法は色々あります。
- ドライフルーツと同じく砂糖を使って水分を減らせばジャムして長期保存ができるようになりますし、
- 砂糖ではなく塩を使えば、野菜であれば梅干しやたくあんを始めとする漬物が、
- 魚介類ならば塩からや新巻鮭などが、
- 肉類であればコンビーフやハムなどが塩で水分を減らして作られています。
- また、干物や燻製なども水分を減らした食品保存の方法です。
- これら、乾燥や塩・砂糖などを使う方法は、古代より行われてきた人類の知識で、まさに人類の歴史は食料備蓄の歴史である、という側面を表してきた技術であるといえます。
冷凍・脱酸素
- 食品から水分を減らす技術は古代より使われてきましたが、
- 酸素や温度を取り除く技術は、現代科学の進歩により近年もたらされるようになってきた方法です。
- 分かりやすいのは冷蔵庫・冷凍庫を使った保存。
- 特に冷蔵庫が普及するまでは、生鮮食品を広く流通させることは困難でしたが、今は当たり前の様に冷蔵庫を使った食品保存を行っています。
- また冷凍技術が進歩したことで、電力供給さえ継続できれば、半永久的な食品保存ができるようにもなっています。
- また酸素を取り除く方法としては、まずは軍隊の食料供給改善を目的に、瓶詰めや缶詰の技術が進歩しました。
- 調理した食べ物を瓶や缶に詰めて、高温で殺菌してフタを閉じれば、原理的には容器が壊れてそとから酸素が入ってくるまで、腐敗させずに維持することができます。
- また近年では、瓶や缶の代わりにアルミパウチに食品を入れたレトルト食品で、カレーやパスタソースなどを気軽に扱うことができますし、
- スナック菓子をいれた袋から、酸素を抜いて代わりに窒素ガスなどを入れることで、ポテトチップスなど酸化しやすい食べ物を長期間維持できますし、
- さらに脱酸素剤と併用することで、高温殺菌ができない生ものや水分の多い菓子類についても、常温で長期保存ができるようになっています。
- 私たち日本人が、食料飢饉や飢餓から開放され、いつでも好きな食べ物を得られる要になったのは、ごく最近のことです。
- しかしこうした当たり前の食生活は、災害ひとつで簡単に破壊されます。食料備蓄は特別なことではなく、ホモサピエンスならだれもが当たり前に行うべき生活の当たり前なのです。
本日も、ご安全に!
ということで、本日は「食料備蓄」のお話でした。
防災用に非常食を購入した際には、ぜひ、この食べ物は「水・酸素・温度」のどれを取り除くことで備蓄用になっているのだろうと、考えて見るとなかなか楽しいです。
それでは皆さま、本日も引き続き、ご安全に!