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Voicyそなえるらじお #118『避難勧告はなぜ廃止されたのか?過去の災害の経緯』

最終更新日:

執筆者:高荷智也

Voicyそなえるらじお #118『避難勧告はなぜ廃止されたのか?過去の災害の経緯』

おはようございます!備え・防災アドバイザー高荷智也がお送りする「死なない防災・そなえるらじお」、5月21日(金)、本日も備えて参りましょう!

災害対策基本法改正

本日のテーマは、「避難情報」のお話です。

  • 昨日5月20日から、大雨などの災害時に市町村が発表する避難の情報から「避難勧告」が廃止されて、「避難指示」に一本化されるなど内容が大きく変わりました。
  • …という内容のお話を昨日しましたが、早速初日から、熊本県などでは大雨による避難指示が発令されるなど、記録的に早い梅雨入りの影響を受けて、活躍して欲しくない仕組みが、全力で稼働を始めました。
  • 本日は、この避難情報に関する改正についての、すこしマニアックな雑談をお届け致します。

災害対策基本法

  • ところで、今回から新しくなった、「Lv3:高齢者等避難」「Lv4:避難指示」「Lv5:緊急安全確保」などの避難情報は、誰がどんな権限で発表するのでしょうか。
  • 避難情報は、街の権力者が、自らの特権を傘に、市民の逃げ惑う姿を楽しむために発表されるものではありません。そんなことをしたら、警察に逮捕されるでしょう。
  • 避難情報は、日本の法律に基づいて、自治体の市長・町長・村長が発表することになっています。
  • 1961年(昭和36年)に制定された法律に、「災害対策基本法」という法律があります。これは、1959年に発生した、現在も最悪の水害に位置づけられる、伊勢湾台風のあまりにも甚大な被害から、国民を守るために作られた法律です。
  • この法律の中に、次の様な条文があります。
  • 災害対策基本法 第六十条

    災害が発生し、又は発生するおそれがある場合において、人の生命又は身体を災害から保護し、その他災害の拡大を防止するため特に必要があると認めるときは、市町村長は、必要と認める地域の居住者、滞在者その他の者に対し、避難のための立退きを勧告し、及び急を要すると認めるときは、これらの者に対し、避難のための立退きを指示することができる

  • この条文を元にして行われるのが、「避難勧告」や「避難指示」だった訳です。
  • 以来60年にわたり、私たちを風水害から守るため、避難勧告や避難指示が出され続けて来ました。

平成30年西日本豪雨

  • 災害対策基本法は、その後も大きな災害が発生するたびに改正を繰り返し、よりよい法律になるよう整備されてきました。
  • また法律そのものではなく、関連する各種のガイドラインや決まり事なども合わせて整備され、避難情報などが私たちに、分かりやすく伝わるよう、様々な努力がなされて来ています。
  • 例えば、平成最後の年に、平成最悪の被害を生じさせた「平成30年7月豪雨」通称「西日本豪雨では、大雨特別警報が11府県に発表される記録的な大雨により、岡山県・広島県・愛媛県を中心に河川の氾濫、土砂災害等が多数発生し、死者・行方不明者が200名を超える大惨事となりました。
  • この甚大な被害を教訓として、「避難勧告等に関するガイドライン」が改訂され、はじめて5段階の警戒レベルが導入されました。
  • いま、ニュース報道などで、「大雨警戒レベル4・避難指示が発令されました」などの表現がなされますが、この警戒レベルが導入されたのが、2019年と最近のことなのです。

令和元年東日本台風

  • さらに、令和最初の年に発生した最悪の台風、令和元年東日本台風・台風2019年台風19号では、1都12県309市区町村に大雨特別警報が発表され、国および県が管理する河川において、142箇所が決壊するなど、同時多発、かつ広範囲に甚大な被害が発生しました。死亡者も100名を超えています。
  • しかし、これほどの被害をもたらす結果となった、記録的な台風の接近においても、避難をしなかった、あるいは避難が遅れたことにより命を落としたり、被災したりする方が多く生じました。
  • また、浸水した街の中を徒歩で避難する際に中に被災する高齢者の方が多発し、私たち住民の「自分の命は自らが守る」という意識が十分浸透していないことが明らかになったり、
  • また警戒レベルの運用で、避難情報が従来よりも分かりやすくなった一方で、本来避難を開始して欲しい、避難勧告ではまだ行動せず、同じレベル4である避難指示を待つ人が多いなど、警戒レベル4の中に、避難勧告と避難指示が混在していることが分かりにくい、という課題も浮き彫りになりました。

分かりやすく改訂された

  • このため、今回災害対策基本法が改正され、Lv3:高齢者等避難」「Lv4:避難指示」「Lv5:緊急安全確保」と表現が分かりやすくなりました。
  • また今回の改正では、明確に、警戒レベル4・避難指示の段階で危険な場合は避難を完了させましょうということが強調されています。
  • 警戒レベル5・緊急安全確保の段階では、避難場所などへ移動すると、マンホールに落下したり用水路に転落して死ぬ可能性があるなど危険なため、もはや立退き避難を諦めて、体に空のペットボトルを巻いて屋根によじ登るレベルですよと、そうした使い分けが強調されるようになっています。 

本日も、ご安全に!

ということで、本日は「避難情報」のお話でした。

  • これから、本格的な水害シーズンに入って参ります。Lv3:高齢者等避難」「Lv4:避難指示」「Lv5:緊急安全確保」をしっかり理解し、ぜひ命を守る行動のきっかけにできるようにしてください。
  • ちなみに本日のお話をさらに詳しくしたものを、YouTubeそなえるTVでも公開いたしますので、ぜひ合わせてご覧ください。

それでは皆さま、本日も引き続き、ご安全に!

サイト管理者・執筆専門家

高荷智也(たかにともや)
  • ソナエルワークス代表
  • 高荷智也TAKANI Tomoya
  • 備え・防災アドバイザー
    BCP策定アドバイザー

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