Voicyそなえるらじお #141『明治新山・大正池・昭和新山・平成新山』
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執筆者:高荷智也

おはようございます!備え・防災アドバイザー高荷智也がお送りする「死なない防災・そなえるらじお」、6月23日(水)、本日も備えて参りましょう!
明治・昭和・平成新山
本日のテーマは「火山の噴火」です。
- 本日6月22日は、北海道の昭和新山が噴火を開始した日です。
- 昭和新山は、北海道の壮瞥町(そうべつちょう)にある火山ですが、場所的には洞爺湖の南側にある、有珠山(うすざん)の隣にある火山と言ったほうが分かりやすいと思います。
- 昭和新山は世界でも珍しい火山なのですが、何が珍しいかと言えば、いままで平地だった場所に、ある日突然山ができた山、それが昭和新山です。
昭和新山
- 昭和新山は、噴火が起きるまでは広い麦畑などが広がる、田園地帯でした。
- ところが、太平洋戦争の末期、1944年(昭和19年)の初頭頃から、この田園地帯の周辺で地震や隆起活動が観測されるようになり、
- 77年前の本日、1944年6月23日に、噴火が始まりました。
- その後4ヶ月ほど噴火活動が続き、周囲の集落は壊滅して消滅し、火山灰などが、苫小牧・千歳・室蘭・登別など、周辺の都市に降り積もりました。
- 昭和新山が姿を現し始めたのは、噴火から約半年後、1944年の年末頃で、そこから約10ヶ月間ほどかけて、地面がモリモリと盛り上がり、巨大な溶岩ドームを作り、最終的には地表から175mも盛り上がり、標高で言えば398mの火山が、それまで何もなかった場所に、わずか1年数ヶ月ほどの期間で誕生したことになります。
- これが昭和新山の誕生です。
三松局長
- 昭和新山が生まれた1944年は、当然ながらスマートフォンはおろか、一般にカメラなどが普及している時代ではありません。
- また太平洋戦争のまっただ中ということもあり、自然災害をはじめとするネガティブな情報は、大本営の情報統制に引っかかり、広く広がらないという時代でした。
- ちなみにこれは、1944年12月7日に発生した、昭和東南海地震、前回の南海トラフ地震の情報も、やはり情報統制で広く報道されなかったという話があります。
- そのため、地上で新しい山が生まれるという一大イベントも、現在であれば多くの映像記録が残されそうですが、昭和新山についてはほとんど記録が残されて今戦。
- ところが、昭和新山については、奇跡が起きています。
- 昭和新山が生まれた北海道・壮瞥町(そうべつちょう)で郵便局長をされていた、三松 正夫(みまつ まさお)さんという方が、たまたまアマチュア火山研究家であり、昭和新山の溶岩ドームが隆起して山が作られる過程を、正確なイラストに残すという素晴らしい活動をされています。
- この資料は、ミマツダイヤグラムとよばれ、世界的にも、火山の記録に関する高い評価を受ける資料として現在まで伝えられています。
- 恐ろしい自然現象も、安全な場所から記録を残すことができれば、後々の防災対策などに役立てられる貴重な資料となります。スマホによる野次馬は避けるべきですが、貴重な自然現象に立ち会う機会があるならば、写真の一枚でも撮影をしておきたいと思うものです。
明治新山・大正池・平成新山
- ところで余談ですが、昭和新山があるなら、他の新しい山などもあるのだろうかと考えたくなります。
- いくつか、あります。
- まず、昭和新山の隣に、明治新山と呼ばれる山があります。
- 明治新山、本来の名前を・四十三山(よそみやま)は、1910年(明治43年)に、有珠山が噴火した際に形成された山です。明治43年に新しく生まれた山なので、四十三山と命名されています。
- さらに、大正山はありませんが、大正池と呼ばれる池が、長野にあります。
- 大正池は、長野県松本市の上高地にある風光明媚な池です。
- 1915年(大正4年)に長野県と岐阜県にまたがる火山、焼岳(やけだけ)が噴火を起こしましたが、この噴火によって生じた泥流が付近の川をせき止めて、そして誕生したのがこの大正池です。
- そして、平成新山もあります。
- 平成新山は、そなえるらじおの過去の放送でもご紹介したことがありますが、長崎県の雲仙火山にある、新しい山です。
- 雲仙普賢岳の大火砕流を引き起こした噴火は、1990年から1995年まで雲仙火山一帯で生じていましたが、この時に噴出した溶岩によりできた山が平成新山で、
- 雲仙火山の最高峰は、それまで普賢岳でしたが、現在はこの平成新山が、雲仙火山の最高峰となっています。ちなみに、長崎県の最高峰も元々は雲仙岳でしたので、火山活動によって生じた新しい火山、平成新山が最高峰を塗り替えるという記録も残しています。
本日も、ご安全に!
ということで、本日は「明治新山・大正池・昭和新山・平成新山」のお話でした。
人間から見ればあまりにも大きな火山ですが、地球レベルで見れば、地上にあるちょっとしたでこぼこに過ぎず、ある日突然崩壊して無くなることがあれば、逆に突如新しい山が生まれることもあります。
山は生きているという認識で、まさか噴火など起こるはずはない、避難などしなくても大丈夫、ではなく、最大限の安全行動を取ることが重要です。
幸か不幸か、今のところ令和新山はありませんが、明日、どこかに新しい山が生まれてもおかしくはありません。地震や台風だけで無く、身近で生じるかもしれない噴火災害という存在も、認識だけはして置くことが重要です。
それでは皆さま、本日も引き続き、ご安全に!