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Voicyそなえるらじお #127『時速100kmで迫る死の爆煙、1991年雲仙普賢岳・火砕流』

最終更新日:

執筆者:高荷智也

Voicyそなえるらじお #127『時速100kmで迫る死の爆煙、1991年雲仙普賢岳・火砕流』

おはようございます!備え・防災アドバイザー高荷智也がお送りする「死なない防災・そなえるらじお」、6月3日(木)、本日も備えて参りましょう!

大火砕流

本日のテーマは「火山の噴火」です。

雲仙普賢岳噴火

  • 本日6月3日は、ちょうど30年前に、長崎県島原半島の雲仙普賢岳で大規模な火砕流が発生した日です。
  • 雲仙普賢岳で最初の噴火が始まったのは、1990年(平成2年)の11月17日でした。山頂付近から噴煙が立ち上り噴火が始まり、その後は小規模な噴火と小康状態を繰り返しながら、噴火が徐々に拡大しました。
  • 噴火開始から約半年後、1991年の5月20日には溶岩流の噴出が確認され、火口付近に溶岩ドームが形成され始めました。
  • この頃になると、降り積もった火山灰などによる土石流が発生しはじめ、この土石流が流れ落ちるコースに当たる水無川流域に被害をもたらしました。
  • その後、次第に土石流が頻発するようになりましたが、島原市は水無川流域の住民に対して避難勧告を出すなどしたため、人的な被害は発生しませんでした。

メディア報道

  • 現在40歳以上の方の場合、30年前のテレビなどを通じて、雲仙普賢岳噴火のニュースや映像について見聞きしたことを覚えているかもしれません。
  • 次第に成長する溶岩ドームは、一部を崩落させて火砕流などを生じさせていましたが、この珍しい現象を取材するため、住民に対して避難勧告が出されていた地域内に、新聞社やテレビ局などのメディアが入り、取材合戦が繰り広げられました。
  • さらに、これほどの近距離で、火砕流の映像が記録されることも珍しく、多くの火山学者や関係者達も、メディアに混ざって避難勧告の対象地域内に入り、取材や撮影を行いました。
  • この際に集められた様々な映像資料は、現在も貴重なものとして多く残されています。

6月3日の火砕流

  • そして1991年(平成3年)の6月3日、午後15時半頃から、小規模な火砕流が頻発するようになり、16時8分、大規模な火砕流が発生
  • 火砕流本体から先行する火砕サージと呼ばれる爆風が、メディア関係者や取材陣の陣取っていた地域に流れ込み、戦後初の大規模な火山災害として記録される、43名の死者・行方不明者を生じさせる大惨事となりました。
  •  これが、雲仙普賢岳の大火砕流と呼ばれる現象です。
  • ちなみに、雲仙普賢岳という名称ですが、これは「長崎県の島原半島中央部」にある「雲仙火山」の最高峰が「普賢岳」であり、縮めて「雲仙普賢岳」と呼ばれていました。
  • なお、現在の雲仙火山の最高峰は、普賢岳ではなく、この噴火で新しく生じた「平成新山」に変わっておりますので、いまここから噴火した場合は、「雲仙普賢岳」の噴火では無く、「雲仙平成新山」の噴火…などと呼ばれることになります。

恐怖の火砕流

  • ところで、火砕流というのはどのような現象なのでしょうか。
  • 火砕流は、固体と気体が混合されている粉体流で、軽石・火山灰・岩片・火山ガスの混合体です。
  • 時速100キロを超える速度で疾走し、
  • 温度は数百度に達するため、経路上のものは全て焼き尽くされ、
  • 通過後は数m以上の堆積物で舗装され、文字通り何も残らなくなります。
  • さらに、火砕流本体から分離した高温体で、密度の低い「火砕サージ」と呼ばれる現象もあり、まず火砕サージが周囲を吹き飛ばしながら疾走し、その後本体である火砕流が全てを焼きつくし、埋め尽くしながら時速100kmで移動する、という恐ろしい現象が、火砕流です。
  • 火砕流や火砕サージは、基本的に巻き込まれたら死にます。雲仙普賢岳の火砕流では、この現象で43名の方がほぼ即死されました。
  • また火砕流は高温ですので、建物や車の中に逃げても焼け死んでしまうため、命を守るためには、巻き込まれる前に逃げるしかありません。
  • 噴火と同時に走って逃げることが、火砕流から身を守る唯一の方法となります。
  • あまり体験する機会はないと思いますが、
  • 雪が積もっている季節は、雪が大量に溶けて土石流となる融雪型火山泥流うに、また全ての季節において、火砕流に巻きこまれないように、とにかく山から離れることが重要になります。

本日も、ご安全に!

ということで、本日は「1991年の雲仙普賢岳・火砕流」のお話でした。ちょうど本日で30年目を迎えますので、ニュース番組などでも映像を見かけることがあるかもしれません。

遠くから見れば、火砕流はただの煙の固まりに見えますが、巻きこまれると100%死亡する恐ろしい自然現象です。そういう災害なのだという知識を、ぜひ頭の片隅においていただけると良いかと思います。

それでは皆さま、本日も引き続き、ご安全に!

サイト管理者・執筆専門家

高荷智也(たかにともや)
  • ソナエルワークス代表
  • 高荷智也TAKANI Tomoya
  • 備え・防災アドバイザー
    BCP策定アドバイザー

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