Voicyそなえるらじお #131『火山の冬にどう備えるか?避難と備蓄について』
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執筆者:高荷智也

おはようございます!備え・防災アドバイザー高荷智也がお送りする「死なない防災・そなえるらじお」、6月9日(水)、本日も備えて参りましょう!
個人も国家も備蓄をしよう
本日のテーマは「火山の冬への備え」です。
平成の米騒動から人類滅亡まで
- 昨日 #130 の放送では、過去の大規模噴火で生じてきた「火山の冬」という現象についてお話をいたしました。
- 小規模な火山の冬であれば、例えば1993年の日本辺りに冷夏をもたらしてお米の収穫量を減らし、平成の米騒動をもたらしたり…
- 大規模な火山の冬であれば、例えば7万4千年前の人類・ホモサピエンスを滅亡寸前に追いやったり…
- 大なり小なり、人類に危機的な状況をもたらすのが「火山の冬」と呼ばれる、気温の低下・紫外線量の増加などの現象です。
VEI6の噴火
- そこに災害があるならば、備えなければなりません。
- 次の「火山の冬」はいつ発生するのでしょうか。
- 小規模なものから大規模なものまで含まれば、それは明日かもしれませんし、1万年後かもしれません、というレベルの話となります。
- 最も最近に発生した火山の冬は、前回・前々回の放送で取り上げた、1991年の「フィリピン・ピナトゥボ山噴火」による気温の低下です。
- ただ、これは火山の冬現象としては比較的小規模なものでしたので、例えば日本などではお米が買いづらくなる、という程度の被害で済んだとも言えます。
- ただ、これは、日本が当時世界第二位の経済力を持っていた金持ち国家であったという背景もあります。
- 外貨を保有する国家であれば、多少の食糧危機は、お金の力で解決することができます。しかし外貨を保有していない国であれば、大きな被害を受けるということにもなります。
- そこそこの規模の火山の冬であれば、多少の備蓄や、セーフティーネットの整備で乗り越えることができるということになります。
VEI7の噴火
- 記録に残る火山の冬現象で最悪だったものは、1815年に発生した、インドネシア・スンバワ島にあるタンボラ火山の巨大噴火によるものです。
- VEI・火山爆発指数はフィリピン・ピナトゥボ山噴火を上回る「7」で、火山の周辺はもちろん、地球規模の気候にも火山の冬現象で影響を与えました。
- アメリカやカナダでは6月に雪が降り、霜や吹雪で農作物が大きな被害を受けました。
- 中国でも冷夏によりお米や農作物が被害を受け、日本でも各地で不作となり年貢米の収穫量減少が記録されているそうです。
- この影響は数年間続いたということですが、日本の場合は過去の大飢饉を教訓とした江戸幕府の救済案が上手く働いたこと、冷害に強いサツマイモの栽培などが普及していたことから、致命的な飢饉には到りませんでした。
- またこのタンボラ火山の巨大噴火と同じレベルの噴火は、日本でも定期的に発生しています。
- 最も最近に発生したのは、7,300年前、九州・鹿児島の南にある「鬼海カルデラ」の巨大噴火です。
- この噴火のVEI・火山爆発指数は「7」、噴火当時の日本は縄文時代、九州にも縄文文化が広がっていましたが、この噴火による大規模な火砕流の影響で、九州南部の縄文文化は一度滅亡しました。その後千年ほどかけけ九州の森林が復活し、縄文人の定住がやり直されたという経緯があります。
- この噴火による火山灰は東北より南の広い地域で観測することができ、恐らくは火山の冬現象も生じていると思われます。
- そして日本の場合、このクラスの巨大噴火はおおよそ7千年から1万年に1度程度のペースで発生しており、前回の噴火がこの7300年前の鬼海カルデラの噴火ですので、周期的には明日、巨大噴火が発生してもおかしくないとされています。
火砕流から事前に逃げる
- 1815年のインドネシア・タンボラ山の噴火、
- 7000年前の日本・鬼海カルデラの噴火、
- このクラスの巨大噴火が発生した場合、どのような対策が取れるのでしょうか。
- まず、火山の近隣数十キロから数百キロ圏内、具体的に言えば火砕流が到達する地域に関しては、これを逃れるすべはありません。
- 噴火と同時に時速100km以上で飛んで逃げなければ、火砕流・火砕サージからは逃げ切れないためです。
- ただ、このクラスの巨大噴火が、ある日突然生じる可能性は低く、恐らくは事前に噴火の警告が出ます。
- この段階で、素早く避難ができるかどうか、これが唯一できる備えの手段となります。ギリギリまで様子見、をすると火砕流に巻きこまれて100%死亡してしまうのが、巨大噴火の恐ろしさです。
防災備蓄をがんばる
- もうひとつの脅威は火山灰の影響と火山の冬による気温の低下です。
- VEI7以上の巨大噴火が生じた場合、火砕流の影響をまぬがれた半径数百キロ以上の地域にも、大量の火山灰が降り積もります。
- これが夏場に生じた場合、農作物はもれなく全滅することになりますので、局地的な食糧不足がダイナミックに発生することになります。
- また、火山灰の影響をまぬがれた地域についても、火山の冬の影響で農作物の収穫が激減する恐れがあるため、海外から食料品を輸入しようとしても、手に入らなくなる可能性があります。
- これに個人で備える為には、備蓄しかありません。ワンシーズン、食料の入手がゼロとは言いませんが、かなり少ない状態になることを見越した備蓄が必要です。
- 具体的にどのくらいの量が必要になるかを、事前に推定することは困難ですので、日常生活に影響を与えない範囲、無理のない範囲の最大限の備蓄を、日常備蓄で行うということになります。
- お米・パスタ・乾麺などを中心とした主食類を可能な範囲で備蓄、
- 缶詰・レトルト・フリーズドライ・インスタント食品を可能な範囲で備蓄、
- また野菜や生鮮食品の入手が難しくなるため、ビタミン&ミネラル錠剤などはある程度防災専用になってでも、ワンシーズン分以上を備蓄。
- その他嗜好品全般も、日常備蓄で消費できる量を普段から備蓄。
- また塩・砂糖・蜂蜜などの、賞味期限が実質無限となる調味料については、物置や床下などを活用して少し多めに備蓄。
- これらを、無理のない範囲でがんばるしかないのが、火山の冬に対する備えと言うことになります。
- なお、ライフラインへの影響については、火山灰が大規模に降り積もる地域は、停電・断水・交通マヒなどが生じる恐れがありますので、正直このなかで数ヶ月の生活は無理です。噴火と同時に遠方避難をする必要があります。
- 火山灰の影響をまぬがれた場合、恐らく日本政府はライフラインの維持に全力を注ぐことになります。停止中の原子力発電所などをフル稼働に持って行きつつ、電力と水道網の維持を最優先とするのではないかと想定されます。
VEI8の超巨大噴火
- 一方、個人の力では対策ができない規模の火山の冬もあります。
- それが、昨日ご紹介した、人類が滅亡寸前に追い詰められた、7万4千年前の、インドネシア・トバ火山の超巨大噴火、VEI・火山爆発指数8クラスの噴火です。
- このクラスの噴火、直近では、アメリカのイエローストーン国立公園でこのクラスの超巨大噴火が生じる可能性が指摘されており、タイムスケールで言えば、それはあすかもしれないし、1万年後かもしれない、というレベル感です。
- この希望の噴火による火山の冬、数年間にわたって世界が冬になる、という現象に、一般人が個人の力で備えることは困難です。
- 国家による計画的な備蓄、大規模な工場による食料生産の体制作り、そして原子力発電所などを中心としたエネルギー源の確保などが必須となります。今日や明日の取り組みでどうにかなる話ではありませんので、
- 安全保障政策の一環として、長期にわたり取り組まなければならない課題となります。
本日も、ご安全に!
ということで、本日は「火山の冬に対する備え」のお話でした。
基本的には防災備蓄なのですが、これは火山対策だけではありません。大地震や水害、パンデミックなどにも有効な対策です。家庭の備蓄は、特定の災害だけを対象にするのではなく、何かの理由でモノが手に入らなくなったら、という考えをスタート地点にすることが重要です。
そして防災備蓄は瞬間ではなく、一生涯続くライフスタイルですので、無理のない範囲でじっくり取り組むことが前提となります。
それでは皆さま、本日も引き続き、ご安全に!