Voicyそなえるらじお #155『地震大国ゆえに生まれた貴重な岩石、日本の国石ヒスイの話』
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執筆者:高荷智也
おはようございます!備え・防災アドバイザー高荷智也がお送りする「死なない防災・そなえるらじお」、7月13日(火)、本日も備えて参りましょう!
糸魚川ジオパーク vol.1
本日から数回シリーズで、2009年8月に、日本で初めて、ユネスコが支援する「世界ジオパーク」に認定された、新潟県糸魚川市を舞台とした、日本列島の形成と、縄文文化のお話をいたします。シリーズ・糸魚川ジオパークです。
- 6月末に、とあるお仕事の依頼を受けまして、新潟県糸魚川市へ一泊二日で訪問してきました。糸魚川には、今後もちょくちょくお伺いすることになりそうです。
- さて、この糸魚川は、日本で初めて「世界ジオパーク」に認定された地域です。世界ジオパークとは何でしょうか、文部科学省の説明によると、以下の通り。
- 「ユネスコ世界ジオパーク」は、国際的に価値のある地質遺産を保護し、そうした地質遺産がもたらした自然環境や地域の文化への理解を深め、科学研究や教育、地域振興等に活用することにより、自然と人間との共生及び持続可能な開発を実現することを目的とした事業です。ユネスコの国際地質科学ジオパーク計画(IGGP)の一事業として実施されています。
- 2021年4月現在、日本には、「日本ジオパーク」が現在43箇所存在し、そのうち9地域については、「ユネスコ世界ジオパーク」に認定されています。
- 具体的には、北海道の洞爺湖有珠山ジオパーク、同じく北海道のアポイ岳ジオパーク、静岡県の伊豆半島ジオパーク、山陰海岸ジオパーク、島根県の隠岐ジオパーク、高知県の室戸ジオパーク、熊本県の阿蘇ジオパーク、そして長崎県の島原半島ジオパーク、そして本日お話しする、新潟県の糸魚川ジオパークです。
糸魚川ジオパークについて
- 糸魚川市内には、地質・文化・歴史を感じることができる「ジオサイト」と呼ばれるスポットが、24箇所整備されていますが、糸魚川ジオパークを構成する要素は大きく3つに分けられます。
- ひとつは、日本の国の石「国石」にも認定されている「翡翠(ひすい)」にまつわるスポット。
- もうひとつは、日本列島を東西に分断する地層、フォッサマグナと、これの西側を構成する、糸魚川・静岡構造線と呼ばれる断層体にまつわるスポット。
- そしてもうひとつが、糸魚川市内に多数存在する、特徴的な山間部の地形や暮らしにまつわるスポットです。
- 本日から数回のシリーズで、「ひすいと、フォッサマグナ、と縄文文化」にまつわるお話をいたします。
ひすいとフォッサマグナと縄文文化
- 糸魚川市内には何カ所かの縄文時代の遺跡が存在します。
- ちなみに余談ですが、国内には縄文時代の遺跡が、約9万箇所存在します。大きな物から小さな物まで含まれての総数ですが、9万箇所も遺跡が見つかっているというおは、世界的にもかなり高密度なことであり、日本の場合、縄文遺跡の存在自体はそれほど珍しい物ではありません。
- さて、なぜ糸魚川の縄文遺跡が、ジオパークという形で注目されるのかと言えば、それは日本、および正解でも有数の「ひすいの原産地かつ加工に関する一大拠点」であったからです。シリーズ・糸魚川ジオパーク、本日はこのヒスイのお話です。
ヒスイは地下からやってくる
- ヒスイは、一般的なイメージでは、緑色をした半透明の宝石ですが、実際には緑だけではなく、白色、ラベンダー色、青色、黒色など、色々な色のヒスイが存在します。
- ヒスイの特徴は、非常に頑丈なことです。そのため、ヒスイを使うことで、他の石を砕き、高品質な石器を効率的に作ることができます。これが、糸魚川の縄文遺跡が注目されている理由の一つです。
- ところでヒスイという岩石は、地球のどこでも取れる石ではありません。ヒスイが生成される場所は、プレートの沈み込み帯周辺と考えられていますが、日本は世界でも有数の地震大国、そしてこの地震を引き起こす要因の一つが、プレートの沈み込みです。日本列島という場所は、世界でもヒスイが生成されやすい場所であると言えます。
- 大地震という自然の驚異と共存しているからこそ得られる、大自然の恵みのひとつがヒスイということになるのです。
- とはいえ、ヒスイが生み出されるプレートの沈み込みたいとは、海底はるか奥深くの地球の内部であり、通常であればまず掘り出すことはできません。
5億年前
- 現在糸魚川で産出されているヒスイが生み出されたのは、今から5億年ほど前と想定されています。この頃はまだ日本列島は存在していません。地球はかなり海面が多い時代で、陸地と言えばローラシア大陸とゴンドワナ大陸の二つ、生物で言うと三葉虫が天下を取っていた時代です。
- この頃、大陸プレートと海洋プレートの境界、5億年後に日本列島が生まれる地域の地下深く、超高温高圧の環境下でヒスイが作られていたのですが、地面の底の話ですので、まだ誰の目にも、三葉虫の目にもヒスイは触れていませんでした。
3億年前
- その後時間が経過し、約3億年前、地下深くで作られたヒスイは少しずつ地面に向かって上昇を始めます。まだ日本列島は存在せず、陸地で言えばパンゲア大陸が地球唯一の陸地として広がっていた時代で、ペルム紀と呼ばれる頃。
- 生物で言えばいまだ三葉虫が反映し、また恐竜の子孫や、哺乳類の子孫なども現れ始めた時期です。ちなみに余談ですが、このペルム紀の終わりに、スーパープルームと呼ばれる超大規模な火山活動が発生し、地球史上最大規模の大量絶滅が発生し、全生命体の90%から95%ほどが絶滅したと想定されています。
2.5~2億年前
- さらに時間が経過して今から2億5千年から2億年ほど前、プレートの動きにあわせて、地下で生成されたヒスイが地上付近まで持ち上がってきます。時代で言えば三畳紀からジュラ紀、まさに恐竜の時代のことです。
- それ以降、地下深くで作られたヒスイが地上付近に存在するのですが、それだけでは簡単にヒスイを入手することはできません。糸魚川にヒスイが産出するもうひとつのポイントが、日本列島の形成と、フォッサマグナという存在なのです。
本日も、ご安全に!
ということで、本日は「シリーズ糸魚川ジオパーク」で、ヒスイの生成に関するお話でございました。
火山があれば温泉が得られる、海溝型の巨大地震が起こる地域では、品質の高いヒスイが得られる…かもしれない。ということで、災害は脅威である一方で、恵みを与えてくれる存在でもあります。
次回は、ヒスイと縄文文化と防災のお話をしたいと思います。
それでは皆さま、本日も引き続き、ご安全に!