Voicyそなえるらじお #159『北海道・渡島大島の山体崩壊と津軽海峡を襲った巨大津波』
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執筆者:高荷智也
おはようございます!備え・防災アドバイザー高荷智也がお送りする「死なない防災・そなえるらじお」、7月19日(月)、本日も備えて参りましょう!
津軽海峡沖に浮かぶ渡島大島
本日は、「火山の噴火による大津波」のお話です。
- 本日7月19日は、北海道にある無人島、渡島大島(おしまおおしま)が噴火し、山体崩壊を起こし、大津波を発生させた日です。
- さて、津軽海峡に、渡島大島という無人島があります。
- 場所で言いますと、
- 北海道・奥尻島の南60km
- 北海道・函館市の西120km
- 青森県・青森市の北西140km
- 辺りに浮かんでいます。無人島で、通常人は立ち入らない島ですので、聞いたことがないという方も多いのではないでしょうか。
渡島大島の噴火と大津波
- 渡島大島は、1741年(寛保/かんぽう元年)7月に噴火が始まり、北海道や青森では火山灰の降灰が観測されました。特に火山灰が多く降った村落では、昼もくらい状態となり、あんどんなどをともしたという記録が残されています。
- そして噴火が始まってから一週間ほどが経過した、1741年7月19日、旧暦では寛保元年の8月29日、未明から夜明けに掛けて、突如大津波が発生しました。
- この津波は、渡島大島から近い北海道の西岸と、青森県の津軽半島西岸では特に大きな被害を出し、場所によっては10mを超える巨大な津波に襲われています。
- また、津波被害は北海道と青森だけでなく、山形、新潟、金沢の能登半島、そして福井の若狭湾など、日本海の広い地域でも津波が到達しています。
- この大津波では人・建物・船舶などに大きな被害が発生しました。
- 例えば北海道の松前藩が江戸幕府に報告した数字では、1467名が死亡と伝えていますが、全ての家屋が流されて壊滅した集落が多数あったり、アイヌや一時的な滞在者の被害は漏れていたりということで、実際にはより多くの被害が生じていたと考えられています。
- ちなみに、本日お話している内容は、千葉大学・大学院理学研究院の、津久井雅志教授がまとめた資料、渡島大噴火史料集を参考にさせていただいております。
渡島大島の山体崩壊
- 渡島大島の大津波の原因は、山体崩壊であると推定されています。
- ところでこの原因、大津波が発生したことは確実なのですが、それが大地震によるものなのか、噴火の影響によるものなのかは、長い間不明とされていました。
- ところが近年、渡島大島周辺の海底地形の調査が行われ、どうやら噴火により火山の山体が崩壊し、その影響で大きな津波が発生した、ということが明らかになりました。
- 渡島大島、海面からの標高は730mほどの、それなりにおおきな火山ですが、海底からの高さで言えば2,300mとなり、かなり大きな山体を持っていました。
- そして、1741年の噴火の影響で、地上および海面を含む2.4立方キロという巨大な範囲が崩壊、山体崩壊を起こし、岩石雪崩が発生、膨大な土砂が一気に海面になだれ込んだことで、大地震を伴わない、巨大な津波を発生させました。
- 津波を生じさせるほどの大地震が発生した場合、かなり離れた地域でも揺れを観測できますので、避難を開始することができますが、
- 山体崩壊の場合、それを直接観測するすべがないと、離れた場所では発生に気づけないこともあり、津波の不意打ちを受け、大きな被害につながる恐れがあります。
山体崩壊による大津波
- 山体崩壊による大津波の発生は、過去にもしばしば発生しています。
- 当チャンネルそなえるらじおでもご紹介したことがありますが、例えば1792年に長崎県の雲仙火山のひとつ「眉山(まゆやま)」が山体崩壊を起こし、大量の土砂が有明海に流れ込んだことで、対岸の熊本県側に巨大津波が襲来、さらに熊本側に到達した津波が海岸で跳ね返って、今度は崩壊した島原半島側も大津波に襲われるという、大惨事が生じています。
- また、世界の観測史上最大規模の津波は、大地震ではなく山体崩壊で発生したもので、これは1958年にアメリカ合衆国のアラスカ州、リツヤ湾という場所で生じました。大きな地震によりリツヤ湾の奥にある斜面が大規模に崩壊し、津波が発生、津波の最大遡上高さはなんと500m以上と、想像もできないような規模に達しています。
本日も、ご安全に!
ということで、本日は「1741年の北海道・渡島大島の山体崩壊と大津波」に関するお話でした。
津波は大地震以外でも発生する、とくに山体崩壊で生じる津波は想定外の巨大津波をもたらす可能性がある、というメカニズムは、ぜひ知っておいていただきたい知識です。
それでは皆さま、本日も引き続き、ご安全に!