Voicyそなえるらじお #160『防災対策に不可欠な人工衛星と、これを破壊するスペースデブリ』
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執筆者:高荷智也
おはようございます!備え・防災アドバイザー高荷智也がお送りする「死なない防災・そなえるらじお」、7月20日(火)、本日も備えて参りましょう!
スペース・デブリ問題
本日は、「人工衛星とスペースデブリ」のお話です。
- 本日7月20日は、いまから52年前の今日、1969年7月20日に、アメリカの宇宙船、アポロ11号が月面に着陸した日です。
- 「これは一人の人間にとっては小さな一歩だが、人類にとっては偉大な飛躍である」、アポロ11号のアームストロング船長の有名な言葉ですが、私個人的には、このアポロ11号の月面着陸が、人類の成し遂げた様々な偉業の中で、ナンバーワンだと思っております。
- 人類が素手では太刀打ちできない動物は地上にたくさんいます。人類がたどり着けない深海にも生物がいます。大災害が起こって人類が滅亡しても、おそらく何かしらの生命体は生きのびるでしょう。
- しかし、地球から他の天体へ移動することができる生命は、人類しかいません。この第一歩となった月面着陸は、人類が地球上の他の生命体と決定的に異なる、ということを示した意味で、偉大な功績であると思っています。
スペース・デブリ
- ところで、人類が始めて人工衛星を打ち上げたのは1957年のことで、ソビエト連邦のスプートニク1号が初めての人工衛星となっております。
- ここから人類が月面にたどり着くまで、わずか12年ですから、この頃の宇宙開発競争は本当に激烈だったということがよく分かります。
- ちなみに、このスプートニク1号が打ち上げられた1ヶ月後には、早くもスプートニク2号が打ち上げられましたが、この時には犬が乗せられました。世界で初めて宇宙を飛んだ生物は、犬だったのですね。
- さて、この宇宙開発が始まった時代から現代まで、徐々に大きくなっている問題があります。それが宇宙のゴミ問題、スペースデブリです。
- スペースデブリは、耐用年数を超えたり呼称したりして動かなくなった人工衛星や、打ち上げに使われたロケットの本体などの大きなものから、これらのデブリ同士が衝突して、砕けて、細かくなったデブリなど様々なものが存在します。
- スプートニク1号の打上以来、世界各国では数千回を超えるロケットの打ち上げが行われてきていますが、そのたびに少しずつスペースデブリが増加しています
- スペースデブリは、最終的には地球の引力にひかれて落下し、大気圏で燃えて無くなりますが、現状はデブリがなくなるペースよりも、増えるペースの方が遙かに早く、加速度的にこの宇宙ゴミが増え続けている状態です。
- なぜこの宇宙ゴミが問題なのか、それはスペースデブリが、他の人工衛星や宇宙船を破壊する原因となるからなのです。
地球に閉じ込められる人類
- スペースデブリは、秒速数キロ、時速に直せば数万キロの速度で宇宙空間を移動しています。スピードが早い物体は大きなエネルギーを持ちますので、わずか10cmほどのスペースデブリが宇宙船や人工衛星に衝突した場合、相手を完全に破壊してしまう恐れがあります。
- さらにマズいことに、破壊された宇宙船や人工衛星は、そのバラバラになった破片が新たなスペースデブリとなり、また別の宇宙船や人工衛星を破壊する原因となる。まさに連鎖的にスペースデブリが増加する恐れがあるのです。
- JAXAの資料によれば、2020年現在、宇宙船や人工衛星を一撃で破壊するおそれのある、大きさ10cm以上のスペースデブリの数は、おおよそ2万個存在し、
- 衝突すれば機能停止につながる恐れのある、1cm以上のデブリの数は50万から70万個以上、
- また、衝突すれば機械の故障につながる恐れのある、1mm以上の小さなデブリのかずに到っては、1億個以上が、地球の周囲を回っているとされています。
- このスペースデブリを除去する計画もさまざまに考えられていますが、なにしろ宇宙空間の話ですし、1億個以上もある数ミリのデブリを全て除去するためには、現在の技術では到底どうにかできるものではなく、抜本的な解決方法はまだ生まれていません。
人工衛星
- 防災対策においても、人工衛星は欠かせない存在です。
- 例えば気象衛星ひまわり、現在はひまわり8号が気象観測を行っていますが、すでにひまわり9号の打上が完了し、いつでも交代できるように待機しており、来年22年からはひまわり9号が気象観測を開始する予定となっています。
- かつての日本では、毎年の台風で数千名以上の死亡者を発生させる状況が多く発生していました。気象観測網が充実していなかったころは、台風が不意打ちで接近、気づいた時には大雨や高潮が発生し、避難する間もなく洪水や土砂災害が発生する、ということが多く発生していたのです。
- しかし、1977年にひまわり1号が打ち上げられ、宇宙からの気象観測が本格化すると、台風の不意打ちは無くなりました。現在は、いつ・どこに・どのくらいの台風が来るのか、ほぼ予知並みの精度で予測できるようになっていますが、こうした気象観測には人工衛星が絶対に欠かせません。
- また、各種の自然災害や大事故が発生した際には、人工衛星による緊急観測で撮影やデータの取得が行われます。これには現在、JAXAの人工衛星「だいち2号」や、NECが保有するレーダー衛星「ASNARO-2」などが活躍しています。
- さらに緊急時の連絡には衛星通信が不可欠ですし、スマートフォンで現在地をしって避難先を把握するためにはGPS衛星が必要です。
- これら、日常生活にも、防災対策にも不可欠な人工衛星、また究極の防災対策である宇宙進出には、スペースデブリ問題への対応が不可欠であると言えます。
スターリンクもある
- ちなみに、先日の放送でもお話をした、アメリカの宇宙開発ベンチャー・スペースX社では、今年の8月から、北極と南極を除く全世界で、衛星ブロードバンドサービス「スターリンク」を開始する予定なのですが、
- このスターリンクというサービスは、なんとスペースX社が打ち上げて、1,800基を超える人工衛星による濃密な通信回線で構成されています。また、最終的には、この人工衛星を12,000機まで増加させる計画となっています。
- スペースX社が単独で打ち上げる累計1万機以上の人工衛星は、これまで人類が世界中で打ち上げた人工衛星の数を超えます。宇宙開発は国家プロジェクトだけでなく、民間企業が行う時代になって来ているという象徴ですが、
- つまりまたスペースデブリが爆発的に増大する可能性も秘めている訳で、宇宙も、地球も、ゴミ問題の解決無くして先に進むことはできないのだ、ということを深く考える必要があると言えそうです。
本日も、ご安全に!
ということで、本日は「スペースデブリと人工衛星」に関するお話でした。
避難所生活や自宅での在宅避難で最も重要なことのひとつは、トイレ対策です。非常食を食べたらゴミ回収が始まるまで、自宅にゴミを保管する必要があります。また大規模な自然災害でも、大量のガレキ・ゴミ廃棄の問題が生じます。
防災対策を考える際には、ゴミ問題が大変重要です。これは地上も、宇宙も、変わらないということですね。
それでは皆さま、本日も引き続き、ご安全に!