Voicyそなえるらじお #161『大地震の二次災害・群衆雪崩から命を守るための準備』
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執筆者:高荷智也
おはようございます!備え・防災アドバイザー高荷智也がお送りする「死なない防災・そなえるらじお」、7月21日(水)、本日も備えて参りましょう!
群衆雪崩と帰宅困難
本日は、「群衆なだれと帰宅困難」のお話です。
- 本日7月21日は、ちょうど20年前の本日、明石花火大会歩道橋事故が発生した日です。
- 2001年(平成13年)7月21日、兵庫県明石市の、JR神戸線・朝霧駅の南にある海岸、明石市大蔵海岸で花火大会が行われていました。
- この会場と最寄り駅であるJR朝霧駅は、大きな歩道橋でつながれていたのですが、駅から会場へ向かう客と、会場から駅へ向かう客が合流し大変な混雑となり、群衆雪崩と呼ばれる現象が発生し、子ども9名を含む11名が死亡、247名が負傷するという大惨事となりました。
- このお話は、そなえるらじおの #70 の放送でもお話をしておりますが、改めてご紹介をしたいと思います。
明石市花火大会
- 本日でちょうど20年目となります、明石花火大会歩道橋事故、どのような事故だったのでしょうか。
- この事故の原因は「群衆雪崩」と呼ばれる現象です。
- 群衆雪崩は、別名を将棋倒しやドミノ倒しなどと呼ばれる現象ですが、狭い場所に人が集中した状態で、誰かがバランスを崩して転倒すると、周辺の人も連鎖的に転倒し、群衆雪崩が発生します。
- 通常であれば、転んだ人は起き上がることができますが、群衆雪崩が発生している状況では、人が多すぎて隙間が全く無いため、転倒したら最後、次から次へと人が重なりあい、強い力で押され、最終的には圧死・窒息死してしまうという最悪の事故です。
- 明石花火大会歩道橋事故の場合は、わずか1平方メートル、畳半畳分程度の空間に10名以上の人が集中するという尋常ではない混雑となり、特に多くの子どもが犠牲となる大惨事を招きました。
- 事故発生から20年目という時期を受け、改めて、犠牲となられた方々のご冥福をお祈りいたします。
- ちなみに余談ですが、明石花火大会歩道橋事故の際にも、将棋倒しという表現が使われていましたが、日本将棋連盟からイメージが悪いため使わないで欲しいとの講義が入り、現在は将棋倒し・ドミノ倒しなどの表現は使われないようになっています。ただ、イメージとしては分かりやすいため、そんな感じの事故なのだということは知っておいてもよいかと思います。
群衆雪崩は大地震でも発生する恐れが
- ところで、この群衆雪崩は、人が集中する場所であればどこでも発生する可能性があり、階段やエスカレーターなどでも発生することがある事故です。文字通りの人災と言えるべき悲惨な事故と言えます。
- また、群衆雪崩は、他の自然災害の二次災害としても発生する可能性があります。特に、いつ発生してもおかしくない首都直下地震など、大都市直下の大地震では、その二次災害として群衆雪崩の発生が想定され、対策が求められています。
- 昨今は新型コロナウイルス感染症の影響でリモートワークをされているかたも増えていると思いますが、それでも都心のオフィスではいまだ多くの方々が仕事をしています。
- このような状況で、例えば首都直下地震が発生し、3.11東日本大震災と同じように公共交通機関が停止すると、多くの方々が帰宅困難者となり、3.11の経験を生かして、徒歩で帰宅しようとする方も多く発生することが想定されていいます。
- しかし、首都圏が直接的な被災となっている場合は、3.11の時とは状況がことなり、多くの場所で道路やビルや建物が破壊され、火災が発生し、状況によっては停電も生じて暗闇となり、また余震が起こるたびに頭上からビルの外壁や窓ガラスなどのガレキが落下してくる可能性があります。
- こうした状況で、道路を埋め尽くすほどの帰宅困難者が発生すると、もう前にも後ろにも進むことはできません。また屋外がこのような状況になっていることが分からず、家族との安否確認ができなかった方々がさらにビルなどから次々と路上に流れてくると、あらゆる屋外が人で埋め尽くされてしまいます。
- この状態で、大きな余震が発生すると、少しでも安全そうな場所を求めて人々が逃げだそうとしますが、身動きが取れない状況ですので、誰かがその場で転倒しようものならば、次々と周囲の人も転倒し、また空いた空間には避難しようとする人が押しかけてさらに人が集中、群衆雪崩の発生です。
- こうした状況が、東京都内の至る所で発生する可能性があると想定されています。群衆雪崩は大地震による二次災害のひとつなのです。
群衆雪崩から命を守るためには
- では、群衆雪崩から命を守るにはどうすればよいでしょうか。基本的に巻きこまれてしまってからの対策は難しく、根本的にはできるだけ人混みに入らないようにすることが重要です。
- また首都直下地震などの大地震が発生した場合、危険な災害は群衆雪崩だけではありません。特に大地震直後は余震やより強い地震が発生しやすい状況になっていますので、できるだけ建物の中に留まるのが安全です。
- 仕事や遊びで都心部に外出している時、今自分がいる建物が倒壊したり、火災が発生したりしていなければ、周囲の安全が確認できるまではその場に留まる。むやみに徒歩帰宅を開始しない様にすることが重要です。
- そのため、都心にある企業などは、室内の地震対策や3日分程度の防災備蓄に努めていますが、まずは皆様の会社が、そうした防災備蓄品などを準備されているか確認してみてください。
- また会社の備蓄品は、どうしても予算や保管スペースの都合、潤沢な物にはなりません。数日間オフィスなどで過ごすとして、たりない物がある場合には、個人用の備蓄品として会社に置いておくと良いでしょう。
- さらに、家族の安否確認が取れない場合、外が危険であっても徒歩で帰宅しようとしたくなりますが、これを防ぐために、スマートフォンアプリなどを使った、非常時の連絡方法を家族で決めておくことも重要です。
- 徒歩帰宅者が少なくなれば、自宅に介護をしている人がいる、赤ちゃんがいる、などどうしても歩いて帰らざるを得ない方々の安全性を、少しでも高めることができますし、路上を歩く人が減れば、緊急車両なども通行しやすくなりますので、人命救助や消火活動も迅速に行える様になるのです。
本日も、ご安全に!
ということで、本日は「群衆雪崩と帰宅困難」に関するお話でした。
ちなみに、個人的な群衆雪崩対策として、できるだけ階段を使うようにする、ということを心がけています。エスカレーターは人間を強制的に移動させる装置ですので、降り口で人が詰まるとそのまま群衆雪崩に直結する恐れがあるためです。隣に階段があり、階段の移動に問題がなければ、健康とリスク回避のため、歩くという選択肢を積極的に取り入れるのもオススメです。
それでは皆さま、本日も引き続き、ご安全に!