Voicyそなえるらじお #163『夏の酷暑という災害による、1987年の首都圏大停電』
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執筆者:高荷智也
おはようございます!備え・防災アドバイザー高荷智也がお送りする「死なない防災・そなえるらじお」、7月27日(火)、本日も備えて参りましょう!
自然災害がなくても停電が生じます
本日は、「首都圏の大停電」のお話です。
- 本日7月27日の夕方から夜間にかけて、台風8号が東北から関東地方に上陸、各地に雷を伴う激しい大雨を降らせる恐れがあります。
- お昼過ぎ以降、強風、大雨、雷などの影響が強まりますので、外出と帰宅は早めに、昨日の放送でご紹介した、台風直前対策もお昼前には済ませるようにしてください。
- さて、台風の直撃をまぬがれた地域も、停電や、停電に伴う断水への備えが必要になります。また停電は、大地震や台風などの自然災害とは関係無く発生することがあります。
- 本日は、Twitterでリクエストを頂いた、首都圏で発生した大規模停電についてご紹介いたします。みかのりさん、コメントありがとうございます。
1987年の首都圏大停電
- 今から34年前、1987年(昭和62年)7月23日、首都圏近郊、具体的に言えば東京電力管内で大規模な停電が発生しました。
- 今年2021年の7月23日は、東京オリンピック開幕に合わせて祝日となっておりましたが、1987年7月23日は木曜日、全力で平日でした。
- この日の東京は、朝から晴天で気温が高く、朝9時の時点で32度を超える猛暑となっていました。午前中は特に問題なく、首都圏の会社員の皆様が普段通り仕事をし、そしてお昼休みとなり、オフィスの電気やエアコンを止めて昼食に出かけ、そしてお昼休みが終わる13時頃、気温は35.5度に達していました。記録的な猛暑です。
- そして悲劇は、このお昼休みが終わった瞬間に訪れました。
- オフィスが集中する東京、激烈な暑さのなか、汗だくでランチからオフィスに戻ったサラリーマンの皆様は最初になにをするでしょうか。そう、お昼休みに切っていたエアコンのスイッチをつけて、そして全力で回し始めます。
- すると電力需要が急激に伸び、これに合わせて東京電力は供給量を増やすことになるのですが、想定外の暑さで、想定外にエアコンが頑張り、想定外に電力需要が上昇した結果、いわばブレーカーが飛んだような状態となり、お昼休みが終わった19分後、13時19分に、大規模な停電が発生しました。
- この時の電力需要の伸びは、1分当たり40万Kwという数字なのですが、これは2分半ごとに、最大出力の原子力発電所1基をフルパワーで動かさないと得られない程度の電力量に換算します。東京電力が想定していた最大の電力需要の伸びの2倍を超える量で、どうにもこうにも、太刀打ちできなかったというのが当日の事情です。
- その結果、東京電力管内の2割分の電力供給ができなくなり、東京の広い範囲と、神奈川、埼玉、静岡、山梨に到る地域で電力供給が停止しました。
- ちなみにこの停電は、千代田区の国会議事堂も巻きこみ、委員会が中断されるなどの影響を生じさせています。
- 停電が発生した1987年は、いわゆるエルニーニョ現象の影響で、一年を通じて異常気象が続いた年でしたが、気象庁の記録にも、7月の関東では記録的な暑さ、酷暑となり、これが広域停電という新しい形の事故を生んだと、記述が残っています。
- そういう意味では、この停電、「夏の猛暑」という自然災害が原因だったとも言えるのですが、物理的な被害は皆無で、設備故障は全く生じませんでした。
- そのため、東京23区は発生から17分後の13時36分に停電から回復しましたが、全域の停電復旧が完了したのは夕方、16時40分のことで、3時間21分に渡り電気が使えないという地域が多く発生しました。
- これ以降、東京電力は、同じような原因での停電を絶対に起こさないように、ということで設備の改善などを行い、その結果、同じような原因での広域停電が生じたことは、今日までありません。これは単純に素晴らしい努力であると思います。
停電による影響
- この停電で、オフィスや家庭では、記録的な暑さの中、エアコンをはじめとする電気機器が停止しましたが、その他にも、
- JRや各種在来線で運休や遅れが発生したり、
- 道路の信号機が停止して渋滞が発生したり、
- また各所でエレベーターの閉じ込めも発生しました。
- 特に怖いのは、このエレベーターへの閉じ込めです。
- 気温が30度を超える様な状況で、エレベーターに閉じ込められ、エアコンが停止してしまったどうなるでしょうか。短時間であれば命に危険が生じることはありませんが、救助や停電再開に時間がかかる場合、命にかかわります。
- 最近のエレベーターには、防災用品が入ったボックスなどが設置されている場合もありますので、こうしたグッズがあればぜひ活用したいところですが、総数で言えばなにも設置されていないエレベーターの方が多いのが現実です。
- また地震発生時には自動停止する装置が付けられていますが、突発停電に対応する設備は未設置の場合もあるため、いきなりの停電には対処できない場合があります。
- エレベーターに乗る、電車に乗る、なにかしら閉じ込められる可能性がある乗り物を使う時には、ライト、お水、そして非常用トイレなどを携帯しておきたいと思います。
- また、先日の放送で群衆雪崩から身を守る方法としてもお話しましたが、移動するフロアの階数によっては、そもそもエレベーターを使わないで階段を歩く、というのも良い方法ですね。
本日も、ご安全に!
ということで、本日は「1987年の首都圏大停電」に関するお話でした。
ちなみに、東京電力が発表している、年間の停電階数、1世帯当たりにすると、平年はおおよそ0.1回程度です。何もなければ、一般家庭の停電というものは、10年に1度あるかないか、という珍しい影響だということになります。これは日本のインフラが極めて優れていることの証明であり、素晴らしいことです。
なお、この停電回数、2019年の令和元年房総半島で千葉県の大停電が発生した年は、平年の3倍にあたる、1世帯当たり0.33回に増加、2011年の東日本大震災で計画停電が行われた年も、同じ0.33回に増加、そして本日ご紹介した1987年は0.39回と、どこかで大きな停電が発生すると、平均がその年だけ増える、という状況になっています。
それほど多くは発生しないが、必ずやってくる停電の影響、まずは本日の台風8号への備えをぜひ、確認してください。
それでは皆さま、本日も引き続き、ご安全に!