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Voicyそなえるらじお #149『令和3年7月豪雨(仮)の熱海土石流と0.07%という数字』

最終更新日:

執筆者:高荷智也

Voicyそなえるらじお #149『令和3年7月豪雨(仮)の熱海土石流と0.07%という数字』

おはようございます!備え・防災アドバイザー高荷智也がお送りする「死なない防災・そなえるらじお」、7月5日(月)、本日も備えて参りましょう!

令和3年7月豪雨(静岡豪雨)…になるのでしょうか

本日のテーマは「水害」です。

  •  現在進行系の災害です。
  • 7月1日からの大雨により、静岡県の東部を中心に、大きな被害が発生しております。とりわけ、SNSやニュース報道で、静岡県熱海市の伊豆山周辺で大規模な土石流が発生している映像を、ご覧になった方も多いかと思います。
  • まずは、現在も続いている救助活動において、1名でも多くの方が救われることをお祈りする一方、亡くなられた方のご冥福と、被害に遭われた方のお見舞いを申し上げます。

まだ被害の全貌が明らかになっていません

  • この豪雨被害、まだ全貌が明らかになって降りません。
  • 7月4日(日)の13時に、静岡県から発表されている情報では、次の様になっています。
  • まず人的被害、7月4日時点では、死者2名、行方不明者20名、救助されたかたが10名と発表されており、これはすべて熱海の土石流による被害です。
  • 家屋の被害は、静岡県の富士市・沼津氏・三島市・裾野市・御殿場市などで、家屋の全壊、床上浸水、床下浸水などが発生しています。
  • 河川の堤防の決壊は今のところ発表されていませんが、堤防の無い所から水が市街地に溢れ出す溢水(いっすい)が、数カ所で報告されています。
  • ちなみに、今回の豪雨に、気象庁の正式名称が付くかどうかはまだ分かりません。
  • 豪雨被害に名称を定めるかどうかには基準があり、具体的には、
  • 顕著な被害損壊家屋等1,000棟程度以上または浸水家屋10,000棟程度以上の家屋被害、相当の人的被害特異な気象現象による被害など)が発生した場合
  • となっております。被害の規模で言えば、現在の所比較的小規模であるため、熱海の土石流が「特異な気象現象による被害」と認められれば、「令和3年7月豪雨」などの名称がつけられると想定されます。

熱海の土石流について

  • さて、その熱海市・伊豆山周辺の土石流ですが、被害の全貌や発生原因などは現在進行系で調査中となりますので、まだコメントを控えたく思います。
  • 一方、 #102の放送で、スマートフォンとモバイルブロードバンド網などの普及により、多くの災害動画が撮影され、災害直後に共有されるようになった、というお話をしましたが、今回の土石流はまさにこの状況となっています。
  • 土石流の発生直後から、TwitterをはじめとするSNSで、この映像がシェアされ始め、その後のニュース報道でも繰り返し視聴者撮影映像、という形で放送されました。
  • これが、初動対応や被害地域を絞り込むのに役立ったという面は、あろうかと思います。
  • 一方、この土石流から、身を守るには、どうすべきだったのか、また今後どうすればよいのか、という点については、考えるべきことが多くあります。

土砂災害はどこでも起こる

  • まず、過去に何度もお話していますが、日本は土砂災害の多い国で、多くの場所が土砂災害危険区域に指定されています。具体的には、
  • 2020年時点で、
  • 崖崩れの恐れがある場所が全国で41万8千箇所、
  • 土石流の恐れがある箇所が全国で20万2千箇所、
  • 地すべりの恐れがある箇所が全国で1万3千箇所、
  • 合計すると63万3千箇所もの場所が、土砂災害警戒区域に指定されています。
  • 今回、熱海で土石流の被害が生じたエリア一体も、土石流に関する警戒区域に指定されていましたので、そう言った意味では、想定されていた災害が、想定通りに生じてしまったと言えます。
  • この土砂災害の映像をご覧になっていれば分かるとおり、土石流は速度が速いため、巻きこまれる寸前に走って逃げることは不可能です。
  • また、被害を物理的に防ぐことは困難であるため、基本的には発生する前に安全な場所へ避難をするしか、確実に命を守る方法がありません。

避難指示が無かったと言うが

  • また、今回の土石流、発生した時点で、静岡県熱海市からは、警戒レベル3「高齢者等避難」情報が発表されていましたが、危ない場所から全員避難を意味する、警戒レベル4「避難指示」は発表されていませんでした。
  • これについての賛否も見られますが、では避難指示が出ていたら、犠牲者はゼロになったかと言えば、それも難しい所があります。
  • 例えば静岡県の発表では、今回の豪雨で、最大20万世帯・45万人に「避難指示」が発表されました。
  • そして、ピーク時には合計23の市と町で、218箇所の避難所が開設されましたが、実際に避難所へ行った方は、62世帯・311名となっています。
  • 割合で言えば、避難指示の対象者のうち、避難所への移動を行った人は全体の0.07%に過ぎません。もちろん、行政が開設した避難所以外の場所へ自主的に移動された方もいると思われますが、避難指示を出しても、実際に避難数人は極めて少ない、という状況は、毎度の課題なのです。
  • はたして熱海市が、土石流の発生前に避難指示を出していたとして、それにしたがって移動された方は、何人いたでしょうか。ハザードマップで危険と記されている場所に住む多くの方が、危険なことは分かっているが、まさか自分が住んでいる所で被害など起こるはずがない、と考えているのが現状なのです。

ではどうすればよいのか?

  • では、大雨や台風などの災害に対して、どのように改善をすれば良いのでしょうか。といっても、決定的な解決策はありません。
  • 日本中どこでも生じる大地震の揺れ被害と異なり、大雨や台風による浸水や土砂災害は、生じる危険の高い場所の多くが、ハザードマップに記されています。
  • そしてこのハザードマップは、国家機密でもなんでもなく、自治体の役場に行けば紙の地図がもらえますし、スマートフォンかパソコンがあれば、誰でも、無料で、今すぐ、地図を見ることができるようになっています。
  • そして、ハザードマップで危険とされる場所に住んでいる場合に、自治体から避難指示が出された、あるいは気象庁の各種気象警報や、キキクル(危険度分布)で危険と表示された場合は、被害が出る前に避難場所へ移動する。
  • こういったことをすれば、水害による被害はほとんどゼロにすることができるのです。
  • ただ、これはあくまでも理想論です。今回の静岡県の場合も実際に避難した方は全体の0.07%、基本的に避難指示は、自分以外の誰か向けの情報であると、多くの方が思っているのが現状ですし、
  • 実際、大雨のたびに全ての方が避難できるかと言えば、それが難しいこともよく分かります。理想と現実の距離はとても広いのです。

究極の防災は引越なのですが…

  • ちなみに私が住んでいるのは静岡県三島市で、今回の豪雨のど真ん中ですが、私の自宅やこの放送を収録している事務所は、いずれも沈んだり崩れたりする恐れのない場所にありますので、私自身は、避難指示が出ても避難はしませんでしたし、建物の被害もライフラインの被害も受けずにすみました。
  • このように、毎度の避難が面倒であれば、そもそも避難しなくてよい場所に住めばよい、と言う考え方もあります。究極の防災対策のひとつは、引越なのです。
  • が、防災のために引越を行える方も多くはありません。
  • ではどうするか、これから自分自身が引越をするチャンスがあるかた、あるいは子どもや孫や知合いが引越や新居探しをする予定のあるかたは、ぜひ、ぜひ、安全な場所に住んで下さい。
  • これは国家100年の計で、日本人が数世代にわたって実践するべきライフスタイルにならなければいけないと思います。
  • 日本はこれから人口が減ります、住宅も余ります。そのとき、私たちがどこで生活をすべきか、今後100年間をかけて、少しずつ安全な場所に街を作る、そうしたことを考えて行くべきだと思います。

熱海の土石流について

本日も、ご安全に!

ということで、本日は「静岡の豪雨と熱海の土石流」のお話でございました。

土砂災害は、雨がやんだ後でも遅れて発生する可能性があります。また大雨の後に大きな地震などが発生した場合は、それが土砂災害を招くきっかけになる場合があります。あらゆる警報などが解除されるまで、注意を継続することが重要です。

それでは皆さま、本日も引き続き、ご安全に!

サイト管理者・執筆専門家

高荷智也(たかにともや)
  • ソナエルワークス代表
  • 高荷智也TAKANI Tomoya
  • 備え・防災アドバイザー
    BCP策定アドバイザー

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