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Voicyそなえるらじお #183 巨大な湯沸かし器である「原発」は何が問題なのか?

最終更新日:

執筆者:高荷智也

Voicyそなえるらじお #183 巨大な湯沸かし器である「原発」は何が問題なのか?

おはようございます!備え・防災アドバイザー高荷智也がお送りする「死なない防災・そなえるらじお」、8月27日(金)、本日も備えて参りましょう!

原子力発電所

本日は「原子力発電所って何が問題なのか」に関するお話です。

日本初の原子炉

  • 本日8月27日は、64年前に日本で初めての原子炉が運転をはじめた日です。
  • 1957年(昭和32年)8月27日、茨城県東海村にかつてあった、日本原子力研究所で、日本で初めての原子炉、JRR-1が運転を開始、厳密に言えば臨界状態を達成しました。
  • 3.11、東日本大震災における福島第一原子力発電所事故以来、逆風が吹き続けている原子力発電所ですが、本日はこの辺りのお話を。

今稼働している原発

  • 東日本大震災以前は、日本全国に50基以上の原子炉があり、電力の多くを担う存在として動いていました。
  • その後、福島第一原子力発電所事故の影響もあり、2013年には全ての原子炉が停止、その後徐々に再稼働をし、2021年の7月現在では、10基の原子炉が再稼働しています。
  • ただ、現在再稼働している原子炉は、原子炉単体では安全と判断されたので動いているわけですが、想定外の自然災害などに巻きこまれた場合に、100%安全とはもちろん言い切れない訳で、今後どのような状況になっていくかは不透明な状態が続いてます。

原発は巨大な湯沸かし器

  • ところで、原子力発電所という名前だけを聞くと、メルトダウン事故の印象もあり、なんだか怖い存在に思えてきますが、そもそも原子力発電では、どのように発電しているかご存じでしょうか。
  • 原子力というくらいですから、なにやらこう、ものすごい未知のパワーで、グワーッっと、ものすごい発電をしていそうなイメージもありますが、思い切り単純に言えば、原子炉というのは巨大な湯沸かし器なのです。
  • ウランやプルトニウムという核燃料を反応させて、高熱を作り、それでお湯を沸かして、そのお湯の蒸気の勢いでタービン、羽根車を回転させることで、発電機をグルグル回して電気を作る、これが原子力発電所の仕組みです。
  • 他の発電機の場合、例えば火力発電の場合は、ウランやプルトニウムといった核燃料ではなくて、石炭や天然ガスや重油を燃やして、お湯を沸かし、タービンをグルグル回して発電しています。
  • 水力発電の場合は、お湯を回すのではなくて、水の流れる勢いを利用してタービンを回しますし、風力発電の場合は風の力を使ってプロペラなどを回転させ、発電機のタービンをグルグル回します。
  • 大型の発電機を動かすためには、発電機につながっているタービンを回転させれば良くて、これを風で回すか、水で回すか、お湯を沸かして蒸気をぶつけて回すか、発電機の違いはその回し方だけなのです。
  • そして原子力発電所は、その湯沸かしの燃料に、石油や石炭ではなくて、ウランやプルトニウムなどの核燃料を使っている、それだけと言えばそれだけになります。

放射性核廃棄物

  • いわば巨大な湯沸かし器である原子力発電所の原子炉、では、なにが問題なのでしょうか。
  • 火力発電所で、石炭や天然ガスや石油を燃やした場合、燃料のほぼ全ては燃えて熱となり、わずかに排気ガスや燃えかすが出てきます。
  • これらの排気ガスや燃えかすは、そのまま放出すると環境汚染を引き起こしますので大きな問題となりますが、適切に処理することでほとんど無害化できますので、ちゃんとすればOK、ということになっています。
  • 一方、原子力発電所でウランやプルトニウム、厳密に言うとウラン235とプルトニウム239などを反応させると、排気ガスや燃えかすではなく、強い放射能を持つ放射性物質に変化します。
  • 例えば福島第一原子力発電所事故でもよく耳にした、キセノン、ヨウ素、セシウム、ストロンチウムといった物質は、いわば原子炉での燃えかすなのですが、これらが強い放射能を持っている放射性物質で、その辺に捨ててしまう訳にはいかないため、大きな問題となります。
  • 放射性物質とは、放射能を持っている物質のことです。放射能とは、放射線を出す能力のことを言います。そして強い放射線をあびると、人は死んだり、病気になったり、将来的にがんになる可能性が高まったりします。

半減期について

  • この、放射線を出す能力、放射能は、時間がたつとだんだん弱くなります。これを半減期と言いますが、どのくらいの時間で放射能が弱まるかは、放射性物質の種類により異なります。
  • 例えばヨウ素131の半減期は8日、8日ごとに放射線を出すパワー、放射能が半分ずつになっていきますので、それほど大きな問題にはなりません。
  • しかし、ストロンチウム90やセシウム137の半減期は約30年、生まれて30年たってようやく放射線を出すパワーが半分、60年たっても4分の1、非常にやっかいです。
  • さらに、燃え残りでもあり核燃料でもあるプルトニウム239、これも強烈な放射能を持っているため、やっかいな物質なのですが、プルトニウム239の半減期は2.4万年。2.4万年放置してようやく放射線を出すパワーが半分、人類に管理できる物質ではないのです。
  • まとめます。巨大な湯沸かし器である原子力発電所、何が問題なのか、それはお湯を沸かした後に残る燃えかすが、人体に有害な強い放射能を持っており、この放射能が消えるまでの期間が尋常ではなく長い、処理できないゴミが増え続けるということで、これが原発の問題となります。

本日も、ご安全に!

ということで、本日は「原子力発電所って何が問題なのか」に関するお話でした。

  • 日本では数を減らした原子炉ですが、世界には440基ほどの原子炉が稼働しており、現在も増え続けています。
  • メルトダウン事故が発生した場合の影響は、その国だけでなく、世界中に及びますので、原子力発電をどう扱っていくのか、これは人類の課題として考えなければならないことだと言えます。

それでは皆さま、本日も引き続き、ご安全に!

サイト管理者・執筆専門家

高荷智也(たかにともや)
  • ソナエルワークス代表
  • 高荷智也TAKANI Tomoya
  • 備え・防災アドバイザー
    BCP策定アドバイザー

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