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Voicyそなえるらじお #184 台風の早期発見による減災を!富士山山頂の気象観測の歴史

最終更新日:

執筆者:高荷智也

Voicyそなえるらじお #184 台風の早期発見による減災を!富士山山頂の気象観測の歴史

おはようございます!備え・防災アドバイザー高荷智也がお送りする「死なない防災・そなえるらじお」、8月30日(月)、本日も備えて参りましょう!

富士山レーダー

本日は「富士山による気象観測と台風の早期発見」に関するお話です。

  • 本日8月30日は「富士山測候所記念日」です。
  • これは、今から126年前、1895年(明治28年)の8月30日、富士山山頂に初めて気象観測所が建設されたことにちなんで、定められた記念日となっています。

富士山測候所

  • 富士山の山頂に観測所を初めて建設したのは、日本の気象学者、野中至さんと、その妻・千代子夫人です。
  • 明治28年当時は、まだ気象観測技術も発展途上であり、特に標高の高い場所での観測所は数が少ない状態でした。
  • 野中至さんは、日本で一番標高の高い富士山での気象観測が必要だと考え、私財を投じて富士山山頂の剣が峰に、観測用の小屋を建て、1895年から観測を開始しました。
  • 山頂での気象観測は、野中さんと千代子夫人の二人で行われましたが、あまりにも過酷な環境で体調不良となり、同年12月22日に下山することになりました。
  • 期間にして3ヶ月弱程度の気象観測でしたが、これが富士山山頂での気象観測の始まりとなりました。

通年の気象観測開始

  • その後しばらく、富士山山頂での気象観測は、断続的に行われるに留まっていましたが、
  • 1932年(昭和7年)に、現在の気象庁の前身となる組織、中央気象台によって、常設の観測所が建設され、通年における富士山山頂での気象観測が開始されました。
  • 最初の観測所は、最高峰の剣が峰ではなく、山頂南側にある朝日岳に設置されましたが、
  • 1936年(昭和11年)には最高峰の剣が峰に観測所が移設されて、本格的な気象観測が開始されました。
  • その後徐々に観測の体制が充実化され、1950年(昭和25年)には「富士山測候所」に改名されています。

伊勢湾台風と富士山レーダー

  • 富士山山頂の気象観測に転機が訪れたのは、1959年(昭和34年)の伊勢湾台風による甚大な被害の発生でした。
  • 名古屋周辺に高潮による大きな被害をもたらした伊勢湾台風は、死者・行方不明者が5千名を超えるという未曽有の水害をもたらした台風です。
  • 現在は気象衛星ひまわりなどを活用することで、台風は発生前の熱帯低気圧の状態からウォッチされ、台風になった瞬間に第一報が入り、その後リアルタムに台風の状況が伝えられるようになっています。
  • しかし伊勢湾台風による被害を受けた当時は、まだ気象衛星もなく、台風の接近を早く察知する方法にとぼしかったため、突然台風が接近し、避難をする間もなく大きな被害に巻きこまれる、そうした水害が多発していました。
  • そのため、日本本土に接近する台風を、いち早く察知することが社会的に求められたのですが、そこで考えられたのが、富士山山頂へのレーダーの設置でした。
  • 台風を探すレーダーは、高い場所に設置するほど遠くまで観測ができますので、日本の真ん中にあり、最高峰であり、そして独立峰なため周囲に高い山がない富士山は、まさに台風を探すためのレーダーを設置するために存在するような、奇跡的な山でした。

富士山レーダーの設置と廃止

  • そして計画は実行に移され、1964年(昭和39年)に富士山測候所に、気象レーダーと巨大なドームが設置され、台風観測がスタートしました。
  • ひと言ですませていますが、この富士山山頂に巨大なレーダーを設置するという工事は、国家的な計画であり、歴史に残るプロジェクトとして現代まで語り継がれています。
  • 富士山レーダーが運用をはじめたことで、台風を早期発見することができ、実際、伊勢湾台風以降、死者が1000名を超えるような水害は、現在まで一度も発生していません。
  • その後、気象観測のデータ収集は、富士山レーダーから人工衛星に主役の座を譲り、現在は気象衛星ひまわりが、日本の守護神として宇宙から目を光らせてくれています。
  • そして富士山レーダーも役目を終えて、1999年(平成11年)に富士山レーダーが廃止されました。シンボルとなっていた白くて大きなレーダードームは、現在、山梨県富士吉田市の施設に移設されて、保存展示されています。
  • また、ながらく有人の気象観測が行われ続けてきた富士山測候所も、2004年(平成16年)に無人となり、1932年(昭和7年)から72年間継続された、富士山山頂での有人気象観測も終了となりました。
  • 富士山測候所は現在、「富士山特別地域気象観測所」と名前を変えて、無人による気象観測が行われています。この観測所は、富士山山頂剣が峰にあって、富士登山を行う際の最終ゴール地点として、現在も親しまれています。

本日も、ご安全に!

ということで、本日は「富士山による気象観測と台風の早期発見」に関するお話でした。

  • 日本の気象観測、とりわけ台風の早期発見は、富士山をはじめとする高い場所からの気象観測や、人工衛星の発展と共に、進化を続けています。
  • 大地震は予知ができないため、必ず不意打ちで発生しますが、台風は24時間365日の観測のおかげで、予知レベルの精度で、いつ・どこに・どのくらいの台風がやってくるのか、誰でも天気予報を通じて知ることができます。
  • この素晴らしい科学技術の恩恵を無駄にしないためには、台風の警戒が呼びかけられた際の、早期避難が重要です。水害は死者をゼロにできる災害です、危険な場所に住まない、住んでいる場合は早く避難をする、そうしたことをぜひ心がけていただきたいと思います。

それでは皆さま、本日も引き続き、ご安全に!

サイト管理者・執筆専門家

高荷智也(たかにともや)
  • ソナエルワークス代表
  • 高荷智也TAKANI Tomoya
  • 備え・防災アドバイザー
    BCP策定アドバイザー

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