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Voicyそなえるらじお #196 東京ドーム3.4万個分の土地が沈んだ、利根川洪水・カスリーン台風

最終更新日:

執筆者:高荷智也

Voicyそなえるらじお #196 東京ドーム3.4万個分の土地が沈んだ、利根川洪水・カスリーン台風

おはようございます!備え・防災アドバイザー高荷智也がお送りする「死なない防災・そなえるらじお」、9月15日(水)、本日も備えて参りましょう!

利根川氾濫による首都圏水没

本日のテーマは「カスリーン台風」のお話です。

カスリーン台風

  • いまから74年前の本日、1947年(昭和22年)9月15日、房総半島の南をかすめるように通過した「カスリーン台風」の影響で、関東から東北地方にかけては記録的な大雨となりました。
  • カスリーン台風は、関東や東北で大きな洪水を発生させましたが、特に首都圏を流れる利根川流域で大きな浸水被害をもたらし、死者1,100名、家屋浸水30万棟以上、家屋の倒壊半壊3万棟以上という甚大な被害をもたらしました。
  • カスリーン台風は、先日 #185 の放送で紹介した、東京を高潮によって水没させた台風、1949年のキティ台風同様、日本がGHQの占領統治を受けていた際に名付けられた、アメリカ式の命名の台風です。
  • 台風そのものの大きさはそこまで記録的なものではなく、また上陸もせず房総半島の先端をかすめるように通過したのですが、停滞していた前線などの影響により各地で大雨となり、大きな被害をもたらすことになりました。
  • 特に被害を大きくした要因が、日本最大の流域面積を持つ、利根川の決壊です。

利根川の決壊

  • カスリーン台風が直撃をした9月15日、関東や東北は大雨に見舞われ、お昼過ぎごろから北関東を中心に土砂災害や河川の決壊が相次ぎ、各地で数十名単位の方々が亡くなる甚大な被害が発生しました。
  • さらに翌日深夜、9月16日の午前零時20分ごろ、埼玉県の東村、現在の加須市(かぞし)を流れる利根川の堤防が幅350mに渡り大規模に決壊しました。
  • あまりにも大規模な決壊により大量の水が利根川の南側に流れ込みはじめ、東武線沿いを南に進み、早朝には栗橋辺りが水没、7時半頃には幸手市(さってし)が水没、さらに浸水は収まらず16日の夜19時頃には春日部が浸水をはじめ、
  • 翌日9月17日には東武野田線を越えてさらに南下し、9月18日には三郷市、越谷市が沈みはじめ、そして堤防決壊から3日が経過した9月19日、利根川の濁流はついに東京都葛飾区に到達し、葛飾区、江戸川区、足立区などが水没して行きました。
  • 最終的には、堤防決壊から5日が経過した9月21日、東京湾近くの新川(しんかわ)でようやく浸水の拡大が停止したのですが、水が引いたわけではなく、面積にして440平方キロメートル、当時の人口にして60万人が暮らす地域が水没し、ようやく面積拡大が止まったという状況になったのです。
  • なお、カスリーン台風による死者1,100名は、この利根川の決壊よりも、群馬や栃木を中心に発生した土砂災害や突発的な洪水によるものが多く、利根川による大規模な浸水は、徐々に街を飲み込みながら広がる様子となったため、直接的な死者の数は全体の中で言えば少数となっています。
  • 走って逃げることができたため人の命は助かっていますが、440平方キロメートル、よくいう東京ドームの面積換算で言えば、東京ドーム3万4千個分相当の土地が沈むという大きな被害となりました。東京ドームがインフレを起こしてよく分からない数字になっていますね…。

本日も、ご安全に!

ということで、本日は「カスリーン台風」のお話でした。

このような首都圏や東京における大規模浸水被害は、現在も想定されています。少し前に、東京五区と呼ばれる都内東側のゼロメートル地帯で、「ここにいてはダメです」という言葉が強烈なハザードマップが公開されて話題となりましたが、東京・名古屋・大阪をはじめとする全国の都市はどこも水害リスクを抱えており、人ごとで済ませられる教訓にはなりません。明日も水害のお話をして参りたいと思います。

それでは皆さま、本日も引き続き、ご安全に!

サイト管理者・執筆専門家

高荷智也(たかにともや)
  • ソナエルワークス代表
  • 高荷智也TAKANI Tomoya
  • 備え・防災アドバイザー
    BCP策定アドバイザー

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