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Voicyそなえるらじお #197 台風コロッケから台風バカンスへ、東京・江東五区の広域避難

最終更新日:

執筆者:高荷智也

Voicyそなえるらじお #197 台風コロッケから台風バカンスへ、東京・江東五区の広域避難

おはようございます!備え・防災アドバイザー高荷智也がお送りする「死なない防災・そなえるらじお」、9月16日(木)、本日も備えて参りましょう!

ここにいてはダメです

本日のテーマは「大規模浸水時の広域避難」のお話です。

台風ピークウィーク

  • 昨日は、カスリーン台風による利根川の氾濫で生じた、首都圏の大規模洪水のお話をしましたが、
  • 本日9月16日も、過去に大きな台風に襲われた日でした。
  • ひとつは、1948年(昭和23年)9月16日に千葉県に上陸し、関東及び、岩手県の一関市周辺に甚大な洪水被害を生じさせた、アイオン台風。
  • そしてもうひとつは、1961年(昭和36年)9月16日に室戸岬に上陸し、大阪湾への大きな高潮被害や、暴風による甚大な建物被害などを生じさせた、第2室戸台風です。
  • ちなみに明日9月17日も、終戦直後の日本に大きな被害を与えた、1945年(昭和20年)の枕崎台風が上陸した日です。枕崎台風は、直撃の時期が終戦の翌月というタイミングだったこともあり、伊勢湾台風に次ぐ死者・行方不明者が生じております。
  • という訳で、この時期は本当に強烈な台風が多い季節ですので注意が必要ですし、接近中の台風14号は温帯低気圧に変わりそうですが、それでも大雨や暴風の心配があるため警戒が必要です。

広域避難

  • という訳で本日は、ハザードマップのお話なのですが、
  • 少し前、2019年の水害シーズン前に、東京都江戸川区が公開した水害ハザードマップが話題になりました。
  • 中身は最新のハザードマップなのですが、江戸川区、大規模な洪水が発生すると区内のほぼ全域が水没する地域であるため、区民全員を収容できる避難場所がありません。
  • そのため、ハザードマップの表紙に、「ここにいてはダメです」という言葉が書かれており、この直球な物言いが話題となったのです。
  • この、東京都江戸川区を含む、隅田川・荒川・江戸川に挟まされているエリア、江東区、墨田区、江戸川区、葛飾区、足立区は江東5区と呼ばれていますが、全体的に土地が低く、多くの河川に囲まれているため、大規模な水害が発生すると、ほぼ全域が水没することが想定されています。
  • さらに江東5区は人口が多く、おおよそ260万人の方が暮らしています。ちょっとすごい人口ですよね、人口260万人を都道府県に当てはめれば、47都道府県中13番目の京都府の人口とほぼ同じです。
  • これだけ多くの人口を抱えますと、浸水が始まってからの避難は間に合いません。260万人を短時間で移動させる交通手段はありませんし、しかも浸水が始まった後は全ての交通機関が止まってしまいますし、区の外に行くためには川を渡る必要がありますが、その川が洪水を起こしているから避難が必要と、もうどうにもならない状況になることが想定されているのです。
  • このような状況もあり、江戸川区のハザードマップには、水害時「ここにいてはダメです」と表記されたのです。

どうなるのか

  • では、具体的に何が問題で、そしてどうすればよいのかという点ですが、
  • 荒川の、江東五区に影響を生じさせる場所が決壊して洪水が起こりますと、江東五区地域のほとんど全てが水没し、場所によっては10メートル、マンションの3階以下が水没するような激しい浸水となります。
  • この時、床上浸水となる地域に居住している方の人口は、全人口の9割を超える250万人となりますが、さらに問題なのは、この激しい浸水、大雨がやんでもすぐに水が引かず、2週間以上水に浸かったままのエリアが発生するという想定があるのです。
  • すると、自宅がマンションの4階以上であれば部屋の水没は免れますが、電気、ガス、水道、トイレなどが全て使えなくなり、周囲は水没しているため外出もできず、そして季節は恐らく夏、という状況が2週間以上続くかもしれない、というのが大きな問題となります。
  • 250万もの人を、消防や自衛隊が全て救助することは不可能です。そのため、これを回避しようと思ったら、地域が水没する前に、他の地域へ広域避難をしておくしか方法がないのですが、
  • 浸水が始まってから250万人が移動しても避難が間に合わないため、できるだけ早めに、広域避難を完了させる必要がある、ということで呼びかけが行われています。

どうすればよいのか

  • まず、江東五区が水没するような被害が想定される台風などが接近している場合、72時間、3日前から江東五区の偉い方がによる会議が行われはじめます。
  • そしていよいよ台風直撃の可能性が高まりますと、台風直撃の72時間前から24時間前にかけて、広域避難の呼びかけがなされる計画になっています。
  • 実際、2019年の令和元年東日本台風では、台風の勢力や進路が、この呼びかけが出されるきわどいところまで迫っていました。
  • この台風がさらに接近し、被害が想定される場合は、9時間前まで、広域避難に関する強い勧告が出されることになっていますので、区外に親戚、知人、職場など移動できる先があればそこへ、なければ自分でホテルなどを借りて避難することになります。
  • また、250万人が同じ方向に移動するとどうにもならなくなりますので、江東区民は神奈川方面へ、墨田区民は東京多磨方面へ、足立区民は埼玉方面へ、葛飾区民は茨城方面へ、そして江戸川区民は千葉方面へと、分散して移動することが推奨されています。それだけ大規模な避難行動になるということですね。
  • この事前の避難を促進させるため、例えば江戸川区などは、広域避難に関する補助金を出す制度を設けていまして、避難情報が発令された時に、広域避難のために宿泊施設を利用した区民に対して、1人一泊三千円、最大三泊までの費用を支払うことにしています。ぜひ、利用してみてください。
  • そして、さらに台風が接近し、ピークの9時間を切ると、逆に広域避難のための外出が危険になる恐れが高まるため、江東五区に対しては、垂直避難指示が出され、その場で最大限安全な行動を取るように、との呼びかけに変わる計画になっています。
  • 本当にこのような避難情報が発令された場合、鉄道は運休、道路は区外に出るための橋で大渋滞となることが想定されますので、できるだけ早めに移動をはじめなければ、身動きがとれなくなり、屋外で洪水に巻きこまれる恐れもあります。
  • 早く逃げるか、逃げないのであれば二週間その場に立て込もるための物資を備蓄するか、という準備が必要になります。
  • とはいえ、普段学校に通っている方、仕事をしている方の場合は、学校が休校になり、会社が休みにならなければ、数日前の広域避難はできません。そのため、ぜひ、
  • 家族全員が定年しており、仕事も学校もない高齢の皆様は、台風が近づいて来たらぜひ旅行に出かけるようにお願いします、若い方々の避難経路をなんとか確保するためです。
  • そして学校の管理者、企業の経営者の皆様は、広域避難が必要なほどの超巨大台風が接近している場合、遅くとも前日までには休校・休業の判断を行って、身動きが取れる間に自宅を出られるようにしてあげてください。

本日も、ご安全に!

ということで、本日は「東京・江東五区の広域避難」のお話でした。

台風が接近している際には、コロッケを買って食べるという、インターネット上のネタがございますが、浸水が想定されているエリアについては、ぜひ、強烈な台風が接近している際には、数日間旅行に出かける、ということを行ってくださいませ。

台風コロッケならぬ、台風バカンスが、ひろまるとよいなと、思います。

それでは皆さま、本日も引き続き、ご安全に!

サイト管理者・執筆専門家

高荷智也(たかにともや)
  • ソナエルワークス代表
  • 高荷智也TAKANI Tomoya
  • 備え・防災アドバイザー
    BCP策定アドバイザー

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