Voicyそなえるらじお #281 「○○の冬」という災害は、噴火・核戦争・隕石・経済成長などで生じる
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執筆者:高荷智也
おはようございます!備え・防災アドバイザー高荷智也がお送りする「死なない防災・そなえるらじお」、1月21日(金)、本日も備えて参りましょう!
あなたの冬はなんですか
本日のテーマは「○○の冬現象」です。
- 1月15日に発生した、フンガ・トンガーフンガ・ハアパイ火山の噴火から6日目となりました。現地の被害状況などはまだはっきりしていませんが、外部からの支援受け入れに関しては進展がありません。実はこれには理由があり…
- トンガは新型コロナウイルス感染症対策として、COVID-19がパンデミックとなった、2020年3月以来、原則として外国人の入国を認めない、世界でもトップクラスに厳しい水際対策を現在も継続しているためです。
- 新型コロナウイルス感染症に関しては、この厳しい入国制限の成果もあり、現在までに感染者数は1名のみと、実質ゼロコロナを達成している珍しい国なのですが、今回のような国家を揺るがす大規模災害時には、大きなハードルとなるという課題が浮き彫りとなりました。
- 現在は、支援物資などの受け入れについても、基本的に人が接触しない方法で対応する方針だと言うことですので、例えば日本からの救助隊がトンガへ出発しない、というのは日本が消極的なのではなく、トンガ側が受入を指定無いためなのだ、と知っておくことは重要ですね。
令和の米騒動は避けられそう
- 今回の噴火は、1991年に発生した、フィリピン・ピナツボ火山の噴火と規模が近かったことから、この時の噴火を引き合いに出して、噴火により噴出した物質が太陽光を遮ることで、地球規模の寒冷化が生じるのではないか、令和の米騒動が発生するのではないか、といった噂が流れています。
- こちら、詳しくはYouTubeそなえるTVでも解説をしておりますが、今回のトンガの噴火は、地球規模の寒冷化を生じさせるために必要な物質、二酸化硫黄の噴出が少なかったとみられていることから、おそらく寒冷化・凶作・米不足などは発生しないのではないか、と見られています。
- もちろん、まだ噴火が終息したかは分かりませんし、他の地域を含む次の巨大噴火が今発生しててもおかしくありませんので、なにも対策をしなくて良いということにはなりませんが、今のところ、慌ててお米を備蓄する必要はなさそうです。
経済成長の冬
- ところで、噴火による火山の冬現象のような、○○の冬という現象は、噴火以外の災害でも発生することが想定されています。
- 「火山の冬」現象は、巨大噴火によって、大量の二酸化硫黄が成層圏に到達し、そこで太陽光を反射しやすい硫酸エアロゾルを大量生成してしまうことで、地球全体の気温が低下するという現象です。
- これと同じような現象が生じたのが、「経済成長の冬」という災害です。
- 近年、地球温暖化現象が叫ばれ続けていますが、実は第2次世界大戦後、1950年代から1970年代にかけて、奇妙に平均気温が低い時期が続いていました。この原因が、経済成長に伴って大量に排出された、自動車の排気ガスや工場からの煙に含まれる、硫黄酸化物だったのです。
- 巨大噴火などは生じていない時期でしたが、世界中で大量の硫黄酸化物がモクモクと、24時間365日排出され続けたことで、公害や酸性雨が問題となったのですが、実はこれらが太陽光を反射し、地球温暖化現象で上昇するはずだった気温を、むしろ一部低下させたということが、実際に観測されています。
核の冬・隕石の冬
- また、核兵器が戦争に用いられた場合に発生する、「核の冬」や、
- 巨大隕石が地球に衝突した際に発生する、「隕石の冬」などもあります。
- 理屈は同じで、大量の核爆発や、隕石の衝突により、大量のチリや化学物質が大気中にぶちまけられ、これらが太陽光を遮断することで、地球規模の寒冷化が生じるという理屈になります。
- そのため、核戦争の戦果をまぬがれた地域や、巨大隕石衝突の衝撃波や津波を免れた地域についても、徐々に進行する寒冷化により、食料生産ができなくなり、緩やかに滅亡するという可能性があるのです。
本日も、ご安全に!
ということで、本日は「○○の冬現象」のお話でございました。
- ○○の冬はファンタジー世界のお話ではなく、現実の災害です。
- 経済成長に伴う寒冷化は、災害にはなっていませんが現象としては実際に観測されていますし、火山の冬に伴う寒冷化は、なんども人類を食糧危機にたたき込んで来ました。
- 核戦争による核の冬はまだ発生したことがありませんが、潜在的な脅威は常に存在します。また隕石の冬は、恐竜絶滅の原因とも考えられており、実際に生じた可能性のある災害です。
- これらの災害に個人レベルで備えることは極めて難しいため、基本的には国家規模での対策が必要となります。対策編についても、また後日お話をさせて頂きますね。
それでは皆さま、本日も引き続き、どうぞご安全に!