Voicyそなえるらじお #496 長期備蓄の救世主「脱酸素剤」…は食べても毒にはなりません
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執筆者:高荷智也
おはようございます!備え・防災アドバイザー高荷智也がお送りする「死なない防災・そなえるらじお」、12月14日(水)、本日も備えて参りましょう!
食糧備蓄の重要アイテム「脱酸素剤」
本日のテーマは「脱酸素剤」に関するお話です。
- 食品の長期備蓄に欠かせないアイテムが、脱酸素剤です。脱酸素剤が気軽に使えるようになったことで、食品保存のあり方が大きく変わったという歴史があります。本日はこのお話。
エージレスは商標
- アルファ化米やフリーズドライのご飯を初めとする各種の非常食、お茶やコーヒー、お菓子など様々な食べ物の中に、「食べられません」と書かれている小さな袋が入っています。大きさは乾燥剤に似ていますが、これが脱酸素剤です。
- 脱酸素剤は、1977年に三菱ガス化学が世界で初めて開発したもので、密封容器の中の酸素を全て吸収することで無酸素状態を作り出してくれる便利な道具です。
- ちなみに脱酸素剤の代名詞として「エージレス」という言葉が使われますが、これは三菱ガス化学の商品名で、商標登録されている名称になります。脱酸素剤は複数のメーカーが製造販売をしていますが、エージレスのシェアは高く、多くの場所で見かけるものになっています。
脱酸素するとどんな良いことがあるのか
- 虫・細菌・カビなどが死滅します
- 食品の酸化反応が抑えられます
- したがって食品が長持ちします
- ちなみに、缶詰やレトルト食品には脱酸素剤は入っていませんが、あれは熱処理をすることで密封後に内部の微生物を全滅させることができるので、脱酸素剤が不要となります。
エージレスの原理と中身
- 脱酸素剤の中には、鉄の粉、鉄粉が詰まっています。そしてこの鉄粉が酸素と触れることで錆びるのですが、錆びるという化学反応を行う際に、酸素を吸収します。空気中において置くと、あっという間に全ての鉄粉が錆びてしまって反応が止まってしまうのですが、
- 密封空間に脱酸素剤をいれると、空間の中にある酸素を全て吸収して、無酸素状態を作り出します。これが脱酸素剤の中身と原理です。
- そのため脱酸素剤は、空気を100%遮断できる袋や容器、ガスバリア性能の高い完全密封できる素材とセットで使用することが必須となります。
- ちなみに、使い捨てカイロの原理も脱酸素剤と同じです。使い捨てカイロも主成分は鉄の粉で、これが錆びる際の化学反応で発熱して、温かくなります。そのため脱酸素剤も、酸素を吸収している間は発熱してほんのりと温かくなるのです。
食べてしまっても大丈夫
- アルファ化米やフリーズドライのご飯を食べる際、中に水やお湯を入れますが、うっかり脱酸素剤の小袋を入れたままにすることがあります。ご飯が完成して、食べている途中に脱酸素剤の小袋がでてきて「あちゃー」となる、アレです。
- 脱酸素剤は、うっかり食べてしまったり、お湯に入れて煮込んでしまっても問題はありません。例えばエージレス、主成分は鉄の粉ですが、酸素を素早く吸収する、つまり早く鉄を錆びさせるための促進剤として、塩、ビタミンC、色素などが入っていますが、いずれも食べてしまっても問題無いことが、安全性試験で確認されています。
- アルファ化米やフリーズドライご飯、お湯を入れて完成したあとにエージレスが出てきてしまっても問題はありませんので、落ち着いて取り出して、ご飯を美味しく食べてください。
本日も、ご安全に!
ということで、本日は「脱酸素剤」のお話でございました。
それでは皆さま、本日も引き続き、ご安全に!