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Voicyそなえるらじお #338 家庭の防災で「エンジン発電機」は使えるか?燃料と騒音の問題

最終更新日:

執筆者:高荷智也

Voicyそなえるらじお #338 家庭の防災で「エンジン発電機」は使えるか?燃料と騒音の問題

おはようございます!備え・防災アドバイザー高荷智也がお送りする「死なない防災!そなえるらじお」、4月15日(金)、本日も備えて参りましょう!

貯めるか作るか

本日は「エンジン式の発電機」のお話です。

  • 本日はコメント欄に投稿を頂きました、ご質問への回答です。
  • 『一般家庭においてエンジンが付いているタイプの発電機の使いどころを教えていただきたいです。購入しようかと考えたこともあるのですが、住んでいる住宅地での騒音や長時間動かすための大量の燃料の備蓄などを考えるとあまり現実的な使いどころが思いつきません。普段、趣味で使うならまだしも防災専用となると一般家庭では手に余るのでしょうか。』
  • というご質問をいただきました。コメントを投稿くださいました、「野寺坊」さん、ありがとうございます!

発電機…一般家庭にはオーバースペック

  • エンジンで動かす発電機、個人的な見解を申し上げれば、一般家庭での導入はハードルが高く、防災専用に準備をするのはオススメできません。
  • エンジンタイプの発電機は、まず燃料がなにであるかによって、種類が3つに分けられます。最もラインナップが豊富なのは、ガソリンで動く発電機。一般的にエンジンタイプの発電機と言えば、このガソリン発電機を指して言います。
  • 最近少しずつ増えているのは、カセットガスボンベを燃料にする発電機、こちらはHONDAのエネポなどが有名ですが、他の会社からもカセットガス発電機が販売されています。ガソリン発電機よりも燃料備蓄が楽な点がメリットですが、出力や動作時間に劣るのがデメリットです。
  • もうひとつは、家庭のLPガスボンベに直結するタイプの発電機。燃料としてはカセットガスと同じですが、こちらは事前に、LPガスボンベにアダプターなどを取りつけておき、そこからホースで発電機をつなぎ、動かすというものです。
  • LPガスボンベの発電機は、燃料備蓄が不要である点がメリットですが、使える家庭が限られます。条件が合致すればちょうどよい選択肢になりますね。

問題なのは燃料備蓄

  • ガソリン発電機やカセットガス発電機が一般家庭の防災用品に向かない理由、最大の理由は燃料備蓄の難易度が高いことです。
  • 最も一般的なガソリン発電機を使おうと思ったら、ガソリンの備蓄が必要です。ガソリン備蓄をする場合は、金属の携行缶にガソリンを入れて保管する方法と、ガソリンの缶詰などを使う方法があります。
  • 日頃からガソリン発電機を多用する場合は、携行缶などにガソリンを保管し、そのまま使うのがオススメですが、携行缶に入れたガソリンは半年程度で劣化するため、入替が必要になります。防災専用に備蓄をする場合、ガソリンの缶詰をつかうのがよいでしょう。
  • ただ、ガソリンは大変な危険物です。近年の、自爆型の放火殺人などでは、ガソリンなどが巻かれて瞬間的に大規模火災が発生していますが、ガソリンは一瞬で気化して、火元に触れると爆発的に燃焼するため、万が一保管しているガソリンが漏れ、着火した場合、一瞬で自宅が燃え上がるリスクがあります。
  • そのため、ガソリンの備蓄は消防法で厳しい上限が定められています。自動車の燃料タンクなどを別にすると、金属容器などで保管するガソリンは40Lまでが上限となります。ちなみにガソリン発電機、出力によって燃費は変わりますが、小型タイプの発電機は、おおよそ1時間当たりフル運転で1リットルのガソリンを消費します。
  • つまり、最大40Lのガソリン備蓄がある場合、発電機を動かせる時間は40時間前後と言うことになり、じつはそれほど長時間の運転はできません。
  • カセットガスタイプの発電機は、ガソリンに比べると燃料備蓄が容易ですので、もし防災専用に準備したい場合は、カセットガス発電機を選ぶのがよいでしょう。ただ、燃費的には1時間でガス2本程度の消費になりますので、1日12時間運転したければ24本、3日で72本の備蓄が必要になります。
  • さらに、エンジン発電機を動かすためには、クルマやバイクと同じくオイルが必要です。エンジンオイルを備蓄しておき、定期的に交換する必要もあります。これもなかなかの手間です。

騒音も課題

  • エンジン発電機、もうひとつの課題は騒音です。発電機には、通常タイプとインバータータイプの2種類があります。通常タイプは、工事現場の照明やお祭りの屋台などで使われるような、金属フレームむき出しのメカメカしいタイプのものが多く、安価ですが電気の質が低い発電機です。
  • インバータータイプは、プラスチックの樹脂で覆われた外見をしているものが多く、こちらは電気の質が高い発電機です。電気の質が高いというのは、正弦波と呼ばれる綺麗な交流の波形を出力できるという意味で、電子機器やコンピューター制御されている家電を使う場合には、正弦波の出力ができるインバーター発電機が必須となります。
  • そして、普通の発電機は超うるさく、インバーター発電機もかなりうるさい、つまりどちらもエンジン発電機は騒音が「ヤバイ」という点が問題です。
  • 以前、8機種程のガソリン発電機を実際に動かし、騒音測定や燃費計測をしたことがありましたが、静音タイプと言われているものであっても、相当うるさいです。具体的には、原付バイクが永遠に目の前で動いているようなイメージです。会話はできません。
  • また、エンジン発電機は屋内で使うことができません。排気ガスが出ますので、屋内で使用すると死ぬためです。必ず外に出す必要があるのですが、マンションのベランダや、住宅地の戸建ての庭などで発電機を動かすと、ものすごい音が永遠に続きますので、なかなか難しいというのが問題です。
  • もちろん夜間にはまず動かせませんし、また発電機があることが必ず周囲に分かりますので、非常時の場合は電気を分けてくださいという訪問ラッシュを受けることになります。これも、エンジン発電機が使いづらい理由です。 

本日も、ご安全に!

ということで、本日は「エンジン式の発電機」のお話でした。

  • エンジン発電機が有効なのは、在宅用の医療器具を使っていたり、冷蔵が必須である薬を使用しているなど、電気を失うことが命にかかわる場合です。できればポータブル電源と併用しながら、電気を確保することがおすすめです。
  • 命に関わる理由がない場合は、ポータブル電源とソーラーパネルを併用したり、あるいはいっそ、自家用車をPHEVなどにすることも有効です。防災専用にPHEVを導入するのは金額的に難しいですが、数百キロの人と荷物を積んで時速180kmで走れる発電機は、なかなか魅力的ではあります。

それでは皆さま、本日も引き続き、どうぞご安全に!

サイト管理者・執筆専門家

高荷智也(たかにともや)
  • ソナエルワークス代表
  • 高荷智也TAKANI Tomoya
  • 備え・防災アドバイザー
    BCP策定アドバイザー

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