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Voicyそなえるらじお #362 首都直下地震による東京の被害想定見直し…想定外の死因とは?

最終更新日:

執筆者:高荷智也

Voicyそなえるらじお #362 首都直下地震による東京の被害想定見直し…想定外の死因とは?

おはようございます!備え・防災アドバイザー高荷智也がお送りする「死なない防災!そなえるらじお」、5月26日(木)、本日も備えて参りましょう!

10年ぶりの新刊です!

本日のテーマは「首都直下地震の被害想定見直し」のお話です。

  • かねてより東京都が進めておりました、「首都直下地震等による東京の被害想定」の見直し資料が、昨日5月25日に公開されました。
  • 詳しいお話は改めてして参りたいと思いますが、今回は最も重要な死者の想定に関する雑感を。
  • 目立つ数字ですので、各種マスコミ報道でもクローズアップされておりますが、今回の被害想定見直しでは、死者の人数が10年前の被害想定、9,641人と比較して、6割減となり、最悪ケースで6,148人と想定されています。
  • ちなみに、首都直下地震で死者最大約23,000人という数字を聞いたことがあるかもしれませんが、こちらは東京都ではなく、内閣府が策定した資料の数字で、東京を含む首都圏全体での被害想定です。

なぜ想定される死者が減ったのか

  • なぜ想定死者が減ったのか、これはここ10年間地道に取り組み続けた防災対策の効果、および時間がたつことで古い建物が減り、そのぶん地震に強い建物が増えた結果となります。
  • 具体的には、建物の耐震化が進んだことで、10年前には約5,100名の被害が想定されていた、建物倒壊による死者が、今回3,200人まで減少しています。
  • さらに、建物がつぶれなければ火災による延焼は減るほか、電気火災の対策向上、初期消火率の向上施策なども行ってきた結果、10年前には約4,100人の被害が想定されていた、火災による死者が、今回2,500人まで減少しています。
  • 建物の耐震化、火災対策が、意図的にあるいは自然的に進んだ結果、災害に強い都市になり、想定される死者が減ったと言うことになります。これは単純に喜ばしいことですし、今後も促進されるべき項目と言えます。

死者想定の内訳

  • 想定される死者の内訳について、すこし細かく見てみましょう。
  • 今回の資料から、被害が最大となる、都心南部でマグニチュード7.3の直下型地震が、冬の夕方に発生した場合、今回の被害想定で、死者の内訳としては次のような項目が、数値で定量的にシミュレーションされています。
  • 建物倒壊等による人的被害(死者、負傷者) が3,209名
  • 屋内収容物の転倒・落下等による人的被害(死者、負傷者)が239名
  • ブロック塀等の転倒による人的被害(死者、負傷者)が205名
  • 屋外落下物による人的被害(死者、負傷者)が5名
  • 急傾斜地崩壊による人的被害(死者、負傷者)が8名
  • 津波による人的被害(死者、負傷者) はなし
  • 火災による人的被害(死者、負傷者) が2,482名
  • という内訳です。

想定されていない死者

  • 逆に言うと、想定されていない死因という物も多くあります。
  • まず、近年の災害で特にクローズアップされるようになった死因、災害関連死。東日本大震災では3,700名の方が、地震の揺れや津波ではなく、その後の被災生活で命を落としています。
  • 今回の被害想定見直しでは、災害関連死の発生については細かく語られていますが、死者の数としてはカウントされていません。
  • また、私も講演会やセミナーでよくお話をする、帰宅困難者への被害。日中に大地震が発生し、帰宅できなくなった方が歩いて帰る途中に、落下物、火災、群衆なだれなどに巻きこまれて命を落とすという状況。
  • これは東京都も各種の対策を講じるなど、死者の発生を想定している事象ですが、今回の被害想定では死者の数としてカウントされていません。
  • さらに、交通系の被害は想定外です。大地震による自動車の交通事故、鉄道の事故などは、事象そのものは触れられていますが、死者の想定としてはカウントされていません。
  • さらに、細かい所では、例えばエレベーターへの閉じ込めによる死者の発生、屋内や屋外での群衆雪崩の発生やパニックによる死者の発生なども死者のカウントとしては想定外ですし、工場火災や原発事故などの二次災害についてもカウントとしては想定外になっています。
  • 全体的に、地震による直接影響のみを死者想定の数値としており、二次災害・関連災害は対象外になっています。
  • これは、現実問題シミュレーションが難しすぎるので仕方のないところではありますが、震災関連死、帰宅困難者、自動車事故や鉄道事故などは大地震の被害としても十分考えられますので、個々人の対策としてはそなえる対象として意識しておくべき事象と言えます。

本日も、ご安全に!

ということで、本日は首都直下地震の被害想定見直しのお話でした。

  • 全体として、想定される死者が減ったという結果が得られたことは、防災対策の進展を意味しますので喜ばしいことと言えます。
  • ただ、個人と家庭の防災においては、全体の死者の数はあまり重要ではなく、結局のところ自分と家族の命をどう守るかが重要です。自宅周辺で想定される被害をイメージし、なにをしておけば死なずに済むか、その対策を進めてください。

それでは皆さま、本日も引き続き、どうぞご安全に!

サイト管理者・執筆専門家

高荷智也(たかにともや)
  • ソナエルワークス代表
  • 高荷智也TAKANI Tomoya
  • 備え・防災アドバイザー
    BCP策定アドバイザー

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