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Voicyそなえるらじお #373 続・ソーラーパネル、火災・発電・人権問題について

最終更新日:

執筆者:高荷智也

Voicyそなえるらじお #373 続・ソーラーパネル、火災・発電・人権問題について

おはようございます!備え・防災アドバイザー高荷智也がお送りする「死なない防災!そなえるらじお」、6月10日(金)、本日も備えて参りましょう!

#環境にいいこと

本日のテーマも昨日に続き「ソーラーパネル」に関するお話です。

  • 昨日の放送では、防災的に重要な設備・アイテムであるソーラーパネルに関して言われる、いくつかのネガティブな問題に関する解説をいたしました。
  • パネルに使用されている有害物質の問題は、事実が誇張して報道されている点は改める必要があります。廃棄物の問題はソーラーパネルに限った話ではありませんので、社会全体の課題として取り組む必要があります。
  • 暴風による吹き飛ばされや、落下物による破損については、むしろ屋根を保護するメリットもありますので、デメリットのみで善し悪しを検討するべきではありません。そんな内容でした。本日はこの続きのお話です。

ソーラーパネルと火災

  • ソーラーパネルで火災が生じたら水では消せないとか、感電するから近づくこともできないとか、そういった話もSNSなどでは見聞きしますが、これらはデマです。
  • ソーラーパネルで火災が発生しても水をかければ消火できますし、日中の火災の場合は発電による感電の恐れもありますが、対策を講じることで消火活動ができなくなる、ということはないということが、東京消防庁などから発表されています。
  • 最も、それでも感電の恐れはありますし、また消火が完了した後、無人となったソーラーパネルが発電・ショートして再度出火する恐れはあるため、対策が必要だというコメントも合わせて出されています。
  • ただ、火災という状況がそもそもイレギュラーな訳です。火力発電所にも原子力発電所にも事故のリスクはあります。水力発電所を構成するダムが崩壊した事故もありました。災害や事故に巻きこまれた場合、あらゆる発電システムは何かしらの課題を抱えますので、それを前提とした対応策を準備することは、ソーラーパネルに限らず必要だと言えます。

ソーラーパネルを普及させても発電所は減らない?

  • メガソーラーの普及により太陽光発電の出力は、近年飛躍的に増加しました。日本で太陽光発電の普及が本格的に始まったのは、住宅用のシステムに補助金が出るようになった2000年代初頭のことですが、その頃の太陽光発電が国内の発電に占めるシェアは、誤差範囲程度でした。
  • それが直近では変化しています。環境エネルギー政策研究所が公開している電源構成の資料から引用しますと、2020年には、国内の電源構成の8.9%が太陽光発電になるなど、ものすごく割合を増やしています。ちなみに水力発電が7.8%ですので、2020年には太陽光が水力発電のシェアを超えています、これはすごいことです。
  • ただ、太陽光発電のシェアが伸びれば、そのぶん火力発電や原子力発電が不要になるのかといえば、そういうわけにはいきません。これがまさに近年の問題なのですが、
  • ソーラーパネルが発電するのは晴れた日中に限られますので、雨の日や曇りの日は出力ダウン、夜間には出力がゼロになります。そのため、太陽光が増えたとしても、何かの理由で発電できない状況に備えて、結局太陽光無しで国内の電力需要をまかなうための火力発電・原子力発電所が必要になる。だからソーラパネルが増えても意味が無いという理屈です。
  • これは事実であり、発電調整ができない太陽光・風力などの自然エネルギーは、基本的に蓄電池や、そのたエネルギーを貯めておくシステムとセットにしなければなかなか活用が難しいという側面があろうかと思っています。
  • これまでは蓄電池の性能や価格的に普及が難しかったのですが、近年では住宅用蓄電池、大容量ポータブル電源の性能が向上しましたので、基本的にソーラーパネルと蓄電池はセットで運用し、電力の自給自足をベースとした普及をさせることが重要だと考えています。

安全と水と電気はタダではない

  • そしてもうひとつ重要な考え方が、水と安全はただだと言われる日本ですが、電気についても同じような感覚になっている方が多いと思います。
  • 近年では、電気料金の値上げが続いていますし、太陽光発電の買取制度により、ソーラーパネルの設置されていない方にも、太陽光発電買取の金額負担が生じているというのも、メリット・デメリット両方を含んだ課題です。
  • ただそれでも、スイッチを入れれば照明が付く、コンセントにプラグをさせば家電が動く。基本的に停電することはなく、高品質な電気が欲しいだけ無限に手に入る。これが一般的なイメージではないでしょうか。
  • しかし、電気は無限に使えるというこの常識は、かなり奇跡的な日本の経済力や、世界有数の電力インフラに支えられることで存在しています。例えば何かの理由により、海外から石油や天然ガス、あるいは原発用のウラン燃料の入手ができなくなれば、国内の電力需要の大部分をになう火力発電所が動かせなくなり、電気も無くなります。
  • この時、国内で自給できるエネルギーは、太陽光・水力・風力といった自然エネルギーがほぼ全てになります。自然エネルギーは、設備さえ持っていれば、地球上のあらゆる場所で電気を生み出すことができる、非常に重要なアイテムなのです。
  • もちろん、火力発電・原子力発電の稼働がゼロという、ここまで極端な事態がすぐに生じるとは思います。しかし電気が無限に手に入るという環境は、当たり前ではないということを認識した上で、電力購入がかなり制限されるような状況になった時、どうやって備えておくのかは考えておくべき項目と言えます。

新疆ウイグル問題

  • また近年では、ソーラーパネルのシェアの多くを中国メーカーが握るようになっていたり、国内メーカー製造のパネルも原料となるシリコンの多くを中国からの輸入でまかなっている現状があります。
  • そして問題になっているのが、新疆ウイグル問題ということで、太陽光発電を普及させることは、ウイグルで生じている強制労働に加担することに繋がるから、よくないことだ、と言う論調も見かけます。
  • しかし、ウイグル問題についてはそれが事実であったとしても、ソーラーパネルの普及とは別の問題であると考えるべきです。ソーラーパネルが生まれてこの方、ウイグル問題が背景にあった訳ではなく、結果として今、そういう構造になっているのだとしたら、ウイグルの人権問題、それはそれとして解決すべき事柄であり、太陽光発電と関連付けるのは違うだろうと思っています。
  • そもそも、2000年代の初頭は、世界のソーラーパネルの多くを日本のメーカー、SHARP、京セラ、今はパナソニックになった旧三洋、そして三菱電機辺りが圧倒的にシェアを持っていて、ソーラーパネルと言えば日本という時代がありました。
  • 現在は中国メーカーに圧倒的に押されていますが、日本は世界でも貴重な、ソーラーパネルを完全自給できる国のひとつであり、国を挙げて後押しをすれば、国産パネルだけでやっていくこともできるはずなのです。最も原材料、シリコン、アルミニウム、プラスチックを作る石油については輸入に頼る必要がありますので、自給自足は難しいのですが、調達先を工夫することはできるはずです。

で、どうすべきなのか

  • ということでソーラーパネルを取り巻く問題について、いろいろお話をして参りました。まとめとして、ソーラーパネルを取り巻く諸問題、個人的な考えをお話します。
  • まず、太陽光発電は是か非か、という命題については、圧倒的に是、普及すべきだと考えます。
  • 理由はシンプルで、日本で自給できる貴重な電源であるからです。これは日常での利用もそうですが、災害時の分散電源として、また長期的に化石燃料が入ってこなくなるような事態に備えた安全保障の一環としても必要な取り組みであると思います。
  • 食糧自給率を上げ、最低一年分の国家備蓄を行うこと。エネルギー自給率を上げ、非常時にも最低限の電力を供給できること。これは私達の生命と生活を維持するために欠かせない国家としての施策ですが、その要素のひとつにソーラーパネルは欠かせない存在です。
  • そのため、ソーラーパネルを排除しに行く方向ではなく、どうすればデメリットを解消して、上手に活用できるのかを考えることが重要だと思います。
  • 環境負荷の問題は確かにありますので、できるだけ有害物質を使用しないパネルを生産し、そして消費者はそれを選択すること。安くて高性能だが30年後に問題が生じる環境負荷の高いパネルと、少し割り高だけど若干性能は落ちるが、30年後に生じる問題が少ないパネル、消費者となる私達がどちらを選ぶのか、個人の問題でもあるわけです。
  • また太陽光発電は、電力を生むのに燃料は不要ですが、エネルギー密度が小さいため、たくさんの電気を作る場合には広大な面積が必要となります。そのためメガソーラーなどが作られていますが、これの普及には少々懐疑的です。
  • 空いている土地を有効活用した、20年50年ときちんと管理できるメガソーラーはよいのですが、わざわざ森林を切り開いて設置した、よく分からない事業者の管理するメガソーラーはデメリットの方が大きいでしょうし、二次的な自然災害も招き兼ねません。
  • エネルギーの密度が小さく、分散型にならざるを得ないソーラーパネルは、基本的に人が日常的に管理している建物の屋根などに設置し、そして蓄電池とセットで運用することで普及させるべきで、過度なメガソーラーはどうかなと思っています。災害時にも住宅のソーラーパネルは便利に使えますが、メガソーラーはおいそれと使えませんね。
  • 仮に何かの理由で文明が崩壊した際には、メガソーラーがソーラーパネル鉱山となって、生き残った人類を支えるかもしれませんが。

本日も、ご安全に!

ということで、本日も「ソーラーパネル」に関するお話でした。

  • マンションなどにお住まいの場合、住宅用ソーラーを設置することはできませんが、ポータブル電源とモバイルソーラーパネルの組み合わせはよいと思います。
  • はれていれば、ベランダなどに設置したソーラーパネルでポータブル電源の充電をすることができますし、アウトドアなどで外に出る場合には間違いなく便利です。発電・蓄電の仕組みを、個人が手軽に持てるようになってきたのはこの数年のことですので、ぜひ停電対策用品としてポータブル電源とソーラーパネルを活用できるとよいなと思っています。

それでは皆さま、本日も引き続き、どうぞご安全に!

サイト管理者・執筆専門家

高荷智也(たかにともや)
  • ソナエルワークス代表
  • 高荷智也TAKANI Tomoya
  • 備え・防災アドバイザー
    BCP策定アドバイザー

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