Voicyそなえるらじお #374 防災アドバイザーが死神と呼ばれないための自問自答
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執筆者:高荷智也
おはようございます!備え・防災アドバイザー高荷智也がお送りする「死なない防災!そなえるらじお」、6月13日(月)、本日も備えて参りましょう!
#ソーシャルグッドを語ろう
本日のテーマは「防災アドバイザーの社会的な役割」に関するお話です。
- …と、大仰なテーマを掲げましたが、本日はvoicyの週次ハッシュタグ企画ということで、「#ソーシャルグッドを語ろう」というテーマに関するお話です。
- ソーシャルグッドを辞書で調べますと、「ソーシャルグッド」とは、社会へ良いインパクトを与える活動や製品、社会貢献度の高い活動を支援する姿勢を表す総称。2010年代から頻繁に使われるようになった用語で、当初は特にマーケティングの文脈で言われることが一般的であった。
- ということです。
防災とソーシャルグッド
- では「防災」はどうでしょうか。防災で重要なことは「命を守る環境」を作ることであり、これを実践するためのアドバイスをするのが、防災アドバイザーと呼ばれる方々の活動であるはずです。
- 基本的には社会的によいインパクトを与える活動であると思いますので、まっとうに防災アドバイザーという活動をしていれば、ソーシャルグッドな活動をしていると言えそうですね。
- 逆に、ありもしない災害リスクをでっち上げて人々の不安を煽り、お金儲けに繋げるとか。人々の関心を集めるためのネタとして、災害・防災の情報を利用するとか、机上の空論のみで導き出した逆に命を危険に導くアドバイスとか、そうした活動は社会的にネガティブですので、慎みたいところでございます。
失礼クリエイターから得られる教訓
- ところで、いま私自身は、「備え・防災アドバイザー」を自称して活動をしていますが、防災アドバイザーを名乗るために国家資格などが必要な訳ではありませんので、この肩書きは自称ですし、誰でも名乗れます。
- そして最近、防災アドバイザーの役割とは何だろうかと、考えることがあります。防災に関するアドバイスをする、まぁその通りなのですが、問題なのはこの「アドバイス」の内容です。
- すこしネガティブなお話をしますと、例えば「ビジネスマナー講師」という職業があります。ビジネスマナーに関するアドバイスをする、まぁ防災アドバイザーと似たような活動をしている職業です。
- そして最近、ビジネスマナー講師を「失礼クリエイター」と呼ぶようなネタを見聞きすることがあります。これは、世の中に溢れる、ややいきすぎた「マナー」に関する辟易する状況を揶揄するネタですが、
- 「○○アドバイザー」と呼ばれる方が、生き残りをかけて「新しいアドバイス」を生み出すという構図は、どの業界にもあり得ると思います。当然「防災アドバイザー」業界においても同様です。
- ○○アドバイザーは、アドバイスをすることで生活をしています。そしてアドバイスをするためには、その対象について知らない方々や、学びたい方々が一定数存在することが必要です。
- 大地震が起きた直後にたき火をするのは危ないですよ、台風接近の報道がされている時に外出するのはやめた方がいいですよ。こういう当たり前すぎる、誰でも知っていることをアドバイスしても仕事にはなりませんので、世の中に広まっていないことを探し出し、アドバイスしなければならないのです。
インターネットによる弊害
- 世の中に知られていない注意点を見つけて、アドバイスする。これが上手に循環すれば、社会的にもよい活動、つまりソーシャルグッドになります。
- しかしアドバイザーの人数が増え、またSNSなどでひとつの情報が多くの方に短時間で拡散するようになると、従来よりも「最新のアドバイス」の賞味期限が短くなるため、アドバイス内容がすぐに陳腐化してしまい、アドバイザーは仕事を失います。
- そのため、生き残りや差別化を図り、端的に言えば「微妙なアドバイスが生まれる」「なんとなくメディア受けしそうなアドバイスが拡散する」そうした状況に発展し、むしろアドバイザーの存在が「ソーシャルバッド」になってしまう、と言うことが起こりえます。
- インターネットやSNSが発展する前は、最新情報を得られる媒体や機会は限られていましたので、「オラが街のアドバイザー」という形で、距離的に棲み分けができました。しかしインターネットの力で世界が狭くなった昨今において、とりわけオンライン上でアドバイザーが生き残ろうとすると、少々極端な方向に走らなければならない状況なる、これはあり得ます。そしてこれに対する解決策はありません。
防災アドバイザーの役割とは
- ここからは、私自身への戒めと自戒も兼ねてのお話なのですが、
- 防災アドバイザーが行うべきソーシャルグッドな活動、目指すべき方向性のひとつとして、「防災アドバイザーを不要とする社会を作る」活動が挙げられると思います。
- 「目からうろこ」「ためになった」防災アドバイスとは、つまり効果があるが知らなかったこと、命にかかわるが意識していなかったことです。こうした状況は本来望ましい姿ではありません。
- 知っておかなければ命にかかわる知識は、義務教育で子どもにしっかり教える。アドバイザーではなく学校の先生が常識として教えられるように。その上で、大人達にも同じような話をする。
- あるいは知らなくても命にかかわらない状況にする、これは例えば建築基準法で住宅の耐震性を縛りに行くとか、物件を借りる際の告知義務としてハザードマップの状況を説明するとか、治水工事で堤防を頑丈にしてそもそも洪水を起こさないようにするとか、社会的に有益な防災対策を進展させるような働きかけをするという活動です。
- 時代の変化や技術の進歩と共に、防災上で知るべき知識は移り変わります。これをいち早く察知し、社会全体へ周知する、それが防災アドバイザーの役割ですが、同時にこのアドバイスをしなくても大丈夫な世の中になるよう、長期的な視点での働きかけも行う、そうした意識が重要なのだろうと思っています。
本日も、ご安全に!
ということで、本日は「防災アドバイザーの社会的な役割」に関するお話でした。
- ここだけの話、まだ誰も知らない情報、飛伝の書、こうしたアドバイスは受けますし、こうしたネタをたくさん持っていると仕事も増えます。
- ただ、それでいいのか、という自問自答を忘れてはならないと、個人的には思っています。実験して得られた新しい防災ネタは、できればガンガン普及させて常識にしてしまう、そういう健全な活動を目指したいなと思い、本日は半分自分毎のようなお話をさせていただきました。
それでは皆さま、本日も引き続き、どうぞご安全に!