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Voicyそなえるらじお #376 タワマン火災…99回の空振り避難は100回目の安全を保証しない

最終更新日:

執筆者:高荷智也

Voicyそなえるらじお #376 タワマン火災…99回の空振り避難は100回目の安全を保証しない

おはようございます!備え・防災アドバイザー高荷智也がお送りする「死なない防災!そなえるらじお」、6月15日(水)、本日も備えて参りましょう!

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本日のテーマは「タワーマンション火災」に関するお話です。

  • 一昨日、2022年6月13日の早朝5時前、東京都品川区にある44階建てのタワーマンションの、18階のベランダで火災が発生しました。
  • 東京消防庁の消防車両30台ほどが出動して消火活動に当たり、およそ90分後に消し止められました。
  • この火災では、出火元の部屋の住民など、4名が病院に搬送されましたが、死者はいないということです。
  • 早朝の火災でしたが、マンション住民のうち400名ほどが屋外に避難をしたということですが、逆に室内に留まり避難をしなかった方も多くいたということです。

タワマンは安全か危険か

  • さて、このニュースを耳にして、どんな感想を抱かれるでしょうか。
  • タワーマンションは火災の危険が大きいから、やはり危ない、住むべきでは無い。という印象はもちろんあると思いますが、同時に、
  • タワーマンションで火災が発生しても、燃え広がる危険は少ない、今回もすぐに消し止められて、結果的に避難も不要だった、安全である、ということも言えるかと思います。
  • タワーマンションに限らず高層建築物で恐ろしい災害は、火災です。火の回りが早く、一方で避難が遅れた場合は大惨事を招く恐れがあります。
  • そのため、高層建築物については、一般の建築物よりもかなり厳しい火災対策なされていて、出火しづらく、出火しても燃え広がりにくく、また消火を助けるための各種の設備が設置されています。
  • 例えば日本で一番タワーマンションが多い地域は東京で、都内では毎年100件以上のタワマン火災が発生しておりますが、建物がまるごと燃えて無くなったり、大勢の犠牲者が出るような大規模なタワマン火災というのは、まだ発生したことがありません。
  • タワマンで火災が起こると大変目立ちますし、メディア的にも数字の取れるニュースになりますので大きく報道されますが、大きな被害が出ていないという現状を考えれば、これは高層建築物に対して行われている、防火施策が上手くいっているという裏付けにもなります。

グレンフェル・タワー火災

  • 昨日6月14日は、ちょうど5年前、2017年にイギリスのロンドンにあった24階建てのタワーマンションで火災が発生し、建物が全焼、70名以上の死者が生じる大惨事となった、「グレンフェル・タワー火災」が発生した日です。
  • この建物は1974年に建てられたもので、防火設備が古かったり、建物の建築素材に燃えやすい素材が使われていました。イギリスの高層建築物には、法律でスプリンクラーの設置が義務づけられていますが、この義務づけは2007年以降の建物に限定されるため、これも火災を大きくした要因の一つと考えられています。
  • 日本のタワーマンションで同じような火災が発生した場合は、法律や建物の構造的に、おそらくここまで大きな被害にはなっていなかったと想定されていますが、高層建築物の火災対策が重要であるということを、改めて知らしめた火災事故でした。

避難をどうするか

  • ところで、一昨日6月13日に東京で発生したタワマン火災では、避難をしたひととしなかった人、判断が分かれたと報道されています。
  • タワマンをはじめとする高層建築物で火災が発生した場合、とにかく重要なことは早く地上へ逃げることです。火災の炎と煙は、基本的に火元から上の階に向かって行きますので、火元よりも下に逃げることが何よりも重要ですし、最終的に建物全体に火が回る可能性を考慮すると、地上へ避難することが必要になります。
  • 高層建築物には、火災の炎が回り込まないような対策が様々に行われていますが、これはあくまでも時間稼ぎであり、消火活動に手間取ったり、火災の規模が大きくなれば最終的には燃えてしまいます。
  • そして、その時時の火災が、どのくらいの規模になるかは分かりませんので、高層建築物で火災に遭遇した場合は、どのような状況であっても地上へ避難しなければならないのです。
  • 火災発生時はエレベーターが使えないため、基本的には非常階段をおります。高層建築物には非常用エレベーターの設置が義務づけられていますが、これは消防活動用のエレベーターであり、避難には使えません。
  • 火の周りが早く、非常階段がすでに煙で塞がっている場合は、下ではなく屋上に逃げてヘリコプター救助を待つか、部屋の中に立てこもって隙間を全て塞ぎ、火災の鎮火や救助を待つことになりますが、基本は地上への避難が原則です。

99回の空振りと1階の本番

  • ただ、現実問題として、タワマン火災が大規模化した事例は今のところほとんどなく、結果だけをみれば避難が不要であった火災が大部分を占めます。
  • これは、大雨で洪水の危険がある際に、避難指示が出されたが、幸運にも空振りとなった多くの事例。大地震が発生して海岸から離れたが、津波が生じなかった事例、などに繋がるところがあります。
  • 災害が発生した際、その場に留まると命に危険が生じる場合は、避難することが重要となります。ただ、現実的には、多くの災害において、結果的には避難が不要だった、警告が空振りとなるケースが多く、これが繰り返されるにしたがい、避難なんてしなくてもいい、どうせ今回も空振りだ、という意識が広がり、
  • そして99回の空振りを繰り返し、100回目の警告で、いよいよ大規模災害が発生して、これまで通り避難しなかった方々が命を落とす。あるいはこうした方を救助しに行った消防士が命を落とす、ということに繋がるのです。
  • 津波や洪水の浸水想定区域、土砂災害の警戒区域、そしてタワーマンション、災害や火災が大規模化した場合は、避難しなければ死んでしまいます。
  • これまでは全て避難が空振りだったかもしれませんが、次が地獄の扉が開く本番かもしれません。それでも高をくくって逃げないという選択をするか、あるいは不便を承知で避難するか、その選択は本人の自由ですが、99回の安全は100回目もそうである保証には繋がらない、ということは意識しておきたいところです。

本日も、ご安全に!

ということで、本日は「タワーマンション火災」に関するお話でした。

  • ところで、高さ11階以上の建物では、消防法でじゅうたんやカーテンの素材を、防炎素材にすることが法律で義務づけられています。1階に住んでいても同じです。
  • 個人の住宅に消防が立ち入り検査をすることはないため、違反していてもバレることはほぼありませんが、消防法などでタワマン火災を防ぐ取り組みをしていても、個々人が対策を怠っていては意味がありません。自分一人くらいは、と思わず正しい防災対策をすることが重要ですね。

それでは皆さま、本日も引き続き、どうぞご安全に!

サイト管理者・執筆専門家

高荷智也(たかにともや)
  • ソナエルワークス代表
  • 高荷智也TAKANI Tomoya
  • 備え・防災アドバイザー
    BCP策定アドバイザー

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