Voicyそなえるらじお #372 防災的に重要なソーラーパネル…環境負荷や廃棄物問題はどうなのか?
最終更新日:
執筆者:高荷智也
おはようございます!備え・防災アドバイザー高荷智也がお送りする「死なない防災!そなえるらじお」、6月9日(木)、本日も備えて参りましょう!
#環境にいいこと
本日のテーマは「ソーラーパネル」に関するお話です。
- 本日はVoicyの週次ハッシュタグ企画から、「#環境にいいこと」というテーマのお話。防災領域で環境といえば、ソーラーパネルの存在が欠かせません。
- 例えば住宅の屋根に設置するソーラーパネル、燃料無しで電力を生み出すのでエコ、長期間使えば電気代もお得に、そして災害時にも電気が使えるので防災的にもよい、こうした特徴はよく耳にするところです。
- 一方で、ソーラーパネルは製造時に大量のエネルギーを使うので実は環境に悪いとか、廃棄物の問題があるとか、台風でむしろ吹き飛ばされて危険だとか、新疆(しんきょう)ウイグル地区の人権問題があるから容認されないとか、様々なネガティブ要素に関する話も耳にします。
- 実際のところはどうなのでしょうか。
ソーラーパネルはエコかエコでは無いのか?
- まず、ソーラーパネルは製造時にエネルギーをたくさん使うので、実はエコでは無いという指摘については、完全なデマです。
- ソーラーパネルを作成するために必要なエネルギーは、ソーラーパネルがおおよそ2~3年で発電するエネルギー量に等しいですので、それ以上の期間パネルを使えば、環境収支的には黒字になります。
- またソーラーパネルは電気を作るための燃料がいりませんので、その点は火力発電などと比較して圧倒的に環境負荷が低いと言えます。
太陽光パネルと廃棄物の問題は
- 次に環境汚染の問題としていわれる、ソーラーパネルには、鉛、セレン、カドミウム、ヒ素などの有害物質が含まれており、廃棄する際に重大な環境汚染を引き起こすと言うことが最近よく言われるようになりました。
- まず前提として、今国内に設置されている数多くのソーラーパネル、この大部分にはセレン、カドミウム、ヒ素は含まれていません。
- ソーラーパネルには大きく分けると種類が3つあります。まず現状のシェアの大部分を占めるシリコン系のパネル。近年性能が向上して使われるようになってきた化合物系のパネル。そして研究途上の有機物系のパネルです。
- 今、身近で目にするパネルのほぼ全ては、昔から作られているシリコン系のパネルですが、これに含まれる有害物質は鉛だけです。また鉛はガッツリ大量に使われているのではなく、パネルの表面によく見ると入っている細い線、これは銀・銅・錫などが主成分ですが、少量の鉛が添加剤として使われていることがあります。
- そして近年では、この鉛の使用量を法律的な基準ではゼロにしているパネルも普及しています。
- そして問題となるセレン、カドミウム、ヒ素などの物質は、化合物系と呼ばれるパネルにのみ使われています。GaAs(ガリウムひそ)系のパネルにはヒ素が、Cd-Te(テルル化カドミウム)系のパネルにはカドミウムが、セレン系のパネルにはセレンが用いられています。
- これらのパネルは普及率が低く、身近にはほぼ存在しません。またカドミウムを使っているパネルは環境負荷が多いため、日本国内でこれを製造しているメーカはありません。
- そのため、鉛を使っている太陽光パネルはたくさん存在するが、今後に関しては鉛フリーのパネルを選択することで影響をなくすことが重要ですし、
- セレン、カドミウム、ヒ素を使っている太陽光パネルは、確かに存在はしますが、シェア的には圧倒的に小数であるため、これが全てのソーラーパネルに共通する問題であると表現するのは誤りです。もちろんこれらを使っている小数のパネルを廃棄する際には、適切な処理が必要ですが、
- そもそもこうした有害物質は、家の中にある多くの家電やスマホをはじめとする電子機器に使われているありふれた素材ですので、ソーラーパネルだけの問題ではないということも言えます。
廃棄物の問題はどうか
- では廃棄物の問題はどうでしょうか。
- ソーラーパネルの構成要素としては、重量比で半分以上がガラスで、残り半分は、外側のフレーム素材であるアルミニウムと、プラスチックでできています。太陽電池本体の割合は全体の5%程度です。
- そして、ガラス、アルミニウム、プラスチックはいずれもありふれた素材であるため、リサイクルしてもほとんど利益が見込めず、現状は粉砕して埋め立てて処分されています。
- 今国内にあるパネルのほぼ全ては、シリコン系のパネル、鉛が使われている可能性のあるパネルですので、これの処理は適切に行う必要がありますし、ガラス、アルミニウム、プラスチックについても、ソーラーパネルの廃棄量が増えるにしたがい、リサイクルの環境を整備することが求められます。
- ただこうした廃棄物問題も、なにもソーラーパネルに限った話ではありません。自動車のスクラップ、建築物の解体、家電や家具の廃棄などと同じ問題です。問題は問題ですが、社会全体の課題として取り組む必要があるということになります。
ソーラーパネルは災害に弱いのか
- ではソーラパネルが台風で飛ばされたり、先日も発生しましたが大規模な雹などの影響で破壊されたり、という問題はどうでしょうか。
- これはソーラーパネルそのものと言うより、施工の問題であると考えます。住宅の屋根などに適切に設置されているソーラーパネルは、基本的に台風の直撃を受けても飛びません。屋根が吹き飛ばされるほどの強風になると分かりませんが、その場合はパネルと一緒に屋根が吹き飛びますので、パネルだけの問題にはなりません。
- また雹などの落下物があると、確かにパネルが破壊されます。ただ、もし屋根の上にパネルがなければ、パネルの代わりに屋根がボッコボコに破壊されることになりますので、むしろパネルをつけることで屋根が長持ちする効果というものが得られます。これは塗装などの頻度を下げるというメリットもあります。
- 防災的には、ソーラーパネルが二次被害をもたらすデメリットよりも、停電時に使える電源としてのメリットの方が上回ると考えています。
- パネルの吹き飛ばされ、多くの場合問題になるのは、屋根などではなく、地上に設置されたパネルや、メガソーラーなどのパネルです。個人的には、ソーラパネルは分散型電源として、住宅の屋根などをメインに使っていくべきであり、
- 山を切り開いて建てるメガソーラーなどは、ちょっとイマイチだなと思っていますので、屋根に限って言えばもっと普及してもよいのではないでしょうか。
本日も、ご安全に!
ということで、本日は「ソーラーパネル」に関するお話でした。
- 実はまだ話半分ですので、明日続きのお話をします。
- ソーラーパネルと蓄電池の関係性等です。
それでは皆さま、本日も引き続き、どうぞご安全に!