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Voicyそなえるらじお #712 ソウル・イテウォン群集雪崩から1年、死者159名の教訓に学ぶ

最終更新日:

執筆者:高荷智也

Voicyそなえるらじお #712 ソウル・イテウォン群集雪崩から1年、死者159名の教訓に学ぶ

おはようございます!備え・防災アドバイザー高荷智也がお送りする「死なない防災!そなえるらじお」、10月31日(火)、本日も備えて参りましょう!

ソウル梨泰院雑踏事故から1年

本日のテーマは「群衆雪崩」のお話です。

  • 1年前のハロウィン、2022年10月29日の夜、ソウルの繁華街梨泰院(イテウォン)で、日本人2名を含む159名の死者が発生した、群集雪崩による大規模な事故が発生しました。
  • 本日10月31日はハロウィン当日、改めてこのお話をいたします。

ソウル梨泰院雑踏事故

  • ソウル梨泰院(イテウォン)雑踏事故は、狭い領域に人が集中しすぎることで生じる「群集雪崩」により生じた事故です。
  • 2022年10月29日土曜日の夜、ソウル市内の繁華街である梨泰院では、東京渋谷のような、路上でのハロウィンパーティーが行われていました。新型コロナウイルスによる行動制限が3年ぶりに解除されたハロウィンの週末ということもあり、普段よりも多くの人手がありました。
  • 現場となったのは、繁華街・梨泰院にある、幅3.2メートル・長さ40メートルの、急な狭い坂道でした。この狭い路地に数千人の人が集中し、坂を登る人・下る人が集まりすぎ、進むことも戻ることもできない状態となりました。
  • そして深夜22時過ぎ、坂の上の方から、人々が次々と転倒し、押され、逃げることも避けることもできなくなった、坂の中腹辺りにいた300名ほどが折り重なるように潰れ、多数が呼吸困難状態となり、大量の圧死者が発生したと想定されています。
  • 結果、日本人2名を含む159名が命を落とす大惨事となりました。通常の自然災害であれば死者の多くは高齢者に集中しますが、事故現場周辺には若い方が多くいたということもあり、死者の7割が20代の若者であったことは、大変に痛ましい結果であったといえます。

群集雪崩の発生

  • 群集雪崩は、目安として、1㎡の範囲、畳半畳分程度の空間に、人が10名以上集まる状態になると、発生の恐れが高まります。
  • 梨泰院(イテウォン)で事故が発生した際には、1㎡辺りなんと17名もの人が存在する状態になったということですが、想像できるでしょうか。
  • 畳半畳より少しだけ広い空間に、17名の大人が寿司詰めになる、自分の意思では文字通り指一本動かすことができず、ひとたび転倒が始まればなすがまま、大事故に発展するのは容易に想像できます。

群集雪崩の恐ろしさ

  • 群衆雪崩の恐ろしさは、それが発生するまで、自分自身が当事者になっていることに気づきづらいという点にあります。
  • 例えば、閉鎖空間に人が寿司詰めになる場合は、そこが危険な状況になる可能性を察知できますので、回避行動を取ることができます。
  • しかし屋外の「その辺の路上」の場合、そこに人が集まって群衆雪崩が生じる、ということがイメージできないため、気づいた時には手遅れになってしまいます。
  • ただ歩いていただけなのに、気がつくと身動きが取れなくなっており、なにか危ないと思ってそこから立ち去ろうにも、すでに自分の意思では行動不能となり、そして誰かの転倒やパニックの発生を引き金に、群衆雪崩に発生してしまうという流れです。
  • 屋内の閉鎖空間や、いかにも人が集まりそうな広場などでは、ある程度人混みに警戒ができますし、警察や警備会社も人の誘導ができますが、その辺の路上は無限に存在するため、気がつくと手遅れになっているという点が、群衆雪崩から逃れることを難しくしています。
  • 毎日通勤・通学・買い物などで出かけているその辺の屋外、少し細い路地や通路はないでしょうか。そしてある日突然、イベントや災害でそこに人が多く集まり、普段通りに通行しているつもりが、気づいた時には身動きがとれなくなっている、これが群衆雪崩の恐ろしさなのです。

大地震による群衆雪崩

  • 群衆雪崩は、首都直下地震を始めとする、大都市圏での大地震などでも発生することが想定されています。
  • 大量の徒歩帰宅者が路上を埋め尽くし、しかしガレキや火災の発生で通路が塞がれている、しかしそれに気づかない人達が早く移動したいのでドンドン通路を埋める。
  • 最前列の人達はそれ以上進めないことが分かっていますが、それを後ろの集団に伝えるすべがないため、誰も動けなくなる。そこに地震の余震などが発生してパニックが起きたら、あっという間に群衆雪崩の発生となります。こうした状況が、例えば東京の至る所で発生する可能性が指摘されているのです。
  • そのため、特に大都市で大地震が発生した場合は、すぐに帰宅を始めず、周囲の状況が確認でき、落ち着いた状況になるまでは職場や学校、外出先に施設にとどまることが推奨されています。
  • 大地震直後に歩いて帰ると、死ぬ可能性がある、ご注意ください。

群衆雪崩をどう回避するか

  • 群衆雪崩を回避する根本的な要因は、人混みにいかないという点に尽きるのですが、まったく外出しないわけにもいかないですし、イベントや人の多い場所を生涯避け続けるというのも難しいでしょう。
  • ただ、人が集まれば必ず群衆雪崩が生じるというわけではなく、「特定の一カ所」に、「尋常ではない人数」が集まるなど、条件がそろうことが必要です。具体的には、1㎡あたり10名以上、ざっくり畳半畳に大人が10人程度集まる状況が、広範囲で生じるほどの状況が必要になります。文字通り指一本動かせないレベルの、最悪の満員電車。このような状況にその辺の路上に巻きこまれた場合は、カウントダウンが生じています、逃げられるならば、押さず、走らず、ゆっくり、その場から離れてください。こうした状況を回避するための意識を払うことが、群衆雪崩の回避につながると言えるでしょうか。
  • まず大地震直後はすぐに移動をしないというのは基本ですが、
  • 人混みを歩く際には、できるだけ前後の間隔を取り、過剰な密集を生まないようにする。人の興奮やパニックを煽るような要素がある場合は、野次馬として参加しに行くのではなく速やかにその場を離れる。人を押さない、慌てない、走り出さない…このくらいしかありません。
  • 事故の再発を、国内外問わず願うばかりです。

本日も、ご安全に!

ということで、本日は「群衆雪崩事故」のお話でした。

それでは皆さま、本日も引き続き、どうぞご安全に!

サイト管理者・執筆専門家

高荷智也(たかにともや)
  • ソナエルワークス代表
  • 高荷智也TAKANI Tomoya
  • 備え・防災アドバイザー
    BCP策定アドバイザー

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