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Voicyそなえるらじお #723 大自然の神秘と大きな被害をもたらした1990年の雲仙岳噴火

最終更新日:

執筆者:高荷智也

Voicyそなえるらじお #723 大自然の神秘と大きな被害をもたらした1990年の雲仙岳噴火

おはようございます!備え・防災アドバイザー高荷智也がお送りする「死なない防災・そなえるらじお」、11月17日(金)、本日も備えて参りましょう!

長崎県の最高峰

本日のテーマは「雲仙火山の噴火」のお話です。

  • 本日11月17日は、島原防災の日です。
  • 1990年(平成2年)の11月17日、長崎県の島原半島にある雲仙火山が、198年ぶりに噴火活動を開始したことにちなんでいます。この噴火活動では、とくに1991年に発生した大規模な火砕流により大きな被害が発生し、これを忘れないようにする日として、長崎県島原市が制定したのが11月17日の「島原防災の日」です。

雲仙火山

  • 九州には17の活火山がありますが、そのうちのひとつが長崎県の島原半島中央部にある雲仙岳です。
  • 雲仙岳は、島原半島の中央部にある大小20以上ある山々の総称で、火山の名称としては雲仙火山と呼ばれています。
  • 今から50万年前に海底火山として誕生した雲仙岳は、その後噴火を繰り返して徐々に陸地を作り、40万年ほど前に北側で陸地とつながり、島から半島になりました。
  • 歴史時代の噴火としては、1663年に発生した寛文(かんぶん)の噴火、1792年に発生した寛政(かんせい)の噴火があります。
  • 特に1792年の噴火では、雲仙岳を構成する山のひとつ、眉山(まゆやま)で大規模な山体崩壊、山そのものが崩れる最悪の土砂災害が発生し、大量の土砂が有明海になだれ込み、大規模な津波が発生。有明海沿岸に高さ数メートルの津波が押し寄せ、全体で15,000人以上が死亡する、大惨事をもたらしています。この山体崩壊と津波は、通称「島原大変肥後迷惑」と呼ばれていますが、この噴火から198年後に発生したのが、本日の主題、1990年の雲仙岳における平成の噴火です。

平成の噴火

  • 1990年の噴火は、前兆現象としては実に30年以上も前から、群発地震や火山性ガスの噴出というかたちで生じていたと言うことですが、実際に噴火が発生したのは1990年11月17日のことでした。
  • この噴火、当初は熱水や噴煙だけの小規模なもので、そのまま終息するかという程度の規模でしたが、翌年1991年2月に再度噴火を開始、その後も徐々に噴火の規模が拡大し、5月に入ると火口周辺に溶岩ドームが形成されました。
  • この溶岩ドームにはマグマが大量に供給されて成長を続け、最終的には平成新山と呼ばれる新しい山を形成するに至っています。
  • 元々雲仙岳の最高峰は、標高1,359mの普賢岳で、平成の噴火が生じたのもこの雲仙普賢岳の周辺でした。しかし平成新山が大きく成長し、最大では標高1,486m、その後崩落などが生じて現在の標高は1,483mになり、これが現在長崎県の最高峰となっています。
  • 噴火により生じた新しい山が、リアルタイムで都道府県最大の山に成長するという様は、噴火により新しい陸地が生まれる、まさに地球は生きているということを直接観測できる素晴らしい機会となった訳です。

大火砕流

  • そんな素晴らしい自然の営みを見せてくれた雲仙岳の噴火活動ですが、もちろん良い話だけではなく大小多くの被害ももたらしています。その最たる物が、1991年6月3日発生した、雲仙普賢岳の大火砕流です。
  • 平成新山の元となった溶岩ドームからは、度々火砕流が発生していましたが、特に6月3日の火砕流は規模が大きく、火砕流本体から先行する火砕サージと呼ばれる爆風が、メディア関係者や取材陣の陣取っていた地域に流れ込み、戦後初の大規模な火山災害として記録される、43名の死者・行方不明者を生じさせる大惨事となりました。 
  • これが、雲仙普賢岳の大火砕流と呼ばれる現象です。

恐怖の火砕流

  • ところで、火砕流というのはどのような現象なのでしょうか。
  • 火砕流は、固体と気体が混合されている粉体流で、軽石・火山灰・岩片・火山ガスの混合体です。
  • 時速100キロを超える速度で疾走し、
  • 温度は数百度に達するため、経路上のものは全て焼き尽くされ、
  • 通過後は数m以上の堆積物で舗装され、文字通り何も残らなくなります。
  • さらに、火砕流本体から分離した高温体で、密度の低い「火砕サージ」と呼ばれる現象もあり、まず火砕サージが周囲を吹き飛ばしながら疾走し、その後本体である火砕流が全てを焼きつくし、埋め尽くしながら時速100kmで移動する、という恐ろしい現象が、火砕流です。
  • 火砕流や火砕サージは、基本的に巻き込まれたら死にます。雲仙普賢岳の火砕流では、この現象で43名の方がほぼ即死されました。
  • また火砕流は高温ですので、建物や車の中に逃げても焼け死んでしまうため、命を守るためには、巻き込まれる前に逃げるしかありません。
  • 噴火と同時に走って逃げることが、火砕流から身を守る唯一の方法となります。
  • あまり体験する機会はないと思いますが、

本日も、ご安全に!

ということで、本日は「雲仙火山の噴火」のお話でございました。

  • 告知です
  • 2023年11月25日(土)20:54~
  • テレビ朝日系『タモリスーテション』
  • アルピニストの野口健さん、富士山防災の専門家の藤井敏嗣先生と共に、家庭の防災に関する解説担当として、スタジオでお話をさせていただきます。近隣住民は?首都圏住民は?何をしておくべきか、ぜひご覧下さい。

それでは皆さま、本日も引き続き、ご安全に!

サイト管理者・執筆専門家

高荷智也(たかにともや)
  • ソナエルワークス代表
  • 高荷智也TAKANI Tomoya
  • 備え・防災アドバイザー
    BCP策定アドバイザー

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