Voicyそなえるらじお #751 「南海トラフ地震臨時情報」とは?誰が何をしたらいいの?
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執筆者:高荷智也
おはようございます!備え・防災アドバイザー高荷智也がお送りする「死なない防災・そなえるらじお」、12月27日(水)、本日も備えて参りましょう!
認知率3割の「南海トラフ地震臨時情報」
本日のテーマは「南海トラフ地震臨時情報」に関するお話です。
- 昨日12月26日のニュースで、南海トラフ地震臨時情報の認知度が低いという報道がありました。
- この調査は内閣府が実施したもので、津波からの避難意識に関するWEBによる住民アンケートの結果ということです。全国3万件の回答が集められたということですが、南海トラフ地震の津波被害を受ける想定になっている地域に限定しても、「南海トラフ地震臨時情報」の認知度は28.7%にとどまるということです。
- ということで、本日は改めて、「南海トラフ地震臨時情報」のお話をしたいと思います。ちなみに、YouTubeそなえるTVでも詳しく解説した動画を過去に公開していますので、合わせてご覧ください。チャプター2のURL欄にリンクを貼っておきます。
南海トラフ地震臨時情報とは
- 南海トラフ地震臨時情報は、静岡県沖の駿河湾から、伊勢湾沖、紀伊半島沖、四国沖までの、南海トラフ全域を対象とした、「南海トラフ地震」発生の可能性の高まりについて知らせる仕組みで、気象庁が運用している制度です。
- この制度がスタートしたのは2019年(令和元年)ですが、まだ一度も発表されたことはない仕組みです。とはいえ運用に不備があるわけでは無く、いつでも発表される可能性がある、スタンバイ中の仕組みとなります。
- 南海トラフ地震臨時情報は、「この後、南海トラフ地震が発生するかもしれないので、地震の揺れや津波に注意して下さい」という状況で発表されます。特に、津波の被害を受ける可能性がある地域にお住まいの方については、いつでも避難ができるように、身の回りの確認や、室内の地震対策を行うなどの対応が必要になります。
南海トラフ地震臨時情報(調査中)について
- 南海トラフ地震臨時情報は、速報と本チャンの2段階で発表される計画になっています。まず速報として出されるのが、南海トラフ地震臨時情報(調査中)です。
- 南海トラフ地震臨時情報(調査中)は、南海トラフ地震の想定震源域の範囲内で、M6.8以上の地震が発生した場合。もしくは、ひずみ計と呼ばれる観測器が、大地震の前兆現象とみられる変化を検知した場合などに発表される、速報となります。
- 地震発生、または前兆現象の検知から、最短約30分後に発表され、有識者による「南海トラフ沿いの地震に関する評価検討会」が開催され、発生した現象を評価することになっています。
- この時、ひずみ計による前兆現象の検知や、その他の怪しい状況を見つけた場合は、まだ地震が起きる前ですので、いわゆる予知情報に近い情報となります。もしかするとこの後、南海トラフ地震が発生するかもしれないので、念のために注意や準備を始めましょうね、という意味です。
- 一方、実際にM6.8以上の地震が発生して、南海トラフ地震臨時情報(調査中)が発表された場合、この地震が海側ではなく陸地側で発生したものですと、すでに揺れや津波の被害が発生している可能性もあります。この場合でも、すでに被害は生じていますが、この後さらに大きな本番が来るかもしれないので、まだ被災地になっていない地域も注意しましょうね、という意味になります。
- ちなみに、地震が発生して(調査中)が発表される場合、プレート境界の深い場所で生じる、いわゆる異常震域の地震は除かれ、比較的震源の浅い地震のみが調査の対象となります。
南海トラフ地震臨時情報(調査終了)について
- 有識者による検討会で、特に異常なしと判断された場合は、南海トラフ地震臨時情報(調査終了)が発表されて、警戒態勢は解除されますが、これはもしかすると本番が来るかもしれない、と判断された場合は、次のステップの情報が発表されます。
- 具体的には、
- 南海トラフ地震臨時情報(巨大地震注意)もしくは、
- 南海トラフ地震臨時情報(巨大地震警戒)の発表です。
南海トラフ地震臨時情報(巨大地震注意)について
- まず、ひずみ計と呼ばれる観測器で得られた情報から、ゆっくりすべり(スロースリップ)と呼ばれる前兆現象が確認された場合は、南海トラフ地震臨時情報(巨大地震注意)という情報が発表されます。
- あるいは、南海トラフ地震の想定震源域で、M7.0以上~M8.0未満の地震が実際に発生した場合も、南海トラフ地震臨時情報(巨大地震注意)が発表されます。
- ゆっくりすべり(スロースリップ)の場合は、まだ地震は発生していませんので、かつて東海地震を対象に運用されていた「警戒宣言」と呼ばれる、予知情報に近い情報の発表となります。ただ、具体的にいつ頃本番の地震が発生するかまでは分からないため、実際に本番を迎えるか、前兆現象が終息するまで、(巨大地震注意)が継続されます。
- 一方、実際にM7.0以上~M8.0未満の地震が発生した場合は、震源の場所によってはすでに大きな被害が発生している恐れもありますが、これを「前震」として、このあとより大きな「本震」が発生するかもしれない、という意味で注意が促されます。
- ちょうど、2011年の東日本大震災の2日前、3月9日にM7.3の大きな地震が発生し、その2日後に同じ場所で、M9.0の本震が発生していましたが、このような教訓を受けて、南海トラフ地震の「前震」の恐れがある地震が発生した際に、注意を促す目的となります。この場合は、1週間、(巨大地震注意)が継続されて、本番を迎えるか、あるいは何も起きなかった場合は、警戒が解除されることになっています。
南海トラフ地震臨時情報(巨大地震警戒)について
- 一方、南海トラフ地震臨時情報(調査中)による検討会にて、南海トラフ地震の想定震源域で、M8.0を超える地震が発生したと判断された場合は、最大級の警戒を促す、南海トラフ地震臨時情報(巨大地震警戒)が発表されます。
- M8.0以上の地震がすでに起きた場合ですので、被災地となった地域では、揺れと津波ですでに甚大な被害が生じていることが想定されます。
- しかし、この地震が南海トラフ全体ではなく、駿河湾沖の東海地震、紀伊半島沖の東南海地震、四国沖の南海地震、いずれかの単独発生だった場合は、まだ揺れていない残りの地域で、連続的に巨大地震が発生する恐れがあり、これにたいする注意を促すのが、南海トラフ地震臨時情報(巨大地震警戒)の役割となります。
- これは、前回の南海トラフ地震、昭和東南海地震と南海地震が2年ズレて発生した教訓。さらに、前々回の南海トラフ地震、安政東海地震と南海地震が32時間ズレて発生したことにちなんだ警戒態勢となります。
- 過去2回と同様、先に東海・東南海地震が発生した場合、すでに静岡・愛知・三重辺りは地震の揺れと津波で壊滅的な被害を受けている可能性があります。
- この時、まだ四国沖の南海地震が発生していない場合、四国沿岸・大阪湾・瀬戸内海は大きな被害を免れているかも知れませんが、過去2回の南海トラフ地震では、連続して南海地震が発生し、大きな被害が続きました。
- そのため、まだ揺れていない地域について、特に津波がすぐに到達するエリアに対して、1週間事前避難を行うようにと呼びかけられるのが、南海トラフ地震臨時情報(巨大地震警戒)です。
発表時の対応について
- 南海トラフ地震臨時情報(巨大地震注意・巨大地震警戒)が発表された際には、すでに大きな地震が発生している場合は、被災地においてもそれ以外の地域においても、大きな揺れと津波への警戒が必要となります。
- 被災地においては、1回目の地震で建物などに大きな被害が生じている場合や、津波の警戒区域に自宅がある場合は避難をする。室内の片付けなどをする場合は連続する本震に警戒するなどの対応が必要ですし、
- まだ大きな被害を受けていない地域についても、津波避難の準備や、室内の地震対策の見直しを、できる範囲で行う、緊急度の高い防災訓練として取り組むのがよいと思われます。
本日も、ご安全に!
ということで、本日は「南海トラフ地震臨時情報」でございました。
それでは皆さま、本日も引き続き、ご安全に!