Voicyそなえるらじお #752 「足るを知る者は富み、努めて行う者は志有り」で行う防災対策
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執筆者:高荷智也
おはようございます!備え・防災アドバイザー高荷智也がお送りする「死なない防災・そなえるらじお」、12月28日(木)、本日も備えて参りましょう!
足りうるを知る
本日のテーマは「防災の考え方」に関するお話です。
- 今回は、古代中国の思想家、老子の教えにある、「足るを知る(たるをしる)」から防災の考え方についてお話をしたいと思います。
足るを知る
- 「足るを知る」という言葉、単体で使われることも多いですが、出典にさかのぼれば、「足るを知る者は富み、努めて行う者は志有り。」という言葉の一部です。
- この文章の意味合いとしては色々な解釈がありますが、「満足することを知っている人間が、精神的に本当に豊かな人間であり、さらに努力を続ける人間は、それだけで自らの目的を果たしている。」という意味になります。
- 私個人的にも好きな考え方です。自分が信じたこと、正しいと思うことを、コツコツと継続しよう、それはきっと素晴らしいことだし、それだけで得られる物もある。しかし、欲望のおもむくままに全てを求めるのでは無く、努力と継続の過程で得られる「現状」に対して、良いところや満足できることをたくさん見つけて、心を豊かにしよう。…というような考え方で、理解しています。
- たまに、足るを知る、というひと言だけを取り出して、「お前はせいぜいこのくらいで満足しておけよ」という、ネガティブな意味合いを感じ取り、足るを知る、という言葉を嫌う方もいるそうですが、「向上心や上を求める気持ちは常に持ちつつ、その過程となる現状にも満足したらいいよね」と考えたらいいのではないかなと思っています。
足るを知る防災
- 足るを知るは、防災においても重要な考え方だと思っています。
- ひとつは精神的な安定を得るための考え方です。
- 防災対策をがんばる方の中には、私もそうですが、臆病で怖がりの方が多いように感じます。地震、噴火、台風、異常気象、テロや戦争、感染症パンデミック。自分の周りで生じる様々なことが怖くてしかたありません。
- そのために防災をがんばるのですが、はたしてどこまで行えばよいのか、終わりのない泥沼にはまって、がんばるほどにゴールが遠くなる…、そんな悩みを持つ方もいるのではないかと思います。
- ここで登場するのが、「足るを知る者は富み、努めて行う者は志有り。」です。いつ発生するか分からない自然災害に対して、日々防災意識を持ち、コツコツと対策を継続する人は、それだけで命を守るという重要な目的に大きく近づいています。そして、最低限のことを行ったら、自分の対策を信じてドンと構え、やることはやったから、きっと大丈夫と思う幸せな気持ちを持つことができる。はずです。
- 防災を突き詰めると、核シェルターを地面に埋めるとか、日本を脱出するための自家用ジェット機を持つとか、地球を離脱するための宇宙ロケットを手に入れるとか、対策にはいくらでも上の上が出てきます。
- しかし、日々防災情報を収集し、コツコツ対策をしている方は、日本が沈没するとか地球が爆発するとか、そういうイレギュラーな事態を除けば、多くの自然現象を、災害にしない準備はできているものです。これが防災的な「足るを知る」ではないかと思います。
足るを知る防災グッズ
- 足るを知る防災、もうひとつの考え方は、防災グッズの準備についての考え方です。避難所へ持って行く防災グッズ、在宅避難に備えて停電や断水が生じた自宅で過ごすための防災備蓄品、色々なものを準備する必要があります。
- この時、普段の生活水準を維持しようとすればするほど、準備すべき防災グッズの水準は上がって行きます。
- 周辺で停電が生じても、我が家は電気を使える様にする。周辺で断水が生じても、我が家は普段通りに水を使えるようにする。物流が停止して食料品や日用品が買えなくなっても、我が家は普段通りの生活を継続できるようにする。
- そのために、インフラを代替する道具や、防災備蓄品を準備する訳ですが、やろうと思えばどこまでも道具を増やすことができ、しかも核シェルター・自家用ジェット機・宇宙ロケットなどと異なり、そこそこ現実的な金額で、それなりの設備を準備することができてしまいます。
- しかも定期的に、新しい防災グッズや最新の備蓄品が登場しますので、これを追いかけ続けると、お財布に継続ダメージが生じ続けてしまいます。
- ここで登場するのが、「足るを知る者は富み、努めて行う者は志有り。」です。非常時にも平時と同じ水準の生活をおくろうとすると、多大な努力が必要となります。非常時の生活は永遠には続きません、命に支障が生じない範囲で生活水準を下げ、まずは無事であったことに満足し、今ある環境の中での最善を尽くす。…ということで、非常時の生活水準に完璧を求めすぎないようにする、という考え方が重要ではないかと思っています。
- もちろん様々な道具・備蓄品を用意できるならばそれにこしたことはありません。しかし、災害で命を守るという最大の目的を達することができれば、1週間くらい生活水準が低下しても、まあいいよね、という心持ちになることも、また重要ではないかと思うのです。
- あるいは、災害時の環境がどのようなものになるかは、実際に災害が生じてみなければ分かりません。そのため、各種の防災用品を、日々の努力の成果として準備しているのであれば、災害時に与えられた道具を活用することで、最大限の満足を得られたらいいよね、と考えてもよいかと思います。
- 「足るを知る者は富み、努めて行う者は志有り。」、平時にも防災対策にも、考えてみてください。
本日も、ご安全に!
ということで、本日は「防災の考え方」でございました。
それでは皆さま、本日も引き続き、ご安全に!