Voicyそなえるらじお #530 震度では表現できない?「長周期地震動」と「階級」の話
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執筆者:高荷智也
おはようございます!備え・防災アドバイザー高荷智也がお送りする「死なない防災・そなえるらじお」、2月2日(木)、本日も備えて参りましょう!
高層ビルの歴史は浅い
本日のテーマは「長周期地震動」のお話です。
地震の周期について
- 昨日2022年2月1日より、緊急地震速報で新しい情報が伝えられるようになりました。ビルやタワマンの高層階を大きく揺らす「長周期地震動」に関する警報です。
- 長周期地震動とは、大きな地震で発生する、周期の長い大きな揺れのことです。周期とは、地震の揺れが一往復するのにかかる時間のことですが、例えば地震が発生して「ガタガタグラグラ」と揺れます。この「ガタガタグラグラ」の「ガタ」「グラ」が周期です。
- 例えば1995年1月17日に発生した阪神淡路大震災…を引き起こした、兵庫県南部地震や、2016年に発生した熊本地震では、周期の短い短周期地震動が観測されています。短周期地震動は、1秒以下から数秒以下の周期で、「ガタガタグラグラ」と揺れる地震ですが、特に戸建てや中くらいの建物を強く揺さぶるという性質があり、実際多くの木造住宅などが破壊されました。
- なお、短周期地震動の中でも、1~2秒周期の地震動は「キラーパルス」と呼ばれ、特に木造の建物を破壊しやすい揺れとして恐れられています。
- 一方、2011年3月11日に発生した東日本大震災…を引き起こした、東北地方太平洋沖地震では、周期の長い長周期地震動が観測されています。長周期地震動は、数秒から数十秒の周期でゆっくりと揺れる地震で、「ガータガータグーラグーラ」と揺れる地震です。この地震は木造住宅などにはあまり被害を与えず、高層ビルの上層階などをゆっくり大きく激しく揺らす性質を持っています。
- 長周期地震動は短周期地震動よりも遠くまで伝わる性質を持っていまして、地震の震源地から数百キロ離れた場所の高層ビルを大きく揺らすことがあります。実際2011年の東日本大震災では、震源から700km離れた大阪市内の高層ビルなども大きく揺れ、被害が発生しています。
長周期地震動の震度について
- 長周期地震動では、地表や戸建てなどの低い建物はそれほど大きく揺れませんが、高層ビルはゆっくり大きく激しく揺れます。ところが、この高層ビル特有の大きな揺れは、地震の揺れの大きさでおなじみの震度で表すことができません。
- 地震の揺れの大きさは、震度1から震度7までの数字で表されていますが、これは主に地表や低い建物の1階などに設置された震度計による観測値ですので、長周期地震動の揺れの大きさを表現することができません。
- 例えば長周期地震動を伴う大きな地震が発生した際、震源から離れた場所の地上の「震度」が3から4程度と小さくても、長周期地震動に襲われた高層ビルの上層階では、地上で言うところの震度5から6という強い揺れに見舞われることがあります。しかし現状の震度は、地表の揺れを表現する手段なので、高層ビルの上層階の揺れの大きさを表す数字としては使えないのです。
- そのため、長周期地震動による高層ビルの揺れを表現する手段として、通常の震度とは異なる「長周期地震動階級」というものが作成されています。
長周期地震動階級の内容
- 長周期地震動階級は、1から4までの4段階の区分があります。これは地上で言うところの「震度」のようなものですが、震度ほにゃららではなく、階級ほにゃららと表現されます。
- 長周期地震動の階級1は、「あれ?地震?揺れてる?」というような大きさの揺れが生じ、窓のブラインドやペンダントライトなどが大きく揺れます。
- 階級2になると、「おっ!地震だ!あぁ~結構大きいね、窓から離れて!」というような大きさの揺れが生じ、キャスター付きの家具が動いたり、棚からものが落ちたりします。
- 階級3になると、「おっ!おぉ~、やばくない?やばくない?これ結構やばくない?」というような大きさの揺れが生じ、固定していない家具が動いたり、転倒し始めます。
- そして階級4になると、「やばい!やばい!窓から離れて!棚から離れて!机に潜って!ビル折れない?折れない?ヤバくない!」というような強い揺れに見舞われ、キャスター付きの家具がゴロゴロと室内を爆走し、固定していない家具の大半が移動したり転倒する大惨事となります。
緊急地震速報
- 従来から発表されていた緊急地震速報では、地表の震度のみが発表の基準になっており、長周期地震動による被害については触れられていませんでした。
- そして昨日2月1日より、緊急地震速報が対象とする揺れの種類に、この長周期地震動が追加され、地表はあまり揺れない地域においても、長周期地震動による高層ビルへの被害が想定される場合には、注意を促す緊急地震速報が発表されるようになりました。
- ということでこの詳細は次回のお話といたします。
本日も、ご安全に!
ということで、本日は「長周期地震動」のお話でございました。
それでは皆さま、本日も引き続き、ご安全に!