Voicyそなえるらじお #535 防災士必聴!災害と法律と組織のお話
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執筆者:高荷智也
おはようございます!備え・防災アドバイザー高荷智也がお送りする「死なない防災・そなえるらじお」、2月9日(木)、本日も備えて参りましょう!
眠気に負けないで
本日のテーマは「災害と法律と組織」のお話です。
トルコの大地震
- 日本時間で2月6日(月)にトルコで発生した大地震、まもなく発生から3日が経過しますが、すでに死者が1万人を超えているなど、大きな被害となっています。現時点で個人が行えることはありません、募金活動などが始まった段階で、気持ちを支援できるとよいかと思います。
防災士試験と法律
- 本日は、先日コメント欄でリクエストを頂いた話題、防災士試験における法律の勉強に関するお話を少々。
- 防災や災害の勉強は楽しい、でも法律のページになると意識を失う。こうした現象は、防災士試験に限らず様々な資格や検定において共通しています。法律の勉強は大変なのです。
- しかし日本は法治国家、国が税金を使ってなにかをしようとする場合は、法律がなければ何もできません。緊急自体に対する法律の制限のしんどさについては、映画「シン・ゴジラ」が上手に描いておりますので、ぜひ一度ご覧頂きたいと思います。あれはゴジラ映画でありながら、災害をテーマとした法律コメディの要素も強く持っている名作だと思います。
- ということで、趣味で防災対策をする場合には法律の勉強は不要ですが、防災士という資格を取ろうとする場合は、その根底となる法律の理解がある程度重要になります。
- ではどう勉強すべきか、これはなかなか難しいです。法律に関する解説ページには、睡眠魔法の呪文が埋め込まれているため、ここのテキストを読むのは早朝か午前中をおすすめします。
- また、法律の項目を全て頭に入れるのは難しいですし、防災的な優先度は低いですから、勉強をする場合はテキストを1~2回読み、後は試験対策ブックを全問正解するまで解くだけでよいと思います。練習問題から逸脱する試験問題はそうそう少ないはずです。
災害対策基本法とは
- 勉強法についてはこのくらいにして、本日はポイントを少し解説します。
- まず、防災領域において最も重要な法律は「災害対策基本法」です。
- 災害対策基本法は、1959年の伊勢湾台風をきっかけに作られた法律で、日本における災害対策の根幹を定める法律です。ちなみにこれとは直接関係ありませんが、9月1日の防災の日や防災週間も、伊勢湾台風をきっかけに生まています。
- この法律は、災害対策という名前がついていますが、対象とするリスクの範囲は意外と広く、地震・噴火・台風・大雪といった自然現象そのものから、津波・浸水・がけ崩れ・土石流といった自然現象がもたらす自然災害全般、さらに大規模な火災や爆発、鉄道や飛行機などの大規模な人為的事故も、法律の対象となっています。
- ちなみに、ゴジラなどが出現して被害がもたらされると想定される場合も、災害対策基本法により「災害緊急事態の布告」がなされて、緊急災害対策本部などが設置される想定です。リスクの解釈に対しては、それなりに柔軟なのが災害対策基本法なのですね。
中央防災会議と災害対策本部
- 災害対策基本法を学ぶ際に、混乱しやすい項目のひとつが組織に関するお話です。本日はここを重点的に解説します。
- まずは「中央防災会議」ですが、中央防災会議は平時から常設されている組織で、防災に関する様々な計画を立てる集団です。トップは総理大臣で、全ての閣僚…つまり大臣全員や、その他偉い方で構成されています。例えば、首都直下地震や南海トラフ巨大地震の被害想定や、これに関連する法律を考えたりするのがお仕事となります。中央防災会議は普段から設置されており、総理大臣がトップで、国レベルの防災計画を考える組織と覚えてください。
- 次に非常時の組織ですが、これには災害の規模に応じたグレードがあります。まず、災害が発生したりしそうな場合に設置されるのが「災害対策本部」です。災害対策本部のトップは首長、つまり市町村長または都道府県知事になります。市町村で完結する災害であれば市長などが災害対策本部を設置、都道府県単位の災害であれば知事などが災害対策本部を設置することになります。
- そして、災害の規模がものすごく、国が出て行かないとどうにもならないような場合においては「非常災害対策本部」が設置されます。非常災害対策本部は、国の大臣をトップとする組織です、近年の災害では防災担当大臣がトップを努めています。これが設置される災害は年に1回あるかどうかで、最近ですと2019年の令和元年東日本台風や、2016年の熊本地震などで設置されています。
- さらに、災害の規模が超スーパーヤバイ規模になりますと、非常災害対策本部が「緊急災害対策本部」に格上げされて、総理大臣をトップとする組織に進化します。これまでの所、緊急災害対策本部が設置された災害は、2011年の東日本大震災に限られます。
- なお厳密に言えば、災害対策基本法に基づかない緊急災害対策本部が、1995年の阪神・淡路大震災でも設置されています。そのため、災害対策基本法に基づくスーパーヤバイ災害というのは、今のところ東日本大震災だけだということです。
- ということで、ほにゃらら災害対策本部については三段階で進化すると覚えてください。そこそこの災害の場合は、市長か知事がトップになる災害対策本部が設置。ヤバイ災害になると防災担当大臣などの国務大臣がトップになる非常災害対策本部が設置。そして東日本大震災クラスの災害になると、総理大臣がトップになる緊急災害対策本部が設置されます。
その他の災害時
- 災害時に活動する組織は、災害対策基本法以外の定めでも組織されています。これが少しややこしいのですが、代表的な3つを説明します。
- まず被災地における医療活動を行う、災害派遣医療チーム・通称DMATです。災害発生から48時間以内を目安に緊急展開する、まさに被災地における急救医療の柱となる組織です。
- DMATには種類が2つあり、厚生労働省が管轄する日本DMATと、都道府県が管轄する都道府県DMAT…東京DMATとか大阪DMATなどがあります。災害の規模や地域に応じて、どちらかまたは両方のDMATが全国から出動することになります。ちなみに自然災害だけではなく、大規模な事故や、テロ・通り魔事件などでもDMATが出動して活躍しています。
- 次に、災害時における情報収集や二次災害の防止、早期復旧の支援など幅広い対策を行う、緊急災害対策派遣隊・通称TEC-FORCEです。国土交通省が管轄する組織で、ヘリコプターや衛星通信車両などを素早く展開し、まさに被災地における縁の下の力持ちとして様々な活動を技術的に支援します。
- 最後に、大規模な災害に対する直接支援として出動する、緊急消防援助隊です。アルファベットの通称はまだありません。
- 緊急消防援助隊は、都道府県を越えた全国的な消防の応援組織で、被災地における人命救助などに従事します。大地震や水害などへの対応の他、大規模な工場火災、コンビナート火災への対応や、東日本大震災の際には原子力発電所への放水なども実施しました。
- ということで、災害対策基本法の範囲外となりますが、災害時に活躍する組織の紹介でした。災害時医療を担う災害派遣医療チーム・DMAT。情報収集や技術支援などを行う国交省の、緊急災害対策派遣隊・TEC-FORCE。そして人命救助などに当たる緊急消防援助隊です。
- ちなみに、DMATと緊急消防援助隊は、1995年の阪神・淡路大震災がきっかけで誕生。国交省のTEC-FORCEは災害きっかけではありませんが、2008年に生まれた組織です。
ということで、災害対策基本法及び関連する組織に関するお話でした。
本日も、ご安全に!
ということで、本日は「災害と法律と組織」のお話でございました。
それでは皆さま、本日も引き続き、ご安全に!