備える.jp
サイトメニュー仕事依頼・お問合せ

Voicyそなえるらじお #549 昆虫食の現状と、平時・非常時におけるメリット・デメリット

最終更新日:

執筆者:高荷智也

Voicyそなえるらじお #549 昆虫食の現状と、平時・非常時におけるメリット・デメリット

おはようございます!備え・防災アドバイザー高荷智也がお送りする「死なない防災・そなえるらじお」、3月2日(木)、本日も備えて参りましょう!

食べたい人が食べたらよいと思います

本日のテーマは防災と昆虫食」のお話です。

昆虫が突然に

  • ここ最近、コオロギをはじめとする昆虫食の話題を各地でよく目にします。昨日Twitterで個人的な考えをツイートしたところ、普段より多くの反響をいただきましたので、本日は虫に関するお話。
  • まずは基本ということで、昆虫食のメリットに関するおさらいです。
  • 昆虫食のメリット、ひとつ目は栄養価。昆虫には、魚や肉以上のタンパク質や各種のミネラル分が豊富に含まれており、栄養価が高いというメリットがあるそうです。
  • 昆虫食のメリット、2つ目は生産と加工の容易さ。虫は小さいので、牛・豚・トリなどと比べて省スペースで飼育ができ、加工をする際にも場所を取りません。成長も早いため大量生産が可能という利点もあるそうです。
  • 昆虫食のメリット、3つ目は環境負荷の小ささ、特にこの点が強調されることが多いですね。例えば、食べられる部分を1キロ生産する際に必要なえさの量で比較をしますと、ある資料によれば、牛は25キロ、豚は9キロ、鶏は4.5キロのエサを必要とします。
  • 一方魚の場合ですが、マグロは養殖の場合、可食部1キロの生産にエサを25キロ、ブリで14キロということですので、牛肉と養殖マグロは同じ程度の環境負荷ということです。もちろん天然の魚であれば、ある意味では環境負荷はゼロとなりますので、乱獲をしない範囲での漁業は自然との共存という意味では優れた方法ですね。
  • では昆虫の場合はどうなのかというと、コオロギ1キロの可食部を生産するために必要なエサの量は、2キロ程度ということです。鶏の半分程度で生産できるということになります。ちなみに、海老の養殖の場合、必要なエサの量は体重の倍程度ということですので、コオロギ養殖と海老の養殖は、エサの量だけで言えば同じ水準になるそうです、なんとなく頷けますね。
  • ということで、栄養価、生産性、環境負荷という3点が、畜産や漁業より優れているということで、昆虫食に注目が集まっているそうなのですね。

食べたい人は食べたらよいのでは

  • ところで、基本的にお肉の値段は、トリ→豚→牛の順番で高くなります。与えるエサの量や成長の速度を考えた際の手間とコストが反映されているということになりますが、にも関わらず私達は安価なトリだけではなく、高級な豚や牛も好んで食べます。なぜでしょうか、美味しいからですね。
  • 人間の活動の基本は食べ物を調達することです。食糧事情が悪ければ、食べ物は質より量となり、とにかく飢えないこと、餓死しないことが最優先になります。しかし経済や科学が発展して食糧事情が良くなると、今度は量より質となり、環境負荷や生産コストが高くなっても、美味しいものを食べるようになります。
  • 地球環境のことだけを考えるならば、牛や豚の畜産を禁止して、肉は鶏のみにする。さらに食料状況が悪くなるならば、養鶏すらも禁止して、穀物をそのまま人間が食べるだけにする。そうすればよいわけです。
  • ただ、それをしないのは、穀物よりも肉や魚の方が美味しいからであり、それ以上の理由はありません。人間は、自分が経済的に入手できる範囲の中で、一番美味しい物を求めます。それは人の本能であり、当然の行動原則です。だから私たちは、お金があれば牛肉を食べますし、給料日前には鶏肉を、さらにいえばもも肉ではなくむね肉やささみを食べることになります。
  • ということで、昆虫食が注目されていますが、昆虫が肉や魚よりも美味しくなるか、あるいは圧倒的に安くなれば、勝手に普及しますし、逆に肉や魚よりも高くて美味しくない、ということであれば、普及はしないということになります。
  • あるいは嗜好品としての普及もありえますが、変態的に食料のバリエーションが豊かな日本の場合、新しいジャンルを開拓するのは大変です。海外では昆虫をスナック菓子やファーストフードのように食べる国もあるそうですが、日本には昆虫よりも安くて美味しいお菓子やファーストフードがたくさんありますので、これらを超えていくのは大変ですね。
  • ということで、平時に置ける昆虫食の普及は、単純に美味しさとコストの問題だけで、メリットがあるなら普及しますし、なければ普及はしない、それだけの話だと思います。

防災視点の昆虫食

  • では、防災という視点における昆虫食はどのように考える存在でしょうか。
  • 日本は、平時における経済的な食料自給率は約70%とそれなりですが、海外からの輸入が停止した非常時における、カロリー的な自給率は30%そこそこそと、国民の半分以上が飢えて死ぬ運命が待っている国です。
  • こうした状況に対して、例えば政府などは、非常時における芋類の緊急生産計画などを立てており、当然ながらこの状況においては、家畜に食べさせる餌の調達もできなくなりますので、肉やたまごを入手することはほとんど絶望的になります。
  • こうした状況において、昆虫によるタンパク質提供が容易にできるのであれば、非常時にそなえた計画として昆虫プラントなどを整備し、安全保障政策の一環として昆虫食を普及させるのも理解できます。ただ、現状においては、昆虫に与えるエサを、そのまま人間が食べた方がカロリー効率がよいので、空気と水だけで昆虫の養殖ができるようにならなければ、非常時における昆虫製造もなかなかむずかしいのではと考えられます。
  • また、現状日本は人口が減りつつあり、農地も減少しており、食べ物が余り初めています。面積的に食糧増産の余地が大きい状況ですので、まだ昆虫に頼らなくても、いくらでも食料の生産が可能です。
  • であれば、平時から、お米やお肉やお魚をたくさん製造し、海外に輸出を行い、そして非常時には輸出を止めて国内で消費をする、こちらをまずは強化すべきであると考えます。
  • 土地もない、資源もない、しかし人口が増え、そして昆虫の生産はできる、これであれば昆虫食の普及はメリットが多いですが、土地はまだある、資源も平時は入手できる、そして人口は減りつつあり、昆虫以外の食べ物の方が美味しくて安い、ということであれば、昆虫食の普及は今のところ、積極的にチャレンジする理由はないかと思います。
  • ちなみに個人的な意見として、昆虫と海老や小魚は似ていますので、普段から海老やら小魚やらを丸かじりしている日本人であれば、慣れ次第で昆虫も普通に食べられると思います。でも、海老やら小魚やらが普通に食べられる状況であれば、昆虫よりそちらを食べたいかなと、思うだけです。

本日も、ご安全に!

ということで、本日は「月初の自己紹介と防災士について」のお話でございました。

それでは皆さま、本日も引き続き、ご安全に!

サイト管理者・執筆専門家

高荷智也(たかにともや)
  • ソナエルワークス代表
  • 高荷智也TAKANI Tomoya
  • 備え・防災アドバイザー
    BCP策定アドバイザー

新着のブログ記事

ブログカテゴリ

備える.jp 新着記事