Voicyそなえるらじお #567 南海トラフ巨大地震による、最悪の津波の高さ&到達時間の想定について
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執筆者:高荷智也
おはようございます!備え・防災アドバイザー高荷智也がお送りする「死なない防災!そなえるらじお」、3月31日(金)、本日も備えて参りましょう!
シリーズ津波の高さ…第3話
本日のテーマは「南海トラフ巨大地震と津波」のお話です。
- 前回・前々回と、日本海溝及び千島海溝沿いで生じる超巨大地震による、津波の具体的な影響についてのお話をして参りましたが、本日は第3話ということで、南海トラフ巨大地震による津波のお話をしたいと思います。
- 今回もテーマとしてはかなり重たい内容になります。今日の対象地域は、静岡から宮崎までの広い範囲となりますが、お話を飛ばしたい場合は、コメント返しのチャプターへ飛んでくださいませ。
大地震の大きさのお話
- 本日のお話の前に、大地震の大きさと表現について少し解説をしたいと思います。コメント欄などでも、「ひとまわり小さな巨大地震」というのは、大きいのか小さいのか悩む、などのコメントをいただいておりましたが、
- 地震の規模について、よく3つの段階での言葉が使われます。
- M7クラスの地震を「大地震」
- M8クラスの地震を「巨大地震」
- M9クラスの地震を「超巨大地震」
- という区分です。
- M7クラスの大地震は、熊本地震や阪神・淡路大震災など、陸地で生じるいわゆる直下型地震として多く見られる大きさの地震です。
- M8クラスの巨大地震は、100年前の関東大震災や、前回の南海トラフ地震など、海溝型地震として発生することが多い地震で、大きな津波の被害をもたらす可能性があります。
- そしてM9クラスの超巨大地震は、東日本大震災規模となり、歴史上でもそうそう生じる地震ではありませんが、万が一発生した場合には極めて大きな被害をもたらす災害になります。
- 前回・前々回の放送でお話をした津波の高さは、いずれもM9クラスの超巨大地震が生じた場合の想定で、「次」の地震がこの、超巨大地震になる可能性は低いが、生じたとしたらこのくらいの被害が出る、という内容でした。
- 実際には、M9クラスの超巨大地震よりひとまわり小さな、M8クラスの巨大地震になる可能性の方が高く、しかしこの場合もそれなりに甚大な津波被害が生じる恐れがあるということになります。
南海トラフ地震について
- 本日取り上げる南海トラフ沿いの地震ですが、発生のタイプとしては2つが想定されています。ひとつはM9クラスの超巨大地震、すなわち「南海トラフ巨大地震」が発生する場合です。
- これは、東側の東海・東南海地震と、西側の南海地震が同時に発生した場合の地震で、前前々回・1707年に発生した「宝永地震」が、この東西連動型、M9クラスの超巨大地震だったと想定されています。
- そしてもうひとつのパターンが、東側の東海・東南海地震と、西側の南海地震が時間差で別々に発生する場合の地震で、これは前回の昭和東南海地震と昭和南海地震、前々回の安政東海地震と安政南海地震が、M8クラスの巨大地震だったと想定されています。
- そして、近い将来の発生が想定されている、次の南海トラフ地震が、M8クラスの巨大地震になるか、M9クラスの超巨大地震になるかは、発生するまで分かりません。
- これからお話をする、津波の高さの想定は、「次回」生じるかどうかは分からないが、起きたとしたら最悪の被害となる、東西連動型・M9クラスの南海トラフ巨大地震を想定した内容となります。
南海トラフ巨大地震による津波の高さ…関東
- 南海トラフ地震による津波の高さは、2003年に想定資料として発表されていましたが、2011年の東日本大震災を受けて、あらゆる想定が見直しされました。現在は、2012年に発表されている、「生じる可能性は低いが、最悪の規模となる、M9クラスの超巨大地震」が生じた場合の想定が最新となっています。
- 今回は各種の資料のなかでも、この最悪の超巨大地震が発生した場合に想定されている、津波の最大の高さの解説となります。
- 東側から見て参りますと、まず茨城県では、最も南側かつ太平洋に着き出している神栖市(かみすし)で最大6mの津波が、地震発生から最短78分で到達する想定です。
- 千葉県は、房総半島の最南端となる館山市で最大11mの津波が想定されています。第1波が地震発生から31分、最大の波は56分で到達と、すばやい避難が必要になります。
- 東京都は、東京湾の奥である都心部については最大3mの津波で、浸水の被害はほとんど想定されていません。一方島嶼部については、新島で最大31mの津波が発生し、地震発生から11分で第一波が、13分で最大の波が到達するなど厳重な避難対策が必要になっています。
- 神奈川にも、鎌倉で10m、逗子で9mの津波が、地震発生から約30分で到達すると想定されています。
南海トラフ巨大地震による津波の高さ…静岡県
- つづいて東海地震の震源と想定される駿河湾のある静岡県ですが、最大の津波は伊豆半島の南端、下田市の33mで、地震発生から13分後に第一波・17分後には最大の波が到達すると想定されています。
- その他、駿河湾の内側については、松崎で16m、沼津で10m、富士で6m、清水で14m、静岡で13m、焼津で11m、
- 駿河湾の外側・太平洋側では、原子力発電所のある御前崎で19m、浜松では16mの津波が想定されています。特に御前崎にある浜岡原発では、19mの津波を想定して、高さ22mの防潮堤が建築されるなど、徹底した安全対策が行われているところです。
- また静岡県は、震源が目の前になる可能性が高いため、津波の到達時間が極めて早く、第1波の到達時間は、松崎で4分、沼津も4分、富士で3分、清水で2分、静岡で4分、焼津で2分、太平洋側も原発のある御前崎で5分、浜松も5分と、場合によってはまだ地震の揺れが続いている最中に津波の影響が生じ始める可能性があるため、揺れが収まるのと同時に走って避難をする様な準備も必要になります。
南海トラフ巨大地震による津波の高さ…東海エリア
- 続いて愛知県ですが、太平洋に面する豊橋には19mの津波が第1波12分・最大の波が27分で、渥美半島にある田原市には22mの津波が第1波15分、最大の波も29分で到達する想定です。
- 伊勢湾の中に入ると多少影響は小さくなりますが、知多半島の南端、南知多町(みなみちたちょう)で10mの津波が最短37分で、名古屋市にも港区に5mの津波が、地震発生から103分で到達する想定です。名古屋の5mの津波は他の地域と比べて小さく見えますが、十分に巨大な津波で、名古屋駅の南側辺りまでの広い範囲が浸水する想定です。
- 三重県では、志摩半島に位置する鳥羽市で27m、志摩市で26m、津市でも7mの津波が想定されています。鳥羽市には最短11分で、志摩市には最短6分で第1波が到達するなど、すばやい避難が必要となります。
- 和歌山県では、紀伊半島の南側、串本町(ちょう)で18m、すさみ町(ちょう)で20m、美浜町(ちょう)で18m、和歌山市でも8mの津波が想定されています。串本には最短3分、すさみには最短5分で津波が到達する想定で、こちらも揺れが収まった瞬間に走って逃げ出すか、建物内で避難ができる準備が必要になります。
南海トラフ巨大地震による津波の高さ…四国
- 続いて四国、徳島では太平洋に面する美波町(みなみちょう)で24mの津波が最短15分で到達、徳島市でも7mの津波が想定されています。
- 特に大きな影響が想定されているのが高知県で、室戸市で24m、高知市で16m、四万十町(ちょう)で31m、土佐清水市で34mの津波が想定されております。第1波の到達時間も、室戸で5分、高知市で17分、四万十町で11分、土佐清水市で7分と極めて早く、揺れが収まるのと同時に走り出すか、建物内避難、あるいはシェルターの確保などが必要になります。
- 愛媛県でも、太平洋側にある愛南町(あいなんちょう)で17m、原発のある伊方町(いかたちょう)では21mの津波が想定されており、愛南町には22分で、伊方町には49分で第1波が到達想定です。幸い、伊方原発は、佐田岬半島(さだみさきはんとう)の瀬戸内海側に面しているため、津波の影響は小さくなると想定されています。
南海トラフ巨大地震による津波の高さ…九州
- 九州でも津波の想定があります。大分県では最も南に位置する佐伯市で15mの津波が最短20分で、大分市でも9mの津波が最短50分で到達想定。
- 宮崎県では、軒並み10mを超える大津波が襲来する想定で、宮崎市では16mの津波が、21分で第1波・25分で最大の波となる想定です。
- 鹿児島県では、本土では大隅半島の太平洋側にある肝付町(きもつきちょう)で最大10mの津波が最短31分で、島嶼部では屋久島で最大13mの津波が最短42分で到達する想定です。
- なお、沖縄についても、名護市で5m、那覇市で3mの津波が想定されています。
南海トラフ巨大地震による津波の高さ…瀬戸内海
- 南海トラフ巨大地震の津波は、瀬戸内海でも想定されております。
- 大阪周辺では4m~5mの津波が、神戸周辺では3m~4mの津波が、1時間から2時間で到達し、広い範囲での浸水が想定されています。
- さらに、岡山県で最大4m、広島県で最大4m、山口県で最大5m、香川県で最大5mの津波が。
- 九州の西側でも、福岡県、長崎県、熊本県で、4mの津波が想定されるなど、太平洋に直接面していない地域においても、津波からの避難は必要になります。太平洋側の10mを超える津波に比べると小さな数字に見えますが、津波は3mで津波警報、5mで大津波警報となりますので、相当な地域で大きな被害が生じるのだと考えてください。
諦めないで
- ということで本日は長編となりましたが、南海トラフ巨大地震による、津波の高さに関するお話でした。
- 今日お話をした津波の高さは、「次の」大地震として発生する可能性はかなり低いと見込まれているものの、万が一発生した場合の最悪の想定によるものですので、もう何をしてもダメだと、自暴自棄にはならないでいただきたいと思います。
- 最悪の想定に備えて対策を行い、実際に大地震が発生した場合は、被害が軽くなることを祈りながら逃げる、そうした心構えが必要となります。
本日も、ご安全に!
ということで本日は「南海トラフ巨大地震と津波」に関するお話でした。
それでは皆さま、本日も引き続き、ご安全に!