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Voicyそなえるらじお #603 チリ地震津波による日本への被害と「経験」の危険な使い方災害

最終更新日:

執筆者:高荷智也

Voicyそなえるらじお #603 チリ地震津波による日本への被害と「経験」の危険な使い方災害

おはようございます!備え・防災アドバイザー高荷智也がお送りする「死なない防災・そなえるらじお」、5月25日(木)、本日も備えて参りましょう!

地球最大の大地震②

本日のテーマはチリ地震津波」のお話です。

  • 今回は歴史上最大の超巨大地震、1960年のチリ地震が引き起こした、地球規模の津波災害のお話をいたします。
  • 2011年に東日本大震災が発生するまで、このチリ津波が日本で最大の被害をもたらした津波災害のひとつでした。

チリ地震

  • 前回の放送では、1960年5月22日にチリで発生した、マグニチュード9.5の超巨大地震のお話をいたしました。歴史上最大の超巨大地震は、震源に近いチリを壊滅的な状況にしただけでなく、太平洋沿岸に巨大な津波をもたらし、大きな被害を生じさせました。
  • 海で生じる海溝型の地震は、多くの場合津波をもたらします。チリ地震はマグニチュードが9.5と極めて大きな地震でしたので、発生した津波も相応にして巨大なものとなりました。
  • 最大の被害を受けたのは、もちろん震源に近いチリです。地震発生から15分後には、高さ18mの津波がチリの沿岸部に押し寄せています。
  • さらに津波は全方向に広がりますので、チリ本土とは反対側、太平洋方向にも巨大な津波が広がりました。津波は海の水深が深くなるほど高速で移動する性質を持ちます。
  • 水深200mで時速160km、水深2000mで時速500km、そして太平洋の平均水深4000mになると津波の速度は時速700kmになります。
  • この速度で津波が太平洋全域に広がり、地震発生から10時間でメキシコに、12時間でニュージーランドに、15時間でアメリカ西海岸とハワイに到達し、そしてチリから見てちょうど地球の裏側にあたる日本列島には、地震発生から22時間で津波が到達しました。

日本におけるチリ地震の津波

  • 太平洋の地形や震源からの距離を考慮した場合、チリから出発した津波はちょうど日本の辺りで集合して巨大化するというやっかいな性質があります。
  • そのため、チリから1万7千キロ離れた場所にもかかわらず、日本の太平洋沿岸では大きな津波に見舞われました。これが1960年の5月24日早朝のことです。
  • 津波の海面での高さは、北海道の根室で4m、岩手県の久慈で4m、宮城県の女川で5m、静岡県の御前崎で3.5m、鹿児島県の奄美大島で4.5m、そして沖縄県の宮古島で3.5mなど、太平洋に面している地域では軒並み3mから4mの津波に襲われました。
  • これは海面での高さで、実際に陸地で観測された津波の到達標高としては、岩手県の野田湾で8.1m、大船渡湾で5.5m、岩手・宮城の境界にある広田湾で6.4mなど、三陸周辺で特に大きな津波となりました。
  • この津波により、日本全体で死者・行方不明者142名、建物被害4.6万棟などの被害が発生しています。地震の揺れによる被害はもちろんゼロで、全て地球の裏側から到達した津波による被害でした。

気づけなかった

  • チリ津波による被害は、津波そのものが5mを超える大津波であったことも原因のひとつでしたが、もうひとつの要因は完全なる不意打ちで津波に襲われたため、避難をするという行動が皆無だったこともあげられます。
  • 津波の第一波は午前2時半頃から日本各地に到達し始めましたが、特に大きな津波は第三波で、それが到達し始めたのは朝4時から5時頃のことでした。
  • 1960年当時は、スマートフォンはもちろんインターネットは存在しておらず、テレビに関してもようやくカラーの放送が始まった年であり、まだテレビの無い家庭の方が多い時代でした。この時代において、前日に地球の裏側で発生した地震の状況を詳しく知るすべは無く、ましてや早朝4時頃に押し寄せてきた津波に気づくことが全くできなかったのです。
  • 実際、気象庁から津波警報が発表されたのは、津波が到達してから2時間ごであり、しかも「弱い津波が発生する」という表現だったということで、警報を受けたとしても避難に結びついたかどうかは怪しい、そうした状況でした。
  • そのため、津波が街の中に入り込んだ地域においては、気づいた時には自宅が破壊される状況になり、死者142名という大きな被害をもたらすことになりました。
  • 海外で発生した大地震の詳細が1分後には判明し、津波が来ればスマートフォンへプッシュ通知で警報が到達する現代は、どれほど防災対策が進んでいる時代なのか、この60年間における防災情報伝達はすさまじいほどにアップデートされたということが分かります。

過去の経験も危ない

  • もともと東北の三陸沿岸は繰り返し大津波に襲われてきた地域でしたので、場所によっては大型の防潮堤に守られている地域もあり、こうした地域ではチリ津波による被害はほとんど発生しませんでした。
  • しかし、この経験が逆に津波災害に対する安心感を生むことになり、チリ津波で無傷だった地域の多くが、2011年の東日本大震災で壊滅的な被害をこうむることにもなっています。
  • 東日本大震災が発生するまで、東北における最大級の津波の事例は、1960年のチリ津波であり、街の中にも「チリ津波はこの高さまで到達した」というような、看板や石碑が多く残されていたそうですが、これらのほぼ全てが3.11の巨大津波で流されてしまったというのは、皮肉としか言いようがありません。
  • 過去の災害の経験というものは重要ですが、より大きな次の災害が生じた際には、逆に避難や行動の足かせになることも多いため、過去の経験には捕らわれず、今言われている最大級の危険に対して備え、警戒し、行動することが重要だと言えます。

本日も、ご安全に!

ということで、本日は「チリ地震」のお話でございました。

それでは皆さま、本日も引き続き、ご安全に!

サイト管理者・執筆専門家

高荷智也(たかにともや)
  • ソナエルワークス代表
  • 高荷智也TAKANI Tomoya
  • 備え・防災アドバイザー
    BCP策定アドバイザー

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