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Voicyそなえるらじお #994 温暖化×JPCZで、ドカ雪は増加し除雪体制は弱まるジレンマ

最終更新日:

執筆者:高荷智也

Voicyそなえるらじお #994 温暖化×JPCZで、ドカ雪は増加し除雪体制は弱まるジレンマ

おはようございます!備え・防災アドバイザー高荷智也がお送りする「死なない防災・そなえるらじお」、12月23日(月)、本日も備えて参りましょう!

冬の線状降雪帯

本日のテーマは「温暖化と線状降雪帯」に関するお話です。

昨日から北海道及び日本海側の広い地域で積雪となっていますが、本日も引き続き冬型の気圧配置が強まり、日本海側の広い地域で雨や雪、場所によっては暴風雪が吹き荒れる恐れもあるということで、警戒が呼びかけられています。お仕事や学校、外出前には天気予報を確認し、万全の備えで家を出るようにしてください。

JPCZ (Japan-sea Polar airmass Convergence Zone)

今回の大雪は、先週から1週間ほど続いていますが、いわゆる西高東低の冬型の気圧配置により、大雪となっています。この大雪に関する報道がなされる際、最近よく聞く言葉がJPCZ・日本海寒帯気団収束帯です。

JPCZは、冬の日本海で生まれる、長さ1000キロに及ぶ風の収束帯のことで、高度約1キロと低い位置で数日程度同じ位置に留まり、極端なドカ雪などをもたらす現象として知られています。

JPCZは日本語では日本海寒帯気団収束帯と呼ばれますが、略語も日本語名も覚えにくい言葉であるため、最近は冬の線状降水帯、「線状降雪帯」と呼ばれることもあります。

ただし夏の線状降水帯は、比較的狭い範囲に集中豪雨をもたらし、数時間程度で消滅しますが、冬の線状降雪帯はかなり広い範囲に数日間にわたりドカ雪をもたらすことがあるため、大雪の期間や範囲に関する天気予報などに注意する必要があります。

JPCZによるドカ雪

夏の大雨や台風、冬のドカ雪、いずれも材料になるのは海から蒸発した水蒸気です。JPCZ・線状降雪帯は、大陸から流れ込む寒気が日本海で終息して冬場に積乱雲などをもたらす現象ですが、このとき日本海の海水温が高ければ高いほど、大量の水蒸気が積乱雲に供給され、大雪をもたらします。

地球温暖化の影響で、夏の大雨の頻度や規模は毎年増加しています。温暖化で海水の温度が高まり、蒸発する水蒸気の量が増え、これが大雨をもたらす雲の材料となっているからです。これと同じ理由で、冬のドカ雪の頻度も増加する恐れがあります。

温暖化で気温が高くなると、それまで雪が降ったり降らなかったりしていた微妙な地域では、雪が減ります。昔は年に1~2回くらい雪が降っていたね、という地域では、温暖化で地上の気温が上がることにより、雪ではなく雨が降るようになります。

一方、毎年かならず雪が降る地域の場合は、温暖化の影響で積雪のシーズンは短くなりますが、シーズンに入れば氷点下以下の時期となるため、雪は降り続けます。この時、温暖化の影響で日本海の海水温が上昇するため、積雪シーズンは短くなるが、降るときの量が極端に増える恐れがある、という問題があります。

実際、直近の100年間において、日本周辺の海水温は平均1.35℃上昇していることが、気象庁の統計で分かっています。特に日本海中部の海水温上昇が顕著で、冬の日本海の温度はこの100年で2.58℃も上昇しています。たかが2.58℃と感じるかもしれませんが、これはすさまじい温度の変化です。

雪害への備え

こうした状況もあり、冬の日本海側でもともと雪が多かった地域は、全体としての積雪シーズンは短くなっているものの、いざシーズンに入ると今までに無かったドカ雪に見舞われる可能性がある。という点においてこれまで以上に雪害対策が必要となっています。

やっかいなことに、積雪シーズンが短くなったり、あるいは温暖化で雪が降らなくなった地域が増えると、除雪に関する予算や体制が縮小されます。しかし降るときにはこれまで以上に降るという状況になると、縮小された予算と体制では除雪が間に合わず、いままでよりも雪害による被害が大きくなる可能性もあります。

自宅に閉じ込められる、身動きが取れなくなる、自動車で大雪に巻きこまれ立ち往生する、こうした状況での救助に時間がかかる恐れがあります。冬の氷点下の状況でライフラインが停止しても、しなないための道具や備蓄品の確保を、今一度ご確認ください。

本日も、ご安全に!

ということで、本日は「温暖化と線状降雪帯」でございました。

それでは皆さま、本日も引き続き、ご安全に!

サイト管理者・執筆専門家

高荷智也(たかにともや)
  • ソナエルワークス代表
  • 高荷智也TAKANI Tomoya
  • 備え・防災アドバイザー
    BCP策定アドバイザー

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