Voicyそなえるらじお #828 韓国・セウォル号沈没事故から10年…最悪が積み重なった人災
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執筆者:高荷智也
おはようございます!備え・防災アドバイザー高荷智也がお送りする「死なない防災・そなえるらじお」、4月16日(火)、本日も備えて参りましょう!
10年目の大事故
本日のテーマは「セウォル号沈没事故」のお話です。
- ちょうど10年前の本日、2014年4月16日、韓国の客船「セウォル」号が転覆し、死者304名という最悪の沈没事故が発生しました。この事故が悲惨なものとなった最大の要因は、304名の死者のうち、250名が修学旅行中の高校生だったということです。
- 未来しかない子どもたち、もちろんその他多くの犠牲者が生じた、近年最悪の海難事故「セウォル号沈没事故」、ちょうど10年目を迎える本日、このお話をしたいと思います。
セウォル号沈没事故
- セウォル号は、事故の前日2014年4月15日の夜、韓国・ソウルの西に位置する港、仁川(いんちょん)港を出港し、朝鮮半島の南西にある島、済州島(ちぇじゅとう)へ向かっていました。
- 事故が生じたのは出港の翌朝、2014年4月16日です。朝鮮半島最南端あたりにさしかかったところで船が旋回、その直後に突然船が傾き始めました。
- 事故が起きた海域は、特に危険な場所ではなく、暗礁に乗り上げたり、海中の岩に衝突するような場所ではありませんでした。
- 船体が傾き始めた直後に、乗客が携帯電話で消防に通報を行い、警察や軍はすぐに自体を把握しましたが、すぐに救助に来られる訳ではありません。
- 船が傾き始めてから90分ほどで船体は沈没し、あっという間に多くの乗客がもろとも海中に飲み込まれてしまいました。これが事故の概要です。
事故の原因
- セウォル号の沈没原因には様々な要素がありますが、最も影響した要因は、荷物を違法に積み過ぎていた過積載と想定されています。船に基準を超えた荷物を積み、これがバランスを崩して船が傾き、沈没に到ったということです。
- またセウォル号の運行では、この事故以前から違法な過積載が常態化しており、安全に航行できる以上の荷物を日頃から積んで、違法な利益を上げていたということです。
- さらに、船の不適切な改造、荷物の固定方法の問題、船体を安定させるバラスト水を必要な量を積載しないという違法な対応、船員の不適切な配置、船の操舵ミス、様々な要素が積み重なって沈没事故が発生しました。
- そうした意味では、この事故は起こるべきして起きた事故であり、このタイミングで沈没事故が生じなかったとしても、いずれ大きな事故につながっていた可能性が高かった訳です。完全なる人災です。
- こうした状況は、昨年2023年4月23日、まもなく1年目を迎える日本の海難事故、知床遊覧船沈没事故が人災的な要素を多数含んでいたこととつながります。
- 法律や規則というものは、安全を確保するために存在するのであり、違法行為の積み重ねはいつか大事故につながる可能性を高める行為に他ならないのです。
被害拡大の原因
- さらに、セウォル号沈没事故には、沈没に関する問題だけでなく、避難誘導が不適切であったために多くの犠牲者を出したという、二重の大きな問題があります。
- 事故発生直後、船長および乗務員による避難誘導はかなり不適切なもので、救命胴衣の着用、船からの脱出などのアナウンスがほとんど行われず、高校生達は船室に待機したまま、船と共に海中に飲み込まれてしまいました。
- 本来船の乗務員は、乗客の避難誘導を最優先しなければなりませんが、これを怠ったばかりか、多くの乗務員が乗客よりも先に救助船に乗って、セウォル号から脱出したというところが大きな問題となっています。
- さらに船に備え付けられていた救命ボートのほとんどが、整備不良で使用できない状況になっており、このことを乗務員達が知っていたため、乗客を見捨てて先に逃げたということも後の捜査で追究されています。
- 救命ボートの状態は、定期的な安全検査でチェックされているはずでしたが、実際にはこの検査が行われておらず、以前から救命ボートがつかえない状態にあり、さらに検査機関と船の運行会社間との癒着問題などもあり、検査そのものが適切に行われる環境になかったという疑いもあったということです。
- もちろん、最後まで船内に残り、避難のアナウンスや救命胴衣の配付を続け、乗客と一緒に亡くなられた乗務員もいましたが、こうした当たり前の行動を英雄視しなければならないほどに、その他の対応が酷かったということになります。
安全対応をポジティブに考える
- セウォル号沈没事故から得られる教訓のほとんどは、事業者側に対するものです。このような沈没事故に巻きこまれた際に、このように行動すれば助かるというサバイバル術は、ほとんどありません。
- 乗務員が安全と行っている状況を無視して、救命胴衣を自分で身につけ、海に飛び込む。このような対応が必要になるわけですが、これは無理です。船に限らず、乗り物に乗っている際の安全確保は、乗客の判断で行うことは難しいため、乗務員の指示にしたがうことが原則となります。
- この原則を無視して、セウォル号では乗務員が乗客を見捨てるという、あってはならない事態が発生したことが、この事故の問題を深刻なモノにしています。
- 基本的には、乗り物に乗っている際の異変は、乗務員の指示におとなしくしたがうこと。最近の事故でこれが上手に働いたケースが、2024年の1月2日、羽田空港で生じたJAL・海保機の衝突事故です
- 機体が全焼するような最悪の火災が生じましたが、普段の訓練通りの避難誘導が行われ、乗客もこれに従ったことで、JAL側には死者が発生しなかったというのは、大きな成果と言えます。
- そして乗り物を運行する事業者側においては、安全こそ最大のサービスであるという原則を忠実に守り、とにかく人の命を運んでいるのだという意識、そして対応が必須ということになります。
本日も、ご安全に!
本日は「セウォル号沈没事故」のお話でした。
それでは皆さま、引き続き、ご安全に!