Voicyそなえるらじお #853 小学生用「防災ポーチ」の中身は?大人用にも通じる考え方とは?
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執筆者:高荷智也

おはようございます!備え・防災アドバイザー高荷智也がお送りする「死なない防災・そなえるらじお」、5月22日(水)、本日も備えて参りましょう!
ヘルメットをかぶるのもよい
本日のテーマは「小学生と防災グッズ」のお話です。
今回はコメント欄にいただいたご質問への回答、質問を下さいましたのは「てこ」さんです。
『高荷先生おはようございます!いつも勉強させて頂いています!4月から長女が小学校に入学しました。先日学校から帰宅時に転んでしまったようで膝から血を流し泣きながら帰ってきました。あーこんな短時間でもなにが起こるかわからないから防災ポーチ持たせなきゃいけないなと思いました。お守り代わりに絆創膏は持たせる予定ですが、ランドセルを背負っていくのも一苦労の小学生なので防災ポーチの中身は何を入れたらいいか迷っています…。これだけは!というものはありますでしょうか?先生の意見をうかがいたいです!』
防災グッズ・防災ポーチの目的
小学生に持たせる防災グッズ、「てこ」さんの環境においては、あまりたくさんの装備は持たせなくてよいと感じました。ちなみに私の子ども達には、いわゆる防災ポーチや防災セットは、特に持たせていません。なぜならば、子どもの学校が自宅から徒歩圏内にあり、道中で大きな危険に巻きこまれるようなポイントもないからです。
そもそも、防災ポーチなどをなぜ携帯するのでしょうか。目的は様々ですが、究極的には死なないために防災ポーチを携帯します。その道具を持っていたことで、命を守るコトができた。その道具がなければ死んでいた、そうした状況を回避するために持ち歩くのが、防災ポーチということになります。
そのため、防災ポーチに入れるべきグッズは、命にかかわるモノや、人間の五感や五体を補うモノが優先となります。例えば必須アイテムのライト、そなえるらじおを聞いてくださっている皆様の中には、猫属性の方が多くいらっしゃいますが、おそらく暗闇では身動きが取れなくなると思います。災害に巻きこまれた際、暗闇に閉じ込められる恐れがある場合は、視力を確保する為のライトが不可欠です。
同じように、メガネが必須なら予備のメガネが、補聴器が欠かせなければ予備の補聴器が、薬が必須であれば数日分のお薬が、防災ポーチに入れるべきアイテムになります。命を守る道具としては、体温を維持するための雨具や圧縮タオル、応急手当の道具、情報収集用のラジオやスマホ充電器なども重要です。
会社や学校の場所、通勤や通学のルートにより、災害時に自分が置かれる環境は変わりますが、こういう状況に陥ったら死ぬ可能性がある、その時にこんな道具があれば生き延びられそう、その道具が防災ポーチに入れるべきアイテムになります。
そのため私個人の場合も、自宅の近所にある事務所へ出勤する場合と、新幹線で出張をする場合の装備品は大きく異なります。徒歩圏内へ移動する際にはA5サイズに防災ポーチと雨具だけをを持ち歩いていますが、出張時には丸1日程度歩いて被災地を脱出するような想定のアイテムを持ち歩くなど、環境や目的に応じて装備を変えている、ということを行っています。
小学生には何を持たせる
改めて小学生に持たせる防災ポーチについて考えますと、まず行動範囲が徒歩のみなのか乗り物に乗るのか。行動範囲内に津波や地震火災の生じる地域はあるのか。外出は昼間だけなのか夜中もあり得るのか。保護者は常に迎えに行けるような状況なのか、それとも保護者自身が帰宅困難者となり子どもが数日間孤立する恐れがあるのか。こうした状況により持たせるべきアイテムは変わります。
最も難易度が低いのは、行動範囲は徒歩圏内のみで、津波や地震火災の恐れがなく、夜間の外出はなく、災害時には誰かしらが当日中に迎えに行けるような状況です。我が家は基本的にこの難易度低の環境にいるため、防災ポーチなどは持たせていません。というか小学校などは基本的に勉強道具以外の携帯が禁止されているので、たくさんの道具は持たせられないという状況もありますね。
強いて言えば、地域にたまに出没する変態おじさんや痴女のお姉さん対策を兼ねた防犯ブザー、公衆電話用の10円玉少々、ちょっとしたケガに対応する絆創膏、自分のアレルギー情報や家族の電話番号などのメモ、突然の大雨に対応出来る100円のミニレインコート、このくらいが学校からNGを出されずに携帯できる、難易度イージー環境向けの小学生防災セットになるでしょうか。
そもそも論で言えば、防災ポーチが不要な環境を作ることが、子どもを守る環境作りとしては重要ではないかと考えています。ちなみにこれを実現するために、もともとは神奈川県川崎市に住んでいましたが、都会に住むこと自体がリスクだと考えまして、静岡県三島市に引っ越したという経緯もあります。だれにでもできる対応ではありませんが、引越しという手段は優れた防災対策であると思います。
一方、難易度ルナティックな環境としては、都市部の学校に電車などで通学し、夜間も塾などで外出があり、災害時に保護者がすぐ学校へ駆けつけられない恐れがある。このような環境に子どもがいる場合は、大人と同じようなフル装備の防災ポーチが必要であると思います。
災害が発生した場合、大人も子どもも、高齢者も若者も、男性も女性も、健常者も障がい者も、アスリートもYoutuberも、犬も猫も鳥も、等しく弱者となります。社会のインフラが健全であり、バリアフリーな状態が保たれている状態とことなり、大地震などが発生した場合は全ての人が等しく弱者になるのです。
そのため、防災ポーチや防災セットを作る際には、大人用と子ども用とかではなく、生じる恐れのある災害の種類、自分の生活圏が都市部か地方か、移動手段は電車か車か徒歩か、そうした人の能力や属性ではなく、備えたい環境について考えた方がよいと思います。
本日も、ご安全に!
本日は「小学生と防災グッズ」のお話でした。
それでは皆さま、引き続き、ご安全に!