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Voicyそなえるらじお #854 自由な台風予測は法律違反?海外機関の進路予測はなぜ存在する?

最終更新日:

執筆者:高荷智也

Voicyそなえるらじお #854 自由な台風予測は法律違反?海外機関の進路予測はなぜ存在する?

おはようございます!備え・防災アドバイザー高荷智也がお送りする「死なない防災・そなえるらじお」、5月23日(木)、本日も備えて参りましょう!

台風シーズン

本日のテーマは「台風の予測」のお話です。

例年であればおおむね4月頃までに、早ければ1月には発生する台風1号ですが、今年は台風1号がまだ発生していません。そんななか、フィリピンの南の海上で発達中の低気圧が、この後熱帯低気圧へ、そして台風1号へ発達するかもしれない、ということで少し注目を集めています。

本日は台風の予測に関するお話です。

日本の台風予報

台風を含む気象予報を日本で行うには、免許が必要です。日本の法律に「気象業務法」というものがあり、気象庁以外の者が気象予報を行う場合は、気象庁長官の許可を受けなければならないと定められています。そのため、ウェザーニューズ社をはじめとする民間の気象会社は、すべてこの免許を取得して気象予報の業務を行っています。

ちなみに民間の気象会社が、免許を受ければ自由に天気予報を行える様になったのは1993年に気象業務法が改正されて以降のことで、1993年以前は気象庁以外の天気予報を発表することは法律違反でした。

一方、天気予報の自由化は行われたものの、警報や注意報を出すことは気象庁以外には認められていません。さらに、台風に関する進路予報などは、この警報に該当するということで、気象予報の免許を受けても、台風の進路予報などを独自に行うことは禁止されており、あくまでも気象庁の台風情報の解説にとどめるべしとなっています。

海外の台風予測

ところで近年、SNSやインターネットでは、日本国外の機関が予測した台風情報がよく紹介されています。各国・各機関の台風進路予測を地図上に重ね合わせて、気象庁以外の予報ではこんな感じと紹介するようなやり方です。気象庁の台風予測は最大5日先までですが、国外の台風予測は最大10日先まで出されているため、少し先の進路をチェックしたい場合などに重宝する情報になっています。

気象庁の台風情報が一番正確なのかといえばそうとも言えず、一方でこの国のこの情報が毎回すごい精度で台風の進路を当てている、ということもなく、複数の台風進路予測を重ね合わせて見るのは、現代ならではの合理的な方法であると言える訳です。

ところが、この海外の情報というものは、気象業務法においてはグレーな扱いとなっています。情報そのものを紹介することは問題無いが、それを台風情報としてニュースなどで取り扱うのはNGで、基本的には気象庁の台風情報の解説の範囲で提供するならばOKという解釈になっています。

XやYouTubeなどで、個人が参考情報として海外の台風情報を紹介するのはよいが、それを天気予報の延長としての「台風情報」として扱うのはNGという感じで、法律の整備が追いついてない領域なのです。

個人で各種の台風情報を見るのは構わないが、国が保証しているのは気象庁の台風情報だけであり、また自分が台風情報を出す側の仕事をする場合は、気象庁以外の情報を使うのは法律違反になるのでNGということは、知っておいてください。

スーパーコンピューター

ところで、気象庁以外が行う台風の進路予測ですが、なぜ日本以外の機関が、日本周辺の台風進路予測をするのでしょうか。それは、数日先の気象予報には一部の地域だけではなく、地球全体をカバーする予測が必要であり、その副産物として台風の進路予測が出ているからなのです。

翌日の天気予報であれば、日本周辺の気象データを使えばある程度は可能です。しかし数日より先の天気予報を行う場合には、日本周辺だけでなく、もっと広い範囲の気象データが必要になり、それを突き詰めていくと、結局地球全体の気象予報をしなければ、局地的な天気予報もできないということになるのです。

まして台風の予報というものは、広い範囲の気象予測が必要になるため、現在においてはスーパーコンピューターによる「全球モデル」というものが使われ、地球全体の気象予報を行い、そのから必要な地点の情報を抜き出すようになっているのです。

そのため、気象庁も全球モデルを使うことで、日本以外の天気予報を結果として行っていますし、逆に日本以外の国が日本周辺の台風情報もついでに行っているということになり、それが海外の機関の台風進路予想という形で、公開されています。

地球全体の気象を再現する全球モデルは、気象観測網の充実化と、スーパーコンピューターの進化によりどんどん精度が上がっています。気象庁の場合も、2024年3月から新しいスーパーコンピューターシステムの運用を初めておりまして、台風もそうですが、線状降水帯の予測精度なども改善されることになっています。

ということで、台風1号が発生するかはまだ分かりませんが、気象予報において世界はひとつです。気象庁および世界の天気情報をうまく活用できるといいですね。

本日も、ご安全に!

本日は「台風の予測」のお話でした。

それでは皆さま、引き続き、ご安全に!

サイト管理者・執筆専門家

高荷智也(たかにともや)
  • ソナエルワークス代表
  • 高荷智也TAKANI Tomoya
  • 備え・防災アドバイザー
    BCP策定アドバイザー

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