Voicyそなえるらじお #856 史上最低の防災講演会…と恐れながら毎回防災のお話をする心理
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執筆者:高荷智也

おはようございます!備え・防災アドバイザー高荷智也がお送りする「死なない防災・そなえるらじお」、5月27日(月)、本日も備えて参りましょう!
複合災害の季節
本日のテーマは「防災のコミュニケーション」のお話です。
先週末金曜日・土曜日・日曜日と防災のお話をして参りました。金曜日は静岡県島田市、土曜日は神奈川県の新横浜、日曜日は兵庫県の尼崎市で、防災講演や研修の講師をさせていただきました。
恐ろしい防災講演会
最近はご依頼の数も増え、大変ありがたいなと感じる状況なのですが、実は毎回、あることを感じながらお話をしております。それは、「今回の講演は内容がいまいちだ、参加者のニーズにもあっていないし、何の役にも立ちませんでしたと言われたらどうしよう」という恐怖感です。
端からみていますと、スラスラとお話をしているように見られようなのですが、毎回毎回開始直前まで、今回はダメかもしれないと、ビビり散らかしながらお話を始めています。ただ、実際にお話を終えて評価などを聞くと、おおむねご好評を頂くことが多く、直前までの悩みは杞憂だったということになるのですが、毎度今回はダメだ、最悪の防災講演会になるかもしれない、と感じているのもまた事実なのです。
この感覚は、防災に関する意識が高い方が、そうで無い方に防災のお話をする際の構図に近いのかなと感じています。私は防災のお話をすることそのものが仕事ですので、毎日毎日様々なテーマで防災のお話をしています。といいますかこの放送そのものが防災のお話ですね。
そうすると当然ながら、防災に関する最新の情報に触れる機会も多くなるのですが、防災の基本というものは早々大きく変わる物ではありません。まず命を守ることが重要で、地震対策、避難の準備、防災備蓄の順番で行っていただきたい、この基本はどのような講演会でも同じことをお伝えしています。
もちろん、その基本のお話の中に情報のアップデートは入れますので、例えば地震対策であれば2025年の建築基準法改正についてですとか、水害対策であれば線状降水帯予測の精度向上のことですとか、防災備蓄であれば最新の防災用品のご紹介ですとか、そうした要素は入れます。ただ、基本の部分はいきなり大きく変わりませんので、講演会では基本的に同じ方向性でお話をしています。
これが、毎度同じ話をしていていいのか、新しい伝え方をしないといけないのではないか、今回はもうだめだ、史上最低の防災講演だったと言われるかもしれない。という言いようのない不安の原因かなと思っています。
一方、お話を聞いてくださる方にすると、よほど防災に関心のある方でない限りは、初めて聞くような要素も多く、お話が終われば「とても参考になりました」というお声を多くいただき、そして私もようやく安堵する、そんなことを毎回繰り返しています。
防災の話は何回してもいい
ところで、防災に関心のある方が、防災に関心の無い方にお話をする時に、のれんに腕押し、全く興味関心を持ってくれない、どうしたらいいか、という悩みをよく聞きます。これは仕方のないことで、興味のない話には興味を持てない、それは当然です。小鳥に興味の無い方に、シマエナガとキクイタダキとフジイロムシクイのかわいらしさを語っても、ふーんと言われてしまいます。
ただ、小鳥に興味の無い方は、死ぬまで小鳥に興味が生じないままの方も多いと思うのですが、防災は自分が被災する、あるいは被災する恐れがある、というタイミングでいきなり興味関心がMAXになることが多くあります。この時、いままで100回話しても聞いてくれなかった防災トークが、いきなり10年前から防災に興味がありました的に受け入れられることもあります。
日頃防災のお話を無視されてきた側からすると面白くない状況かもしれませんが、防災は自分だけが頑張っても効果が薄く、周囲を巻きこむことが重要です。いきなり防災に目覚めた人に対しては、心の中でこの野郎と思いながら、表面上はいままで同じお話を101回目かも知れませんがすればいいのです。それで我が家やわが社の対策がすすめば、これに越したことはありません。
そんなことを思うと、防災講演会の前に「今回はもうだめかも知れない」という不安も、多少和らぎそうなのですが、元々がビビりである私ですので、恐らく次の講演会でも最大に不安を覚えながら、終われば「なかなかよかったかもしれない」と感じる、そんなことを繰り返すのだろうなと思います。
本日も、ご安全に!
本日は「防災のコミュニケーション」のお話でした。
それでは皆さま、引き続き、ご安全に!